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堕天使ちゃんは逃げ惑う  作者: 霞灯里
第2章 カリオン王国

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第36話 ゴロツキ共を成敗する

「冒険者の美女を見つけましたぁ!」

「で、でかしたぞ!!」

「……ほう、どこにいた?」


報告を待つバルガスのもとへ、息を切らした部下が駆け込んできた。そして影の中から黒衣の男が一人、ぬるりと姿を現す。室内が一段と冷え、殺伐とした緊迫した空気の中で部下が声を絞り出す。


「そ、それが……、す、すぐそこに……!」

「なんだと……?」

「お、お、表の商店街の至る所で……!食べ歩きをしているそうです!」


次の瞬間。


ドッガァアァン!!


黒衣の男が傍にある机に拳を振り下ろし叩き割った。木片が弾け、床に散乱する。


「くそがあぁ!!その女、街に”偽金貨”をバラ撒いてるんじゃねぇだろうなぁ!?」

「ヒィイイイ!!?」


この屋敷のすぐ傍で食べ歩きだぁ!?どこまでこの俺を煽ってきやがる!!


激高し血走った目で部下を睨みつけた。顔を真っ青にしながらバルガスと部下は、殺気に腰を抜かしその場に転がった。


あの黒箱の金貨は全て、実に巧妙に作られた偽金貨。数年に渡りこのカリオン王国に流通させ、がっぽりと稼いできた。しかし、最近ようやく国がその異常に気づき始めた。国中の各地で厳しい調査と回収、取り締まりが始まった。


そのため回収した偽金貨と共に国外へと逃亡し、他の国で改めて犯行に及ぼうとしていたのだ。だからこそ今、このタイミングで偽金貨がこの街に出回り痕跡を残すのは非常に不味い。何も起こしてはいけない時期だった。


額に青筋を浮かべ激怒しながら、バルガスに命令した。


「もう手荒で構わん、今すぐ止めろ!その女をすぐに連れてこい!!」

「はっ、はいいぃ!!」


ドスドスドスと、必死の形相でバルガスは脂肪で揺れる体を弾ませて走って行った。


「……一応お前らも行け、保険だ。だが基本は――バルガスの手下にやらせろ」

「承知した……」


どこからともなく、不気味な声が重なって聞こえた。





紙袋をいくつも抱え、鳥肉の串焼きを頬張りながらにっこにこで通りを食べ歩いていた。街行く乙女たちに色目と笑顔を送り「キャーッ」と黄色い歓声を浴びながら、るんるんと上機嫌だ。悪徳商人の住居の下見は済んだ、どう処すか考えよ。


……と気分よく思ってたのに。なんか、周囲を二十人ほどのゴロツキ共に囲まれた。


何?ナンパ?男に用は無いんだがぁ?思わず小首をかしげた。


「あらぁ……?なんかそっちから来てくれたのね?」


その中に、昨日ミィちゃんの家で見た借金取りの男たちがいる。いやらしい視線で私を舐め回し頬を赤らめながら、そいつが代表して一歩前に出ると口を開いた。


「お、おい、お前!ちょっと、付いて来い!」

「はぁ?」


呆れたように串焼きを一口かじりながら、鼻で笑ってやった。


「バッカじゃないの?お前のような不細工でダサい男についてく訳ないじゃない」


通りに居る周囲にいる人たちがざわめき心配そうに見ている中、人目も気にせずに借金取りは叫びだした。


「つ、ついて来いって言ってんだろぉ!?さもなくばぁ……!」


男が叫びながら、腰の剣をチャッと抜いた。それを合図に、他のゴロツキ共も全員一斉に抜刀し構えやがった。


……街中で剣を抜いていいんだっけ?この時点でもうアウトよね?


「キャーーッ!?」と街娘の悲鳴が上がり大騒ぎになる通りの中で、私は考えた。そういえばこの世界の、こういう場面の人間社会のルールってどうなってるんだろう?


やっちゃっていいのかな?大多数で武器を構えられてる時点で、正当防衛でいいわよね?うん、私は悪くないもん。


「……分かってるわよね?」

「あぁんっ!?」


私は射殺すような眼差しで見ると、その視線に気圧され一歩下がったゴロツキ共に冷たい微笑みを浮かべた。


「剣を抜いた以上、死ぬ覚悟があると受け取るわ」

「……な、何を言ってやがる!!」

「この状況、分かってんのかァ!お前ェ!」


昨日の借金取りが脅すように怒鳴りながら、剣を振り上げ突っ込んできた。


――遅っい、ふざけてるのかしら?


私は剣を振り下ろしてきた借金取りの腕に、かる~く手刀を一閃した。


バキイィン!


骨の砕ける鈍い音が響き渡った。借金取りの腕があり得ない方向に折れ曲がり、一回転しながら地面に叩きつけられた。それをぽかんと見ている他のゴロツキ共。


「……えっ?」

「あっ、あがぁぁああ!!? い、痛えェよぉ……!!」


地面に叩きつけられ血を流しながら悶える借金取りが、痛みに苦しんでいる。ざまぁ!他のゴロツキ共は唖然として硬直する。


「てっ、てんめえええ!!」

「ゆるさねええぇ!」

「ぶっころす!!」


我に返ったゴロツキ共が仲間をやられ顔を真っ赤にしながら、全員一斉に襲い掛かってきた。あはは、ハエ共がいっぱい飛んできたわ~。


――バキィン。

――ゴォキィッ。

――ベッキィン。


鈍く骨の折れる音が合唱するように幾つも響く。


私は止まって見えるゴロツキ共の間を風のように一瞬のうちに駆けながら、かるーく手刀と蹴りで全員の両腕と片足をへし折り転がしてやった。


一呼吸置いた後、私の背後で「ぎゃあああぁ!!」「ぐぁああああ!!」と悲鳴が上がった。関節が粉砕され腕と脚の骨は逆の方へ折れ曲がり、地面に叩きつけられた二十人ものゴロツキ共は理解が追いつかないまま、地面で蛆虫のようにのたうち回り始めた。


その場にいる街の人々がそれを呆然と見ている中、私は綺麗な長い髪をさらりと払って、ぽつりと呟いた。


「……つまらない男たちね」


次の瞬間、通りに「わぁあああぁ!!」と歓声と拍手が一斉に沸き起こった。


おっ、お~??

えへへ、カッコよかった私!?

この物語を読んで頂き有難うございます。

もし宜しければ、ブックマーク・評価を頂けると励みになり有難いです。

また、評価いただいた方、有難うございました!

今後ともよろしくお願いします。

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