誘拐。監禁。監視。人でなし
私は誘拐された。らしい。
実の父……と思っていた男にそう言われた。
物心付いたばかりの娘にひどい事を言うものだ。
私の身体には消えない傷がある。
これは父が付けたものではない。
記憶には無いが、これを付けたのが本当の両親だとしたら私は誘拐されて幸運だったのかもしれない。
監禁され、学校にも行かせて貰えず、素敵な恋をすることも無く老いてしまったが私はそれで良かった。
良かったと思うしかない。
「……くぅ」
「……大丈夫!?」
少し声を出しただけで台所にいた父が居間に飛んできた。
私は腎臓の病気でもう長くない。
2階の自分の部屋にはもう上がれないので居間で寝起きしている。
「少し痛んだだけよ」
「うーん。お医者さんかねぇ?」
「大げさよ」
私の看病のせいで父が仕事にも行けないのは心苦しい。
私なんかいないものとして扱っていいのに。
「やっぱり少しだけここにいるよ」
父がゆっくりと私の頭を撫でた。
それが気持ちよく。強い眠気が来た。
最近よく寝れてなかったから嬉しい。
すごく沢山寝れそうな気がする。
「……ごめんねぇ。ごめんねぇ」
「誘拐してくれてありがとう」
やっと言えた。
ありがとうお父さん。
私幸せだったわ。
・
木造の空き家の玄関の前に子猫の死体……ではない。ほんの少し動いたぞ。
「うわっ、きったね」
傷だらけで血だらけで目ヤニだらけで臭い。
「君ひどいぞ」
「……ピィ」
その『ピィ』に俺は恋をした。
親猫はいるのかな?飼い猫ではないよな?
まぁいいや。ここにいるより不幸って事はないだろ。
「誘拐して俺のおうちに監禁しちゃうよ〜。ごめんね〜お前は今日からうちのコだよ〜」




