第19話 聖域の女神
どこまでも鏡が広がる聖域の中で、浮遊する無数の鏡に取り囲まれている、美しい女神が居た。”美の神話”と呼ぶべきその女神は、水晶製の祭壇に祀られ横たわっている。
祀られた女神は、たった数枚の薄衣で必死に肌を隠している。しかしその薄衣の丈は短く、艶めかしい真っ白な長い脚を隠しきれずに、むっちりとした太ももの付け根までもが、惜しげもなくあらわになっていた。
「やっ、いやあっ……!」
震える声が、静謐な聖域に響く。その音色は喉の奥でとろりと蜜が溶けるようにとても甘く、胸元を優しく撫でられている錯覚さえ覚えた。
取り巻く無数の鏡たちは容赦も遠慮もなく、女神を舐めるように様々な角度から、そのあらわな姿を写し取っている。
「み、見ないでぇ……、お願いっ……」
長い睫毛に縁どられた宝石のような碧い瞳は羞恥で潤み、頬は深く朱に染まっていた。女神は流れる絹糸のような長い髪で胸元を隠そうとするが、動けば動くほど髪の隙間から白い肌がチラリと零れ見える。
「あぁっ、だっ、だめぇ……!」
しかし慈悲は無く、薄衣がゆっくりと一枚、また一枚と引き剝がされていく。徐々にその滑らかな豊穣の肢体があらわになる。
「いやぁんっ……!あっ、ああぁっ……!」
ゆっくりと………。
白磁のような首すじと鎖骨があらわになり……桃のように艶やかな肩がむき出しの露わになり……大きく柔らかそうな熟れた果実が恥じらいに震え……身をくねらせるその締まったくびれが……甘い誘惑そのものが、そこには淫靡に息づいていた。
母性の象徴が、次々と零れ落ちてくる……。
隠すものを失うにつれ、美しき女神がますます存在を主張し始めた……。
「ああぁっ!!……やあぁんっ!」
ついに薄衣は全て奪われてしまった!
真っ白な肢体のすべてが無数の鏡に映し出される。
それでも女神は必死に胸を両腕で抱き隠し、脚を閉じて身を守るように丸くなる。
しかしそれさえも、甘く挑発するような仕草に見えてしまい、艶やかに心を惑わせ息を奪っていく。鏡たちはそんな姿を美しく正確に映し取ってしまう。
「やっ、……やぁだぁ、……みっ、見ないでぇ……」
女神は星空のようにきらめく目を潤ませ、蕾のような震える唇で、甘い音色を奏で懇願する。触れたら溶けてしまいそうなほど繊細で華奢な真っ白の肌。聖域の鏡たちが、彼女の体の肢体をどこまでも柔らかく照らし出す。
「あぁっ……いっ、いやあぁっ……!」
そして──
鏡たちに取り囲まれる中、ついに女神は静かに押し倒された。
その瞬間を、聖域に浮かぶ鏡たちは神秘と官能を湛えながら、無常に映し続ける。
美しき女神の、”最後の幕”までもが、ゆっくりとゆっくりと、上げられていった──。
この物語を読んで頂き有難うございます。
もし宜しければ、ブックマーク・評価を頂けると励みになり有難いです。
また、評価いただいた方、有難うございました!
今後ともよろしくお願いします。




