救出後
「・・・ということになっています」
ーふむ・・・。
魔王(三女)から聞いた話によれば、この世界は複座式の統治体制を取っているとの事だった。
3人の魔王が魔族を統治し、その魔王は皆姉妹との事。
それぞれが”軍事 ”財政 ”治安 を担当し、成り立っている様だった。
システムとしては優秀としか言い様がない。
誰かが倒れても残り2人が指揮権を引き継げる、そして3人で統治するが故に独裁の心配がない・・・。
(唯一欠点があるとすれば、判断を下す時間が長い事か。
戦争においては少々不利な欠点だな・・。)
この手の教育も勇者はなされてる。
政治なぞ興味が無いが、今役立つというのなら無駄ではなかった。
(だが・・・・)
この事を魔王は知っているのだろうか?
こちらの世界に来て奴がどうしているのか、こちらが把握する術はない
それに複座制となると俺たちの計画に歪みが生じる
魔族の戦力もそうだが、魔王単体の戦闘能力が計り知れない
この世界の魔王がうちの魔王レベルであったならば・・・。
ー勝機は薄い・・・な。
「え?」
ーあ、いや・・・なんでもない。
だが奴の事だ、うまく適度な勢力を作って対抗組織・・・。
もしくは何らかの策を練っているだろう
そう無理矢理自分を納得させる
彼奴はそうヤワなやつじゃ無い。
それは奴と死闘を演じた俺だから解る。
ーさて、一先ずは城に帰還しなくては・・・なんだろ?
「はい、そうなんです♪」
そう言って魔王(三女)・・もとい、”ミラ は俺の腕に寄り添ってくる。
先ほど聞いた名だ・・・というか向こうから名乗ってきた。
皆魔王ではいい加減区別も付きにくいだろう。
しかし・・鎧に抱きついでも冷たくてゴツゴツするだけだと思うんだが
つか何でこんなに懐かれてんだ?
「でも良かったです!何となく今日は特別な日な気がして・・・。」
ーそれだけの理由で外を出歩ける君は素晴らしい感性の持ち主だと思う
そんなため息を漏らしなが、木漏れ日の木々の間を通り抜ける。
彼女の話だと此処から約数十キロ離れた丘に城は建っているとの事。
偵察及び、魔王の力量の見極めのため、彼女を城まで送り届けることとなった。
(あわよくば、王座で一気に魔王を堕とす・・・・。)
そう誓い、前を見据える。
森を抜けた先には、永遠とも思える荒野が広がっていた。