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第5話

森が背後で道を飲み込んだ。


息を吸うたび、肺の奥が砕けた硝子みたいに軋む。


魔晶石に焼かれた肺はまだ生きていて、

吸い込む空気が火の粉みたいに胸を抉った。


いい。


痛みは、生きている証だ。


神殿はもう近い。

感じる。

生き物のものではない、静かな凪。


開けた場所に踏み出した瞬間、足が止まった。


アンデッドが二体。


彷徨っているわけでも、

襲いかかってくるわけでもない。


ただ——立っている。


一体は大人。

もう一体は、子ども。


子どもの首がゆっくり傾く。

濁った瞳。半開きの口。


飢えはない。


ただ、静かな——

どうしようもない待機。


俺はナイフを握り直した。


魔晶石はない。

詠唱もない。


あるのは鉄と、意地だけ。


「……悪いな」


誰に向けた言葉か、自分でも分からない。


先に大人を倒す。

速く。

確実に。


子どもが、震える小さな手を伸ばしてきた。


一瞬、止まる。


それでも——終わらせた。


再び静寂が落ちる。


刃を草で拭い、俺は神殿へ向かった。


中に入った瞬間、空気が変わる。


温かい。

静かだ。

清浄……?


違う。


綺麗すぎる。


瘴気は壁に張りつき、

隅に澱み、

喉を塞いでいるはずだった。


なのに——


ここは、洗い流されたみたいに澄んでいる。


壁に手をつき、よろめく。

肺が焼ける。

視界が狭まる。


「遅いわね」


声がした。

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