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姉の婚約者を奪う妹に仕立て上げられましたが、日本には「倍返しだ!」って名言があるのをご存知?

作者: 井上さん
掲載日:2026/10/18

名前を借りました


フィクションです

 姉の婚約者を奪う妹。

奪った姉の婚約者から、DVを受け、妹は結婚してすぐに死んでしまう。


姉は、妹の婚約者と婚約して幸せになる。



 という小説が流行っていた。


私はその、妹に転生していた。




 姉ナンドは、転生者のようだ。早く幸せになりたくて、婚約者バッファを唆し、妹の私ノアと浮気させようとした。


「妹が、貴方を好きって言ってたわ」


「本当か?参ったなぁ…モテる男はツライなぁ…」




 それを聞いてしまった私。


いくら好きって言われたからって、婚約者の妹に手を出すなよ気持ち悪い。しかも伝聞だし、本人は何も言ってないし、本人に確認すらしていない。


 そして、他人から聞いたことを迂闊に信じるな。お前は貴族失格だ。


…よし、潰そう。




 もしかして、小説も、姉がやったのか?

私の婚約者ジーメンスと婚約する為に、私とバッファを浮気するように仕向けた?


最低だな。




それにしても…


ジーメンスで、本当に良いのかなぁ?


本当はアレなんだけど。


ま、いっか。そんなにジーメンスと婚約したいなら、協力してあげよう。




 ちなみに、丁度その時に、幼馴染のヘンリーが来ていて、庭に咲いた薔薇を一緒に見ていた。


 庭の片隅に私達がいることに気付かない姉達は、ベラベラと計画を喋り、まるっと聞かれてしまったことにも当然気付いていない。




 2人が去った後、ヘンリーは呆れた顔をした。


「大丈夫なの?あれが貴族で」


「大丈夫なわけないでしょ」


 私も呆れた顔で言った。


「だよなぁ」


「姉は、ジーメンスと婚約したいみたい」


「はぁ!?ジーメンスって、ノアの婚約者だろ?」


「そう。ジーメンスと婚約する為に、邪魔なバッファを私に押し付けたいのよ」


「はぁ…!?」


 訳が分からないよ。


「で、どうするんだ?」


「知ってる?やられたらやり返すんだって。倍返しで」


 ヘンリーは、真顔になった。






「俺のこと好きなんでしょ?デートしよう」


 気持ち悪い勘違い男バッファが、我が邸に押し掛けてきて、私を呼び出し話し掛けてきた。


 婚約者がいながら浮気するなんて。



判決 地獄行き〜〜〜〜



 琵琶法師の歌が脳内を通り過ぎたわ。


「ご冗談を。貴方はお姉様の婚約者です。お姉様とデートしてください」


 私は、大声で言った。

常にメイドや護衛を側にいさせて、無理矢理連れて行かれたと後に証言をさせるつもりだ。


「照れなくても良いんだぜ」


 勘違い男が寝言を言った。


「私には婚約者がいます。他の男性と噂になりたくありません」


「ちょっとデートするくらい良いだろう?」


 良いわけないでしょ。


「では、父と、私の婚約者に許可を取ってください」


「煩い黙れ!言うことを聞け!」


 腕を掴み、無理矢理私を馬車に乗せた。拉致よ!犯罪よ!

私は、護衛の腕を掴んで馬車に連れ込んでいたから、2人きりにはならなかった。


 ギリギリセーフ!


いや、セーフじゃない。既にDVじゃないの!


「護衛は外だ」


 勘違いDV男が言った。


「私には婚約者がいます。不貞はしたくありません」


「煩い!」


「では私を馬車から降ろしてください」


「黙ってついてこい!」


「貴方には婚約者がいるのですよ?何を考えているのですか?」


「俺の言うことを聞け!」


 会話にならない。

馬車は動き出した。


無言が続く。話したくないから良いけど。

フキハラじゃない。


 馬車が目的地に着いたようだ。

腕を捕まれ馬車から降ろされる。


「離してください」


 バッファは、私を無視して歩いた。


カフェの中に入った。オシャレなカフェには、女性客がたくさんいた。


「私は帰ります!離してください!」


 大声で言ったが、また無視された。


だが、周囲の客達は、私の声を聞き、耳だけは私達に向けている。


目撃者は、いくらでもいてほしい。


「貴方は姉の婚約者なのですよ!姉を連れてくれば良いでしょう!」


「良いから、座れ!」


 命令口調である。空いているテーブル席があり、私の腕を掴んだまま、イスを引き、私を座らせようとする。


私は抵抗した。


「私には婚約者がいます!今すぐに帰らせてください!」


 護衛は、側にいるが手を出さない。命の危機の時にだけ、手を出すように命令している。


これは、私が仕込んだ罠なのだ。


「お前、いい加減にしろ!せっかく俺が誘ってやってるのに生意気だ!黙って言うことを聞け!」


 とうとう、バッファが大声で怒鳴った。


「すみませんすみませんすみません!どうか、命だけは助けてください!!」


 私は大袈裟な程に怯えて叫んだ。


当然、注目の的になった。

店中の客と店員が、注目している。


 だが、バッファは気付かない。


護衛が、入店時に店員に伝えてくれたのか、氣志…じゃなかった、騎士団の騎士達がやって来て、バッファが連れて行かれた。


 私にも話を聞きたい、と言われたので、偉い人の後についていく。






 騎士団の本部で取り調べが行われた。


「あいつが、俺を好きだと言うからデートしてやったのに!」


 と、バッファは言っているらしい。


冗談も顔だけにしてほしい。誰が婚約者の妹に手を出す男を好きになるか。何でそんな妄想ができるのか?気持ち悪いなぁ。




 たとえ好きになったとしても、姉の婚約者と、どうにかなろうとはしない。まともな人なら。

 自分にも婚約者がいるのだから、他の男と出掛けるような不誠実なことはしない。まともな人なら。


 バッファと婚約したいなら、まずはお互いの婚約を白紙か解消にして、それから改めてバッファと婚約するべきだ。まともな人ならそうする。


 姉も、両親とバッファの両親とジーメンスの両親を説得して、婚約を取り替えれば良かったのだ。


 浅知恵で、バッファと私を浮気させ、婚約破棄をさせて、残ったジーメンスと自分が婚約するなんて…

 まともな神経じゃない。


ジーメンスのどこが良いんだろ?

まぁ、顔は良い。愛想も良い。


それは、バッファも同じだ。爵位も嫡男であることも同じだ。


…本当に、どこが良いんだろ?




 私は、女性の騎士から取り調べを受けた。

犯人ではないから、簡素な応接室のような部屋だった。


「何があったんですか?」


「私は無理矢理連れて行かれました。お姉様の婚約者と噂になってはいけないから、と断ったのに、無理矢理連れて行かれて…怒鳴られて…怖かったです…」


 私は、泣くのを堪えて気丈に振る舞っているような顔をした。新人女優賞をもらえるかもしれない程の、迫真の演技だ。


「バッファ殿が好きなのでは?」


 女騎士が言った。


「まさか!姉の婚約者に横恋慕するような不誠実なことはしません。それに、私には婚約者がいます。婚約者と上手くやっているのに、わざわざ姉の婚約者に手を出すわけないです」


「今、家族に話を聞きに行っています」


「玄関で、大声で拒否してたのに、姉は出てきませんでした…姉は助けてくれませんでした…どうして?」


 私は俯いて、両手で胸元を押さえた。


これだけ言えば、姉は婚約者が何をしようとしていたか、知っていたかもしれない、と、印象づけられる。


 その後、家に帰って良いと言われたが


「姉の婚約者がまた来るかもしれないと思ったら、怖いです」


 と、怯えてみせた。


バッファは、今日は留置所にお泊りらしい。ざまぁ。


護衛もいるが、邸まで馬車で女騎士が、背中を撫でて慰めながら送ってくれた。


 両親は、心配そうに迎えてくれた。

私達姉妹に、クズな婚約者を押し付けた、人を見る目の無い両親。


姉は出てこなかった。だが、部屋にはいるらしい。




 これだけ大騒ぎになったのだから、姉の婚約は白紙になった。


白紙になったのは、私にも慰謝料を、とバッファの両親から言われて


「慰謝料なんてもらって、姉の婚約者に恨まれたくない、もう関わりたくない」


 と、泣き落としたからだ。


それで、白紙なら婚約は無かったことになるから、姉に傷がつかない、と両親も考え、二度と姉妹に近付かない約束で、白紙にしたのだ。


 バッファは、問題を起こしたので廃嫡になって、領地の邸に幽閉された。


これで、バッファのDV被害者が出ることはないわ!他の令嬢がバッファと結婚して、亡くなってしまったら嫌だもの。






 姉の婚約が白紙になった次の日、姉に婚約の申し込みがあった。


私の婚約者ジーメンスだ。


私との婚約を白紙にし、姉と婚約したい、との申し出だ。




 庭で、姉とバッファの話を聞いた後、ジーメンスと会った時に


「私は、お飾りの妻は嫌です。でも姉が、お飾りで良いから貴方と結婚したいと言ってましたよ」


 と、姉へのお返しで、言っておいたのだ。


何も知らない姉は喜んだ。本当に何も知らないんだから。


両親は、不思議そうな顔をしていた。



 妹の婚約者だったのに、何故?



まぁ、普通はそうだろう。浮気でもない限り。


だが、姉が乗り気なので婚約は整った。


姉は大喜びだった。


「ごめんなさいね。私だけ幸せになって」


 と笑っていた。


知らないって、本当に幸せね。




 実は小説の続編で、ジーメンスが婚約したのは、ジーメンスの義妹との秘密の愛を誤魔化すために、お飾りの妻が必要だったから、と判明するのだ。


妹は、結婚式の後に、別館へ押し込まれ冷遇される。


義妹との愛の巣の本邸には、どうしても入らせたくなかったようだ。


義妹をエスコートしたいから、と、社交界にも出られず、愛されずに妹は、流行り病で死ぬ。




 つまり、ジーメンスと婚約した姉が、そうなるわけだ。

妹の婚約者を奪った報いだろう。


 ちょっと待って作者?姉妹両方死んだけど、主人公って誰だったの!?




 そしてその後、姉が『自分の婚約者を唆して浮気させようとして妹を貶め、横恋慕した妹の婚約者を略奪した』という噂が、社交界に流れた。


 どうやらヘンリーが、さり気なく流したらしい。


姉がお茶会に行くと針の筵らしい。ヘンリーが言っていた。


 でもそれも、婚約期間までだ。姉は、ジーメンスと結婚したら、エスコートしてもらえないし、別館に閉じ込められるから、社交界から消えるんだもの。






 さて、婚約者のいなくなった私だが。


「邪魔者はいなくなったし、そろそろ俺と婚約しない?」


 並んで庭を散策しながら、何気ない口調でヘンリーが言った。


何気ない口調だが、耳が赤くなっている。


…こいつ、照れてる!?


 薔薇はもう散ってしまっていたが、ラベンダーが咲いていた。


「ヘンリーって、私のこと好きだったの?」


 私は真顔で聞いた。そんな素振りは無かった。


「ノアこそ、俺のこと好きだろ?」


 しばらくヘンリーと睨み合う。

まぁ、その通りなんだけど。


「婚約してあげても良いけど」


「俺がもらってやるよ」


 またヘンリーと睨み合う。




しばらくして、どちらともなく笑いだす。


ヘンリーは跪いて言った。


「結婚してください」


「はい」


 私はヘンリーと婚約して、幸せになった。



読んでいただきありがとうございます

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