襲撃者視点より
仲間の暗殺者が丸でゴミの様に吹き飛ぶ様を、私達は唯口を開けて見ていた。
あの黒い甲冑の化物が放った一撃、その一撃は容易く鋼鉄の鎧を打ち砕きあまつさえ70kgを超える女暗殺者を軽々と吹き飛ばした。
(ちょっと・・・・冗談でしょ・・?)
禍々しい程に漂う瘴気、オーガの一族ですら扱わないような化物じみた
巨大な剣。
それを片手で振り抜く常識外れな筋力。
どれを取っても馬鹿げている。魔族であろうと限度を知らない。
最早隣にいる魔王よりも、よっぽど魔王らしかった。
目配せで両隣にいる”戦士 と”僧侶 に合図を送る。
戦士は震える足をなんとか根気で抑えながらも頷く、だが僧侶は完全に放心していた。
(僧侶!)
心の中で叫ぶ。だがそれは全くと言って通じる筈もなく、唯だらしなく体を震わせる。
私は悪態を着く他ない。
(くそッ!何がたかが弱小魔王を一匹仕留めるだけの仕事だっ!?
あんな化物みたいな護衛がいるなんて聞いていないぞ!!)
王家が兼ねて計画していた順当な策であり、報酬も弾むからと聞いて乗ったが・・・・こんなのは予想外だ。仕事にすらならない。
私は兼ねて伝えていた指文字で言葉を紡ぐ。
<撤・退・す・る>
戦士から直ぐ様別の指文字が送られた
<僧・侶・は・?>
僧侶の方を盗み見る。
黒甲冑の化物から目が離せず、半分木から身を乗り出していた。
その瞳の瞳孔は完全に開ききって、正常な状態じゃないことが見てとれる。
<置・い・て・行・く>
<ダ・メ・だ>
私は思わず戦士を睨んだ
この状況じゃ無理だ、意思疎通も出来ない。
そして”諦めろ と指文字を送ろうとしたところで。
僧侶の居た場所が消し飛んだ。




