第21話 交易都市フィオル
身支度を整え、白地のロングコートをひらりと羽織り身を隠す。
深くフードをかぶると、森の奥に隠した我が城を後にした。青い空の下、魔法で身体を軽く強化し、風を切って交易都市フィオルへ向かう。
やがて視界に広がったのは、中世ヨーロッパの城塞都市を思わせる、壮観な石造りの外壁。灰色と白の石が積まれた高い壁、木製の大門、門前を行き交う荷馬車と商人──すでに「活気」が匂い立っていた。
外門前では、数名の門番が往来の検問をしており、運よく列は短い。手際よく進み、私の番になる。
「ライセンスカードは持ってるか?」
「もってませぇ~ん」
「では都市の入場料は銀貨三枚だ」
えっ、金取んの?ケチくさくなぁい??
あっ、そもそも金なんて持ってない。
だってぇ、堕天使だもぉん。
私は「ふむ」と頷くと、目に魔力を集め”神眼”を発動。兵士を透かして見ると、懐に財布っぽい袋があって中に貨幣が入ってた。
コートの内側に手を入れ、空間魔法でササッとその袋ごと抜き取ると、銀貨っぽいのを三枚取り出し、しれっと兵士に渡した。
「ライセンスがあれば無料なの?」
「そうだ。冒険者か商人のライセンスがあれば無料になる」
なるほど~、そうなのね~。
「ライセンスを作りたいんだけど、冒険者ギルドはどこにあるの?」
「都市の中央の広場のすぐ傍だ。行けばわかる」
このエロ助は頬を少し染めながら、顔も見えない私を上から下までをチラチラと見ていた。下心がバレバレ。男ってバカねぇ。
フフッ、でもわかるわぁ!
隠しても隠し切れないこの美貌、罪よねぇ!
オーッホッホッ!
私は難なく外門を通過し、上機嫌で都市の石畳へ踏み込んだ。
フィオルの街は、古いヨーロッパを思わせる石造りの家々が軒を連ね、木枠の窓に色鮮やかな布、吊り下げられた香草、煉瓦屋根の煙突から白い煙。通りには、老若男女の声が飛び交い、人の息遣いが渦巻いている。
露店では香辛料の匂いが漂い、焼き菓子の屋台には甘い香りが満ち、路地裏には紐で吊るされた洗濯物が風にゆらゆら。
市場のほうからは商人たちの叫び声、武具店の前には剣を吟味する冒険者たち、子どもたちが駆け回り、犬が吠え、馬が嘶く。
神都では絶対に見られない、生の匂い。そしてファンタジー。とってもわくわくする。
とりあえず、冒険者ギルドでライセンスを作ろう。
中央の広場へ向かって歩きながら、私は目ざとく都市の乙女たちを、うきうきしながらチェックし始めた。
通りすがりの街娘たち。白いエプロンを揺らし、籠を抱えて笑い合い、その度にやわらかな頬が日にきらりと光る。素朴なのに、磨けば確実に光る原石。
宿屋の前では、看板娘がホウキを持って掃き掃除しながら、通りかかる客ににっこり微笑む。その笑みがまた愛らしい。栗色の髪が揺れて、頬がほんのり桜色。あれは絶対、常連を増やすための“天然装備”だわ、恐ろしい子……!
ファンタジーな冒険者のお姉さんたちが武器を背負って歩いている。露出控えめの実用的な装備でも、鍛えられた体つきが美しく、凛とした横顔からは自立した女の魅力が漂ってる。
そして馬車から降り立った貴族風の淑女たち。日傘を差し、レースの裾を持ち上げて歩く姿は優雅そのもの。声も仕草も育ちの良さが溢れ、そこはかとない気品に満ちていてセクシー。
皆が皆、とてもレベルが高い。
日本でならトップアイドルやモデルを狙えるような美しい乙女たちが、普通に通りを歩いている。フィオル、人間世界、恐るべし……!
―――だっ、だがなぁっ!それでもっ!
食指が動かんっ!動かんのだよっ!
私の心が揺れんのだ!!
なまじ己が美しすぎて、そして神都で天上の美貌に触れ続けすぎた私は、美のハードルが天界レベルになっていたようだ。
まさかこの私が、このような悩みを抱えるとは……!
乙女たちよ……悪いのは私だ……。
しゅん。
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