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堕天使ちゃんは逃げ惑う  作者: 霞灯里
第2章 カリオン王国

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第35話 悪そうな豚野郎を思い出す


「ああ??……無くした、だと?」


低く、腹の底に沈む暗い声。


「お前、自分の懐に入れてどこかに隠したんじゃねえのか?」

「ち、違うっ!本当に街に入るまではあったんだ!本当にすまない!」


クロウリー商会の主バルガスは、豪奢な仕事部屋の中で暗殺者のような黒ずくめの五人の男たちに睨みつけられ、大量の脂汗をかきながら太った体を揺らし深々と頭を下げた。


黒衣の男たちの顔は影に沈み、視線だけがどこまでも冷たく光る。まるで刃のようだ。


「今部下たちに探させている!しばらく時間をくれ、必ず見つけ出す!」

「この失態……どう落とし前をつける?」

「ひっ、ひぃいいっ……!?」


殺気が空気を切り裂く。バルガスは悲鳴をあげ、床に転がった。


「……一週間だ、それ以上は待たない」


――こいつはただの小悪党。

我らに逆らう度量も知能も力も無い、命令に忠実に従う便利で優秀な駒。そんな駒が、初めて失敗した。本当に思いがけない何かがあったのだろう。


「……見つからなかったら、分かってるだろうな?」


黒衣の男が震えるバルガスに告げたその時、「コンコン」と部屋の扉がノックされた。五人は音もなく消え、部屋に残ったのは脂汗にまみれ震える男だけだった。


「……入れ」


バルガスは恐怖に震える体を正すと、「失礼します」と布を被せた箱を抱える部下が入室した。


「あ、あのうボス……、昨日街角の食堂より借金の返済がありました」

「……?……な、なにぃっ!?まさか、ルリミィアちゃんの店かっ!?」

「はい、そうです。金貨三百枚、全額返済です」


部下が布を下ろしたその箱には、大量の金貨が詰まっていた。


「ばかな、あの家にこんな大金を準備できるわけが……!?」


都市一番の美少女であるルリミィアにバルガスは大層惚れ込んでおり、嫁にするべく画策していたのだ。その為だけに、あの家が借金している金貸しの店を潰した。


「……チッ、まぁいい、やりようは他に幾らでもある。大金が入ったのならそれはそれで――」


唖然としたがすぐに気を取り直すと、部下に金を金庫へと仕舞うように指示した、その時だ。


その部下の影から、黒ずくめの男が一人ぬるりと這い出てきた。それに気づいたバルガスが「ひっ、ひいいぃ!」と悲鳴をあげる。


それに構わず男は、震える部下の持つ金貨を無言で数枚掴むと、淡く光るルーペのような魔道具で一枚一枚を覗き込み始めた。


シィーンとした静寂の中、暫らく経つと黒づくめの男が怒気を僅かにはらんだ声をかけてきた。


「……おい、バルガス」

「はっ、はいいぃい!」


「お前、舐められてるんじゃねえか?」

「……えっ??」


「これはお前が無くした……、金だ」

「っ!!?」


食堂の娘……?一体、何者だ……??





借金返済をした翌日、ミィちゃんはギルドでお仕事らしいので、私は早朝から東の商店街で食べ歩きをしていた。見つけた屋台やレストランを片っ端からにっこにこで渡り歩く。道行く人たちに注目されるのも慣れてきた。


うみゃい、うみゃい!何だか食いしん坊キャラになってきたぞ!


とはいうものの、この商店街へ来た理由はあった。ミィちゃんを追い込み困らせた悪徳商人の住処を聞き、下見に来たのだ。


さぁて、どうしてやろっかなぁ~?


借金返済はミィちゃん家を緊急対応で安全にしただけ。あんだけ私のミィちゃんを困らせた上に、嫁にするなどと企んだ愚行の始末を、ちゃあ~んと付けてもらわないとねぇ?


地獄刑に処す!


そんな事を考えながらのんびりと食べ歩いてると、目的地が見えて来た。


「あれは、悪そうな豚野郎の屋敷じゃん」


ここに来てようやく思い出した。あいつから金貨の入った黒箱を五つちょろまかしたんだ。三つくらいと思ってたら手が滑って五つもパクッてた。確か一つに金貨が二千枚程度は入っていたのよねぇ。


あっらぁ?

私ったらその金で借金返したのねぇ!ざっまぁ!!




黒衣の男は、あらゆる可能性を逡巡していた。そして思考の海に沈みながら――その“想定外の存在”の輪郭を掴み始めた。


奪った金貨で借金を返すなど、まともな神経ではない。あれは只の金貨じゃない。国やギルドの回し者なら、こんな派手な真似は絶対しないはず。何者かが明らかに喧嘩を売っている……。いいや、影に潜む我らに正面から宣戦布告をしている……?


「おい、この金は食堂の娘が払ったのだな?」

「い、いいえ、その友人らしき美女が、その場で肩代わりをしました!」


「美女だと……?」

「最近、都市に現れて話題になっている、女神のような、とんでもない美女です!」


一体、何者なのだ……?いや、捕らえて吐かせればいい。


更に聞くと、その女はブロンズランクの駆け出しの冒険者らしい。美女と聞き「ブヒィ!?」などと鼻息を漏らしている豚野郎を睨みつけ、指示をした。


「その女をここに連れてこい、食堂の娘もだ。なるだけ事を荒げるな、しかし抵抗するなら力ずくで構わん」

「はっ、はいい!!」


バタバタとバルガスは部下と共に走り出した。

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