第6話 マッマは語る
俺はセラフィナに連れられ、池のほとりの祭壇へやってきた。
「うぇーーーん、マッマァ……怖かったよぉお……」
と、ここぞとばかりに、ぴょーんとセラフィナの胸へ飛び込み、腕と脚に絡みつき、
柔らかい感触に包まれつつ、ニチャアと笑った。
セラフィナはそんな俺の頭をぽんぽんと撫でてくれる。
「あなた、ほんと始祖さまに似てるわね~」
は?どこがよ?
あんなヤンデレ王子と、どのへんが似てるってのよ。
体中が悲鳴を上げた怖気は消えたけど、大宮殿の巨大な扉は未だ開けっぱなしで、中から白い光が漏れている。
誰かあの不吉な扉、閉めてきて?
セラフィナは俺を抱きかかえるようにしながら、ふわっと微笑んだ。
「じゃあ……何から話しましょうか」
俺は胸元に顔をうずめたまま答える。
「うーん、始祖さまと堕天使の成り立ちかなぁ?」
「じゃあそこからね~」
Q. 始祖さまって元々どこにいたの?
「天界よ~。とっても綺麗な場所だったらしいわ」
Q. なんで堕とされたの?
「女神に恋しちゃったのよ。何度も何度もしつこくお付き合いして下さいってお願いしたらしいの」
Q. ……それストーカーじゃない?
「まあ、女神が嫌がるくらいにはしつこかったみたいね~」
……ガチじゃん。
Q. で、堕とされてどうなったの?
「この世界を滅ぼしかけたの」
Q. いやなんでよ!なんで世界を滅ぼすの!?
「女神に会えない悲しみで絶望しちゃったのと……この世界、女神が創ったのよねぇ」
Q. ……つまり?
「“これ壊したら女神が止めに来るかも!”って思ったらしいの」
考え方が完全に元カノの家燃やしに行くメンヘラじゃん。
Q. どうやって止めたの?
「女神は一人の人間の赤子に力を授けたの。女神の代行者――“使徒”ね」
Q. おお、使徒!勇者!!
「そうそう、その女神の使徒が……私たちの母、“聖母“なのよ」
……?
……は??
邪神の嫁が、勇者って何事?
天界の恋愛ドロ沼が家庭にまで波及してるじゃん。
セラフィナは俺をぎゅっと抱き寄せ、胸元に頬を押し当ててくる。
いやいやいやいや、やめてその意味深スマイル!
何かあるの!?もうやだ!!!
女神、始祖、堕天使、勇者……その全部に挟まれてたの俺!?
この世界の血縁関係と恋愛関係、複雑すぎる!




