姉の婚約者を奪う妹に仕立て上げられましたが、日本には「倍返しだ!」って名言があるのをご存知?
名前を借りました
フィクションです
姉の婚約者を奪う妹。
奪った姉の婚約者から、DVを受け、妹は結婚してすぐに死んでしまう。
姉は、妹の婚約者と婚約して幸せになる。
という小説が流行っていた。
私はその、妹に転生していた。
姉ナンドは、転生者のようだ。早く幸せになりたくて、婚約者バッファを唆し、妹の私ノアと浮気させようとした。
「妹が、貴方を好きって言ってたわ」
「本当か?参ったなぁ…モテる男はツライなぁ…」
それを聞いてしまった私。
いくら好きって言われたからって、婚約者の妹に手を出すなよ気持ち悪い。しかも伝聞だし、本人は何も言ってないし、本人に確認すらしていない。
そして、他人から聞いたことを迂闊に信じるな。お前は貴族失格だ。
…よし、潰そう。
もしかして、小説も、姉がやったのか?
私の婚約者ジーメンスと婚約する為に、私とバッファを浮気するように仕向けた?
最低だな。
それにしても…
ジーメンスで、本当に良いのかなぁ?
本当はアレなんだけど。
ま、いっか。そんなにジーメンスと婚約したいなら、協力してあげよう。
ちなみに、丁度その時に、幼馴染のヘンリーが来ていて、庭に咲いた薔薇を一緒に見ていた。
庭の片隅に私達がいることに気付かない姉達は、ベラベラと計画を喋り、まるっと聞かれてしまったことにも当然気付いていない。
2人が去った後、ヘンリーは呆れた顔をした。
「大丈夫なの?あれが貴族で」
「大丈夫なわけないでしょ」
私も呆れた顔で言った。
「だよなぁ」
「姉は、ジーメンスと婚約したいみたい」
「はぁ!?ジーメンスって、ノアの婚約者だろ?」
「そう。ジーメンスと婚約する為に、邪魔なバッファを私に押し付けたいのよ」
「はぁ…!?」
訳が分からないよ。
「で、どうするんだ?」
「知ってる?やられたらやり返すんだって。倍返しで」
ヘンリーは、真顔になった。
「俺のこと好きなんでしょ?デートしよう」
気持ち悪い勘違い男バッファが、我が邸に押し掛けてきて、私を呼び出し話し掛けてきた。
婚約者がいながら浮気するなんて。
判決 地獄行き〜〜〜〜
琵琶法師の歌が脳内を通り過ぎたわ。
「ご冗談を。貴方はお姉様の婚約者です。お姉様とデートしてください」
私は、大声で言った。
常にメイドや護衛を側にいさせて、無理矢理連れて行かれたと後に証言をさせるつもりだ。
「照れなくても良いんだぜ」
勘違い男が寝言を言った。
「私には婚約者がいます。他の男性と噂になりたくありません」
「ちょっとデートするくらい良いだろう?」
良いわけないでしょ。
「では、父と、私の婚約者に許可を取ってください」
「煩い黙れ!言うことを聞け!」
腕を掴み、無理矢理私を馬車に乗せた。拉致よ!犯罪よ!
私は、護衛の腕を掴んで馬車に連れ込んでいたから、2人きりにはならなかった。
ギリギリセーフ!
いや、セーフじゃない。既にDVじゃないの!
「護衛は外だ」
勘違いDV男が言った。
「私には婚約者がいます。不貞はしたくありません」
「煩い!」
「では私を馬車から降ろしてください」
「黙ってついてこい!」
「貴方には婚約者がいるのですよ?何を考えているのですか?」
「俺の言うことを聞け!」
会話にならない。
馬車は動き出した。
無言が続く。話したくないから良いけど。
フキハラじゃない。
馬車が目的地に着いたようだ。
腕を捕まれ馬車から降ろされる。
「離してください」
バッファは、私を無視して歩いた。
カフェの中に入った。オシャレなカフェには、女性客がたくさんいた。
「私は帰ります!離してください!」
大声で言ったが、また無視された。
だが、周囲の客達は、私の声を聞き、耳だけは私達に向けている。
目撃者は、いくらでもいてほしい。
「貴方は姉の婚約者なのですよ!姉を連れてくれば良いでしょう!」
「良いから、座れ!」
命令口調である。空いているテーブル席があり、私の腕を掴んだまま、イスを引き、私を座らせようとする。
私は抵抗した。
「私には婚約者がいます!今すぐに帰らせてください!」
護衛は、側にいるが手を出さない。命の危機の時にだけ、手を出すように命令している。
これは、私が仕込んだ罠なのだ。
「お前、いい加減にしろ!せっかく俺が誘ってやってるのに生意気だ!黙って言うことを聞け!」
とうとう、バッファが大声で怒鳴った。
「すみませんすみませんすみません!どうか、命だけは助けてください!!」
私は大袈裟な程に怯えて叫んだ。
当然、注目の的になった。
店中の客と店員が、注目している。
だが、バッファは気付かない。
護衛が、入店時に店員に伝えてくれたのか、氣志…じゃなかった、騎士団の騎士達がやって来て、バッファが連れて行かれた。
私にも話を聞きたい、と言われたので、偉い人の後についていく。
騎士団の本部で取り調べが行われた。
「あいつが、俺を好きだと言うからデートしてやったのに!」
と、バッファは言っているらしい。
冗談も顔だけにしてほしい。誰が婚約者の妹に手を出す男を好きになるか。何でそんな妄想ができるのか?気持ち悪いなぁ。
たとえ好きになったとしても、姉の婚約者と、どうにかなろうとはしない。まともな人なら。
自分にも婚約者がいるのだから、他の男と出掛けるような不誠実なことはしない。まともな人なら。
バッファと婚約したいなら、まずはお互いの婚約を白紙か解消にして、それから改めてバッファと婚約するべきだ。まともな人ならそうする。
姉も、両親とバッファの両親とジーメンスの両親を説得して、婚約を取り替えれば良かったのだ。
浅知恵で、バッファと私を浮気させ、婚約破棄をさせて、残ったジーメンスと自分が婚約するなんて…
まともな神経じゃない。
ジーメンスのどこが良いんだろ?
まぁ、顔は良い。愛想も良い。
それは、バッファも同じだ。爵位も嫡男であることも同じだ。
…本当に、どこが良いんだろ?
私は、女性の騎士から取り調べを受けた。
犯人ではないから、簡素な応接室のような部屋だった。
「何があったんですか?」
「私は無理矢理連れて行かれました。お姉様の婚約者と噂になってはいけないから、と断ったのに、無理矢理連れて行かれて…怒鳴られて…怖かったです…」
私は、泣くのを堪えて気丈に振る舞っているような顔をした。新人女優賞をもらえるかもしれない程の、迫真の演技だ。
「バッファ殿が好きなのでは?」
女騎士が言った。
「まさか!姉の婚約者に横恋慕するような不誠実なことはしません。それに、私には婚約者がいます。婚約者と上手くやっているのに、わざわざ姉の婚約者に手を出すわけないです」
「今、家族に話を聞きに行っています」
「玄関で、大声で拒否してたのに、姉は出てきませんでした…姉は助けてくれませんでした…どうして?」
私は俯いて、両手で胸元を押さえた。
これだけ言えば、姉は婚約者が何をしようとしていたか、知っていたかもしれない、と、印象づけられる。
その後、家に帰って良いと言われたが
「姉の婚約者がまた来るかもしれないと思ったら、怖いです」
と、怯えてみせた。
バッファは、今日は留置所にお泊りらしい。ざまぁ。
護衛もいるが、邸まで馬車で女騎士が、背中を撫でて慰めながら送ってくれた。
両親は、心配そうに迎えてくれた。
私達姉妹に、クズな婚約者を押し付けた、人を見る目の無い両親。
姉は出てこなかった。だが、部屋にはいるらしい。
これだけ大騒ぎになったのだから、姉の婚約は白紙になった。
白紙になったのは、私にも慰謝料を、とバッファの両親から言われて
「慰謝料なんてもらって、姉の婚約者に恨まれたくない、もう関わりたくない」
と、泣き落としたからだ。
それで、白紙なら婚約は無かったことになるから、姉に傷がつかない、と両親も考え、二度と姉妹に近付かない約束で、白紙にしたのだ。
バッファは、問題を起こしたので廃嫡になって、領地の邸に幽閉された。
これで、バッファのDV被害者が出ることはないわ!他の令嬢がバッファと結婚して、亡くなってしまったら嫌だもの。
姉の婚約が白紙になった次の日、姉に婚約の申し込みがあった。
私の婚約者ジーメンスだ。
私との婚約を白紙にし、姉と婚約したい、との申し出だ。
庭で、姉とバッファの話を聞いた後、ジーメンスと会った時に
「私は、お飾りの妻は嫌です。でも姉が、お飾りで良いから貴方と結婚したいと言ってましたよ」
と、姉へのお返しで、言っておいたのだ。
何も知らない姉は喜んだ。本当に何も知らないんだから。
両親は、不思議そうな顔をしていた。
妹の婚約者だったのに、何故?
まぁ、普通はそうだろう。浮気でもない限り。
だが、姉が乗り気なので婚約は整った。
姉は大喜びだった。
「ごめんなさいね。私だけ幸せになって」
と笑っていた。
知らないって、本当に幸せね。
実は小説の続編で、ジーメンスが婚約したのは、ジーメンスの義妹との秘密の愛を誤魔化すために、お飾りの妻が必要だったから、と判明するのだ。
妹は、結婚式の後に、別館へ押し込まれ冷遇される。
義妹との愛の巣の本邸には、どうしても入らせたくなかったようだ。
義妹をエスコートしたいから、と、社交界にも出られず、愛されずに妹は、流行り病で死ぬ。
つまり、ジーメンスと婚約した姉が、そうなるわけだ。
妹の婚約者を奪った報いだろう。
ちょっと待って作者?姉妹両方死んだけど、主人公って誰だったの!?
そしてその後、姉が『自分の婚約者を唆して浮気させようとして妹を貶め、横恋慕した妹の婚約者を略奪した』という噂が、社交界に流れた。
どうやらヘンリーが、さり気なく流したらしい。
姉がお茶会に行くと針の筵らしい。ヘンリーが言っていた。
でもそれも、婚約期間までだ。姉は、ジーメンスと結婚したら、エスコートしてもらえないし、別館に閉じ込められるから、社交界から消えるんだもの。
さて、婚約者のいなくなった私だが。
「邪魔者はいなくなったし、そろそろ俺と婚約しない?」
並んで庭を散策しながら、何気ない口調でヘンリーが言った。
何気ない口調だが、耳が赤くなっている。
…こいつ、照れてる!?
薔薇はもう散ってしまっていたが、ラベンダーが咲いていた。
「ヘンリーって、私のこと好きだったの?」
私は真顔で聞いた。そんな素振りは無かった。
「ノアこそ、俺のこと好きだろ?」
しばらくヘンリーと睨み合う。
まぁ、その通りなんだけど。
「婚約してあげても良いけど」
「俺がもらってやるよ」
またヘンリーと睨み合う。
しばらくして、どちらともなく笑いだす。
ヘンリーは跪いて言った。
「結婚してください」
「はい」
私はヘンリーと婚約して、幸せになった。
読んでいただきありがとうございます




