表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代ダンジョンのF級探索者の俺、常に美少女魔王が1m以内にいるせいで一人になれず詰んでいる。  作者: 水乃ろか


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/22

第14話 フィーバータイム!

「おい、大変だ! マオ、いるか!?」


 ヒナタさんの突然の宣言に、俺たちが驚いていた、その時。

 ギルドの扉が勢いよく開き、血相を変えたカエデが飛び込んできた。


「あ、カエデ! ど、どうしたんだよ、そんなに慌てて」


 正直、カエデが帰ってきて助かった。


 ヒナタさんのあの真っ直ぐな視線にどう返していいか分からず、俺は避けるようにカエデの方へと向き直った。

 

「下級トレジャーダンジョンのフィーバータイムが始まったんだよ! マオ、のんびりしてる暇はないぞ。すぐに向かうんぞ!」


「えっ!? フィーバータイムだって? ……嘘だろ、一年前振りじゃないか!」


 トレジャーダンジョンのフィーバータイム。

 普段のそこは、モンスターもいなければ宝箱も空っぽという、ただの何でもないダンジョンだ。

 

 だが、年に一度あるかないかの『フィーバータイム』が始まると話は別だ。

 魔石や宝箱のドロップ率が異常なまでに跳ね上がる。

 探索者なら、たとえ這ってでも行かなければならないボーナスタイムだ。

 

 モンスターも湧き出すが、正直そこまで気にする必要はない。

 ダンジョン内は金に目がくらんだ探索者たちでごった返す。

 モンスターが湧いた瞬間に、ハイエナのような連中に叩き潰される『モグラ叩き状態』になるのが恒例だからだ。


「下級トレジャーダンジョン、ですか……」


 (かたわ)らで話を聞いていたレイカが、ひどく残念そうに肩を落とした。


「そうだな。あそこはD級以下の限定ダンジョンだから、レイカは悪いけど留守番だ」


「うう、残念です……ですが、マオさん! 行くなら、これをお持ちください!」


 レイカが食い気味に差し出してきたのは、見たこともないほど洗練されたデザインの超小型配信ドローンだった。


「え、これって……めちゃくちゃ高いやつだろ?」

 

「いいのです! マオさんの一部始終、この私が見届けさせていただきます。……師匠として!」


 鼻息を荒くするレイカの目力に圧され、俺はなかば強引にドローンを押し付けられた。


 申し訳ないという気持ちもあったが、それ以上に「一度は最新機器を使ってみたい」という好奇心が勝ってしまう。

 

「……分かった。ありがたく借りるよ、レイカ。俺の立ち回りで悪いところがあったら、後でアドバイスをくれ」


「はい! 楽しみに拝見いたします! よければ、お近づきの印に貰っていただけると嬉しいです!」


「お近づきって……こんな高いもの、もらえないよ……」


 苦笑いしながらドローンの電源を入れる。


 ブウン、と微かな駆動音を立てて起動したドローンは、俺の顔を認識すると、周囲を滑らかに旋回し始めた。

 羽音一つせず、視界の邪魔にもならない。

 どこからどう見ても、俺じゃ逆立ちしても買えない高級品だ。

 

「それじゃ行こうか、コロモチ。カエデ」

 

 俺がギルドを出ようとした、その瞬間だった。


「……マオくん?」


 ガシッ、と肩を掴まれた。

 振り返ると、そこにはヒナタさんが立っていた。


「すぐ返事を求めてるわけじゃないけど……私の気持ち、ちゃんと伝えたからね?」


 向けられたのは、底知れないほど艶やかな笑顔。


 ……不思議だ。

 美人が笑えば普通は「可愛い」とか「綺麗だ」と思うはずなのに、その笑みの奥に潜む『何か』が、本能的な恐怖を呼び起こす。


 いつもなら「マオは我のものだ!」と割り込んでくるはずのコロモチも、ヒナタさんの放つ威圧感(プレッシャー)を察したらしい。

 俺と一緒にタジタジになって、首をぶんぶんと縦に振っている。


「えと……はい。わかってます……それじゃ、行ってきます……」

 

 そうして、俺たちは目的地である下級トレジャーダンジョンへと向かった。


 ――――――――


「ほう。人間どもがウジャウジャとおるな。祭りか何かか?」


 ダンジョン入り口に到着すると、そこはすでに人で溢れかえっていた。

 コロモチが物珍しそうに周囲を見渡す。


「ああ、まあ……ある意味、祭りみたいなもんだな」


「すげぇ人だな……おいマオ! 全部取られる前にさっさと入るぞ!」


 カエデの探索者ランクはD級。F級の俺より二つ上だ。

 駆け出しだった俺にダンジョンのイロハを教えてくれた、口は悪いが頼れる先輩でもある。


 小学生と見紛うような小柄な体躯だが、自分の背丈の倍はある巨大な斧を担ぎ、カエデはノッシノッシと人混みをかき分けていった。

 

 中に入ると……そこはもう、地獄のような混雑だった。

 狭い通路に汗臭い探索者たちがひしめき合い、怒号が飛び交っている。


「すごいなこれ……カエデ、どこから攻める?」


「1階は話にならないな。2階まで一気に潜るぞ!」


 バーゲンセールに突っ込む主婦のような気迫で、俺たちは人の波を泳ぎ、二階層へと辿り着いた。


 ちなみに、俺もコロモチも特に変装はしていない。

 何人かの探索者が「あいつ、噂の……」とこちらを見ていたが、今の彼らにとって俺たちは二の次だ。

 何せ、そこら中に「お金」が落ちているような状況なのだから。

 誰もが目の色を変えて、モンスターの奪い合いと宝箱探しに没頭していた。


 そして2階層。

 1階層よりはマシだが、それでもまだまだ人が多い。

 

「ここもダメかぁ。マオ、三階層に行くぞ!」


「3階層か? あそこから先はモンスターも強くなるだろ?」

 

「どうせ人だらけなんだ、どうにかなるって。まずは行ってみようぜ!」


 カエデに押し切られる形で、俺たちは3階層へと足を踏み入れた。

 すると、さっきまでの喧騒が嘘のように、人の気配がまばらになった。

 

「お、急に快適になったな」


「カエデ、本当に大丈夫か? 人が少なすぎるってことは、それだけリスクがあるってことだぞ」


「お前は心配性だなぁ。ま、まずは一匹、手頃なやつで強さを確かめてみようぜ」


 通路を慎重に進んでいると、前方に緑色の肌をした小柄な影が現れた。

 ……ゴブリンだ。


「ギャギャギャ!」


「うわ、来たぞ!」

 

 ゴブリンはこちらの姿を見つけるなり、錆びた短剣を振りかざして突っ込んできた。


「おらあぁぁぁぁぁ!!!!」


 グシャッ!

 

 カエデが軽々と振り下ろした大斧が、ゴブリンを正面から一刀両断にしていた。

 ゴブリンは悲鳴を上げる暇もなく霧散し、小さな魔石へと姿を変える。


 相変わらず、カエデのパワーは凄まじい。

 

「へへ! 楽勝だったな!」


 カエデが嬉しそうに笑顔で振り返った、その直後だった。


 ――ゴトンッ!


 重く固い音が通路に響いた。


「……嘘だろ、宝箱か!?」


「すごい! 一発目で出るなんて!?」


「なんじゃ? この小汚い箱は?」

 

 駆け寄ると、そこには古びた木箱が鎮座していた。

 カエデが緊張した面持ちで、その蓋をゆっくりと持ち上げる。


 中に入っていたのは、金属製の小手……ガントレットだった。

 それも、左手用だけ。


「なんだよこれ……ボロボロじゃねーか」


 カエデの言うように、それはお世辞にも逸品とは言えなかった。

 表面はくすみ、無数の傷が刻まれている。

 

「ハズレか、まあいい。この調子でどんどん行くぞ! マオ、それ勿体ないから着けておけよ」

 

「お、おう……」


 渡された小手を左手に装着してみる。

 ずっしりと重く、何の効果があるかも分からないが、装備を身につけると少しだけ探索者らしくなった気がして、悪い気分ではなかった。

 

 鼻歌混じりに先を急ぐカエデの後を、俺とコロモチが追う。


 しばらく進んだ時、通路の角からか細い声が聞こえてきた。


「だ、だれか……たすけ、て……」


 俺とカエデは顔を見合わせ、声のした方へ駆け出した。


 そこには、一人の男が通路の脇で(うずくま)っていた。

 

「おい、大丈夫か!? しっかりしろ!」

 

 カエデが大斧を置き、男の肩に手をかけた、その瞬間。


 男の体が、眩しいくらいの紫色の光を放った。


「うわっ!」

「な、なんだ!?」


 強烈な閃光に目を細め、光が収まった時。

 

 俺の目の前には、カエデが糸の切れた人形のように倒れていた。


 そして、さっきまで助けを求めていたはずの男は、勝ち誇ったような卑劣な笑みを浮かべて立ち上がった。

 

「ふん、楽な仕事だったな。【帰還】(リターン)!」

 

 男がそう言った瞬間、その姿は霧のようにかき消えてしまった。


「なっ!? ……カ、カエデ! 大丈夫か?! カエデ!」


「う……うぅ……」

 

 地面に横たわるカエデの肩を揺さぶるが、苦しげな呻き声を漏らすだけで意識が戻る気配がない。

 

「おいマオ! 今のは何だったのだ!?」

 

「分からない……クソッ、とにかくカエデを連れて帰るぞ!」


「お、おう……ん? あれはなんだ?」


 コロモチが指差した先。


 先ほどまで男がいた場所に、一枚のスキルカードが落ちていた。

 コロモチがそれを拾い上げ、俺の目の前に差し出す。

 

 そこには一枚のスキルカードが落ちていた。


 そのカードに記載された文字を読んだ瞬間、俺の背筋に氷を押し当てられたような戦慄が走った。


 ========

 スキル名:

  【呪殺】

 

 効果:

  対象を24時間後に呪い殺す。

  ただし、至近距離で使用する必要がある。


 残り使用回数:

  0回。

 ========

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ