第29話 スライムさんグッジョブ
悲鳴の方向へ一気に駆けつけると、そこは洞窟の中でもひときわ広い円形の空間だった。岩肌に囲まれたその場所には、魔力が澱のように溜まり空気がぬめりを帯びて揺らいでいる。――そして、うじゃうじゃと蠢くスライムたちが居た。
「い、いやああっ!!」
「やだぁっ、こないでぇ!!」
そして視界に飛び込んできた光景に、私は思わず息を呑んだ。
二人のうら若き乙女が、体中にスライムに「にゅるうん」と纏わりつかれ、互いに縋り合い床を転げながら、必死に身をよじっている。よく似た顔立ちの、姉妹と思しき美しい乙女たち。明るいブラウンの髪は乱れ、頬は涙と熱で朱く染まり、呼吸は浅く盛るような嗚咽と吐息が甘く漏れていた。
スライムたちは無邪気にしかし容赦なく、にゅるりと体を伸ばすと革の防具やローブ、そして衣類に纏わり付いている。布地はじわりと溶け彼女たちは半裸となっていた。そこから覗く艶めかしい素肌、チラリと覗く脚、そして零れ落ちる胸。乙女たちが悶える度にその体がひどく無防備にあらわになっていた。
「……な、な、なんといことっ……!!?」
それは、あまりにも非日常で、あまりにも扇情的。ダンジョンの中に突如として顕現した、とんでもないエロ空間。スライムさん、グッジョブ!あなた、MVPねぇ!
ダンジョン×乙女×スライム=極上のエロス……!私はまた一つ悟りを開いたっ……!!
猛烈に体がじゅんっと熱くなり、きゅっと内股になった。ああっ、鼻血でてるっ。
興奮に身を火照らせ顔を紅潮しながら「ハァハァ」としばらく凝視していると、私に気づいた二人が叫んできた。
「た、たぁすけてぇえ!!」
「おねがいしますぅ、たすけてぇ!!」
「っ!!?」
涙声で二人が必死に手を伸ばしてくる。いっ、いかん!時を忘れて没入してしまった!
身に着けてるものはいくら溶かしてくれても一向に構わんのだが、二人の肌にはすでに赤く腫れ火傷のような痕がいくつも浮かんでいる。早急に助けねば、乙女の柔肌までやらかすのは許せぬ!!
「今、助けるわ!」
私はフード下ろしながら頭を振ると、大きく髪をぱさぁっと広げサラサラきらりと流れた。その瞬間、乙女たちの視線が驚きと戸惑いに揺れた。
私は唖然としている二人に両手を広げ、空間魔法を発動した。
「えっ――?」
「シュンッ」と瞬き一つの間に、スライムを置き去りにし二人を私の腕にそれぞれ収め、緊急事態ゆえにあらわとなった二人の片胸をむにゅんと手で覆い掴み抱き寄せる。そして指を這わせその果実の先端を人差し指と中指の間できゅっと優しく摘んだ。緊急事態ゆえに。
「あっ、あんっ!」
「ひぃん!」
ピクンッと体を跳ねさせる二人の顔を覗き込むと、にっこりと慈愛の微笑みを浴びせかけた。その柔らかい胸を揉みながら。
「二人とも……、大丈夫?」
「はっ、はひいぃい」
「あっ、あのぉ、む、胸がぁ……」
安心するように、より強くぎゅっと抱きしめる。モミモミしながら。二人はピクンピクンッと体を震わせた。ああっ、堪らないわぁ!
「危なったわね、私が来たからにはもう大丈夫よっ!」
怯えの中、彼女たちに僅かな安心が混じっていく。潤んだ瞳で二人が私を見上げてきた。火照った頬に、縋る指先。
――これは、守らねばならない。この手は離さないわぁ、絶対に離すもんですかっ!
私はゆっくりと顔を上げ、広場を満たすスライムたちを見渡した。ざっと五十匹以上。そして、その奥にひときわ大きな赤い半透明のスライムがいた。
「あっ、あれはぁ……」
「このダンジョンの、ボスですぅ……」
震える声で乙女たちが教えてくれる。その声には恐怖が混じっていた。
「平気よ、私が居るでしょう?」
その言葉に、二人の表情がまた少し明るくなった。ああっ、これよこれ!二人から感じる、希望、期待、そして恋の予感!カッコいいとこ魅せなきゃねぇっ!!
私は乙女たちをしっかりと抱きしめながら軽やかに一歩踏み出すと、舞うように身を翻しながら、唱える必要もない呪文を唱え始めた。
「あかい火~、あかい火~、わるいものから~、食べていけ~、ここに残るは灰ばかり~……」
ダンジョン内に響く歌うような詠唱とともに、空気が震え魔力が満ちていく。そして二人と一緒にくるんと一回転すると、ビシっと毅然に美しく立ちポーズを決めた。
「――灼滅!」
次の瞬間、「ゴォオオオォッ!」という轟音とともに紅蓮の炎が広場を満たした。壁を舐め、床を走り、一斉に燃え上がった。溢れる炎はこの場どころかダンジョンを駆け巡っていく。
スライムたちは逃げる暇もなく体の水分が一気に蒸発し、ぶくりと膨れ黒く崩れ落ちていった。抵抗する間もなく炎に包まれ、そこに在るべきではない存在だけが選別され、跡形もなく全て焼き払われ消えていった。
スライム共を殲滅すると炎は消えていき、そこに残るのは熱を帯びた空気と、静寂と、僅かな消し炭、そして大量の魔石だけだ。
「ええぇっ!?」
「……す、すごい……!」
一部始終を目の様子を目の当たりにし、驚愕しながら二人は呆然と呟く。私は腕に抱いた乙女たちをぎゅっと抱きしめ、依然としてモミモミし続けていた。
「無事でよかったわ」
炎の余韻が揺らめく中、私は再びにっこりと二人に微笑みかけた。
この物語を読んで頂き有難うございます。
もし宜しければ、ブックマーク・評価を頂けると励みになり有難いです。
また、評価いただいた方、有難うございました!
今後ともよろしくお願いします。




