怪人二十面相②
館内の証明が一斉に消え、館内中、と言うよりも、館内中の全警備だが―が、一気にパニックに陥る。「おい!これはどう言う事だ!」「糞っ!怪人だ!あの野郎ォ!畜生ォ!真っ暗で目の前が全く見えねえ!」そんな警備達の声が真っ暗闇の館内中から口々に聞こえて来る。「おい。全員、気を引き締めろ。注意を怠るな。僅かな音も聞き逃すんじゃないぞ。いつ何処から怪盗が飛び出すか。分からないのだからな。」警備達とは対照的に女王が喚き散らす事も無く、至って冷静に、しかし、はっきりとした口調でその場に居る一同全員に注意喚起を促した。「おーい。ガキんちょ。大丈夫か?」ヒカルがソウルの身を案ずる。「うん!大丈夫だよ!僕は絵の前に居るよ!趣味の悪い血塗られた勇者の絵の前にね!」ソウルが皮肉っぽく答える。「あーへいへい。趣味の悪い絵とか言ってすいませんでしたね〜。」ヒカルが上辺だけで謝る。謝まりながらソウルの声が聴こえて来る方向へ進んで行く。闇の中なので、手探りしながら、であるが。(…にしても、怪人は一体何処から出て来るんだ?それに、博物館の心臓って何だ?やっぱりヒカルが言う通り、物品とかじゃなく館長とかなのか?)ジンが頭の中で思考を巡らせる。
「おーいガキんちょ…。何処だ…。おっ!手が当たった。ソウルか?」「あ!ヒカルおじさん!うん!そうだよ!僕は此処だよ!」「おじさん言うな!俺はジンの同僚だっつってんだろ!俺はジンと同じ20代の青年何だよ!」「ええ〜!全然そんな風に見えないよ!おじさんに見えるよ。ジンは確かに20代の青年に見えるけどさ。」「おいおい…。ショックな事言うんじゃね〜よ〜…。俺…、そんな老けて見えるのか。傷つくんだが…。」そんなやり取りを傍で聞きながら、ジンは、(あ、俺はちゃんと年齢通り若く見られてるんだな。良し。良いぞ。)と感じた。「そっ、それにしても怪人は一体何処から出現するんでしょうか?博物館の心臓って何でしょうか?何を盗むつもり何でしょうか?
何だか私、心配になってきちゃいました…。」ソフィアが不安そうな声を上げる。「博物館の心臓って言うのが、ヒカルが言う様に本当に館長の事なのか、分からないけど、ソフィア。取り敢えず、今は僕の傍に居るんだ。何かあった時の安全の為にね。」ヒート王子が不安がるソフィアを安心させる様に語り掛ける。「傍に居ろって言われても、一体何処に居るんですか?この真っ暗闇の中じゃ、位置関係が全然掴めません…!」ソフィアがやはり不安そうな声を上げる。一方、それとは正反対に、ダックの元気で明るい声が聴こえて来る。「女王様〜!この僕が、女王をお守りするッス〜!!」「貴様の様なキモい変態の警備等要らん。」「おっ!女王の声が今こっちの方から聴こえたっス〜。」「近寄るな。」ゲシッ!「ぷげえっ!」ゴロゴロゴロゴロ…!どうやら、ダックが暗闇の中、いつもの様に女王に抱き着こうとし、蹴り飛ばされたらしい。ジンはやれやれと頭を掻く。一同がその様なやり取りを繰り返していると、ダックが何やら気配を感じ取る。
「むっ…!!この気配…!!何やら不穏な空気を感じるッス!」その言葉を聞いた女王が疑問を口にする。「気配?」ダックが答える。「怪盗の気配ッス!何処からか感じるッス!」ダックが暗闇の中で、怪盗の気配を感じ取る。「野生の勘と言う奴か…。流石だね。ダック。」ヒート王子がダックに褒め言葉を投げる。暗闇の中でダックの野生が研ぎ澄まされる。「音もしないし、姿も見えないけど、でも確かに気配だけは感じるッス!何処からか…。おっ!こっちッス!」そう言ったかと思うと、ダックは暗闇の中で高速移動し、瞬時にその場から消えた。「おい!ダック!?姿は見えねーけど、この場から消えたのか!?」ジンが叫んだ。「いや、違うよ。ジン。消えたんじゃない。高速で移動したんだ。」ヒート王子が暗闇の中で冷静に分析する。「所謂ヤムチャ視点って奴だな。暗闇で姿が見えねーけど。」ヒカルがまた日本のアニメに結び付ける。「いや、だからさ、お前いちいち、日本のアニメに結び付け過ぎ何だよ。」ジンが突っ込む。ヒカルが言い返す。「いや、だから別にアニメに結び付けてねーよ。…あ、所で、ヤムチャが実際にヤムチャ視点になった事は原作で一度も無いらしい。」ヒカルの雑学を聞き、ジンが思わず「えっ!?マジで!?」と驚愕を示した。そして、そんな時だった。「ぎっ!ぎゃああああああ!!!」暗闇の中何処からか叫び声が聴こえて来た。「わっ!何々!?何やら断末魔が何処からか聴こえて来るよ!」ソウルが慌てふためく。「なっ、何でしょう。今の叫び声は…。何やら只ならぬモノを感じましたが…!」ソフィアも並々ならぬ気配を感じ取る。そして、また再び「ぎっ!ぎゃああああああああ!!!」悲鳴の様な断末魔が耳に届く。
「何だ何だ!?何が起こっているんだ!?」ジンがたじろいだ。「まさか…ダックの奴、野生の勘を研ぎ澄ませ、怪盗の位置を特定し、一気に高速移動して瞬時に怪盗に接近し、怪盗をフルボッコにして居るのか!?」女王がやや引きながら、しかしそれなりに冷静に判断していた。その後も、断末魔は続く。「ぎゃああ!ぐわああああ!」女王の言う通り、恐らくダックが怪盗をフルボッコにして居るのだろう。一同はそう考えて居た。そうして、暗闇の中ではあるが、徐々に目が慣れ始め、少しずつ周囲の状況が一同にも確認出来る様になって来た。その時だった。ピシュン!とドラゴンボールの高速移動の様な音を立てて、一同の真ん中にダックが出現した。そして、ダックは自分の片腕に仮面を被った怪盗を抱えて居た。怪盗は、誰の目に見ても明らかにズタボロである。ダックがフルボッコにしたのが、一同にもすぐ理解出来た。「片付けて来たッス〜!」ダックが親指を立てて、グッドサインを出す。そして、「女王様〜!怪盗を捕まえたので、是非褒めて欲しいッス〜!」と叫びながら女王に抱き着こうとする。
女王は無言でキックをダックに食らわし、「ぷげえっ!」とダックがゴロゴロと床を転がる。ヒート王子が苦笑いしながら、「女王様。ダックが捕まえてくれたんですから、何も蹴りを入れなくても…。」とダックにフォローを挟んだ。ソフィアは「凄い!ダックさん!やっぱり流石ですね!身体能力が半端じゃありません!」とダックに褒め言葉を掛ける。ジンは「これだけの異常な身体能力があれば、落ちこぼれだから魔法使えないとか、関係ねえな。それを補って余りある戦闘能力だ。」と分析。分析した直後、気絶していた怪盗が目を覚ます。「う〜ん…。私は確か、暗闇の中で何者かにフルボッコにされて…。」はっとして怪盗が周囲を見回す。自分が一同に包囲されている事に気が付く。「逃げようとて、そうはいかんぞ。」女王が詰め寄る。「さて、博物館の心臓とは何だったのか。教えて貰いましょうか。」ソフィアも同じ様に怪盗に詰め寄った。怪盗はおどおどした様を見せた後、観念した様に頭を垂れ、こう口にした。「…サーセン。ちょっと調子来いてました。心臓と言うのは、この博物館の館長の事です。博物館の全証明を消し、暗闇に乗じて館長を誘拐…。いえっ、盗もうとしていました。」それを聞き、ツンとしながら「ふん。言い直すな。」と女王がキックを怪盗にお見舞い。怪盗は「だっ!だって、私、怪盗ですもん〜!」と言いながら天を舞うのだった。鼻血を出しながら。
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