第8話 堕天使は己が運命を知る
体がカタカタカタと震え、歯がカチカチ言っている。
「聖母さまが眠りについてからは、あの方は宮殿に篭り、永遠に祈りを捧げているの」
「……」
「愛しすぎてしまったことの懺悔と、聖母さまの帰りを待ち続けて。永遠の、果てしない祈りよ」
ひいぃぃ……!
語りがこわい、こわい、こわい!
セラフィナ……抱っこして耳元で言うことじゃないわよぉ!
くっついたの俺だけどさあ!
「こうして世界に平和が訪れたの」
聖母の犠牲によってな!
その心情を思うと、哀れすぎて吐き気が込み上げるわ!
どうせ女神に身代わりの捨て石にされたんじゃないの!?
お前ら何してんのぉ?
これ、本当に現実で合ってる?こわッ!
そんな俺のパニックをよそに――
「……それで、ねぇ?」
セラフィナが俺を見て、ふわりとほほえむ。
その瞬間、背筋に電流が走った。
ゾッとする背すじに、冷汗がツーッと落ちた。
ひいいっ……!
や、やめてぇ……。
セラフィナ……も、もうやめてぇ……!
言わないでぇ……!
なんか……さっきから何か感じるの……。
ヒタッ…ヒタッ…ヒタッ…ヒタッ…、って……。
何かが近づいてきてる気がするのよぉ……!
運命っていう名の、足音がよぉ……!
この日がいつか来るって、思ってたわ……。
エリュシェル、あなたはね……、聖母さまにとても似ているのよ。
ぎゃああああああぁぁぁぁぁあッッ!!!
次の生贄は、俺だ!




