魔郡の制圧
「ぐふぉぁッ!!!」
夜の空に、獣に似た叫びが響き渡る。
実際、その悲鳴の主は”獣 だった。
銀の毛に覆われ、鋭い牙と爪を持つ森の狩人
獲物を狩り、強者の位置に立つはずの獣は...たったひとりの”少女 と言っても
過言ではない人物にひれ伏していた。
「ふむ・・・・こんなものか、”人狼一族 というものは」
美しく銀に輝く毛色は、既に御のが血で赤く染まり
少女の手も又、赤く染まっていた。
だがそれは自身の血ではなく、この地面に転がる人狼の血である。
「くっ・・・誇り高き我が一族が、この様な・・小娘にッ・・・!」
そう言って立ち上がろうとするが、動いた途端全身の傷から血が吹き出す。
その痛みに悲鳴を上げそうになるも、なけなしのプライドがソレを阻止した。
まるで見下し、蔑むような目
そんな少女の目を、真っ直ぐに人狼は睨み返す。
「・・・我が一族の頂点に立ち、何を求む? 権力か、富か、それとも非なる殺戮かッ!?」
吠えるように叫ぶ人狼に対し、少女は耳を塞ぐ。
人狼の声は妙にトーンが高く耳に響いた。
「煩い、少し黙れ。
お前等一族は叫ばんと会話も出来んのか?」
そう言って人差し指を口元に一本、ぴんと立てる
”黙れ と言っているのだろうか、だがこれ以上叫ぶ気力は人狼に残っていなかった。
おとなしく地面に頭を伏せる。
「・・・・ふむ、中々に聞き分けが良いではないか。
流石は上位種の一族だ。」
少女が憎たらしい笑を浮かべた
人を小馬鹿にした笑だ、本当に憎たらしい。
その場でくるりと方向転換し、黒いコートを靡かせる。
そして夜空を見上げ、少女は答えた。
「我が求めるは、世界だ。」




