第16話 花嫁にならないか?
キィイイイイイイイィイイイン――――。
飛ぶ。飛ぶ。飛ぶ。空を駆ける。
最近ずっと飛んでる俺。
女神とぎゃあぎゃあ騒ぎながら、邪神が沈んだ所から全力で逃走中である。
「お前が元凶だろぉ!お前がヘタに色目使ったから、あのやべぇ男が寄ってきたんだろぉ!さっさと邪神の嫁になれぇ!」
《いやですうぅ!絶対いやですうぅ!女神の尊厳を賭けて、いやですううぅぅ!》
「往生際が悪ぃ!お前が嫁に行けば全部丸く収まるんだよ!」
《じ、じゃあ、そこまで言うなら、あなたが花嫁になりなさいよ、ねぇっ!?》
「あっ、ついに言いやがったなぁ!!やっぱり最悪は、俺を”生贄”にする気だったろぉ!」
《これはどうしようもなく、仕方のないことなのです》
「言い切りやがったなァ!」
ぎゃあぎゃあぎゃあ!
空に響くのは堕天使と女神による、とんでもなく醜い醜い、壮絶な”邪神の花嫁”の擦りつけ合いである!
状況はまじで笑えない。
あの邪神は、この世界を滅ぼしかねない俺の全身全霊の一撃を、耐えきったのだ。付け焼刃の封印はしたけど、あんなの簡単に壊して出てきちゃうだろう。
邪神と先代勇者の血を継いだ、堕天使の俺。さらに、女神アリエステルによる全力の加護と、磨き上げられた三種の神器。
これだけの条件が揃って、それら全てを使って、貯めに貯めた全力の直撃でも倒せなかった。ピンピン生きててぴょーんと飛んできた。
あれで無理なら、俺じゃどうしようもない。
つまり、もう同じ”神”でもないと、どうにもならないじゃん。
だから今、言い続けている。“女神と天界の責任でちゃんとこの問題を処理しろ”と!もともと神々の不祥事だろうがぁ!巻き込むなぁ!
それを女神アリエステルは、分かっていながらも「やだあぁぁ!」と必死に駄々を捏ねている。コイツはァ!本当にィ!勘弁してえェ!
ほんっと、この女神、自分の身可愛さ100%の自己中女である。天界で処理できないレベルの危険物を、この世界にポイ捨てすんなよ!冗談じゃねぇ、押し付けられてたまるかぁ!
そんなこんなで、天界の神々で“邪神対策委員会(仮)”を開いてもらう約束を取り付けたところだ。マジでどうにかして?たすけて?アタシ生贄になっちゃう。
「あれ、どのくらいもつと思う?」
《大分弱らせましたし、おそらくあの封印で百年程度はもつでしょう》
「百年……いけるかなぁ?」
邪神が沈んだ海の方角を見ただけで、背中が凍り寒くなる。
《邪神ルシフェルは、かつて天界最強の神でした》
「そんな危険物をポイ捨てすんなよ!」
《だってぇ、どうしようもなかったんだもぉん、しつこいしぃ、こわかったしぃ》
「だってじゃねぇ、自分の尻は自分で拭けェ!大人の常識だろォ!」
《どうにかしてよぉ!》
「無理だってぇの!天界に連れ帰って、神々が責任をもって、あの危険物を処理しろぉ!」
ぎゃあぎゃあぎゃあ!
本当に無理、真面目にどうにもならん。
あの星をも切り裂く光刃の直撃で倒せないなら、絶対無理だ。
たとえこの世界が滅んでも、あいつは生きてるぞ!
「で、こっちの方に人間が住む世界があるのね?」
《そうです。くれぐれも、絶対に、問題などは起こさないで下さいね?》
「お前が言うな?」
もう知ら~ん。
二度と天界の揉め事なんかに巻き込まれねぇ。運命なんて知りませ~ん、絶対に逃げてやる。
俺はこの異世界を旅して、街や城を巡り、森を抜け、山を越え、海を渡り──世界中の乙女たちと、百合百合しく甘ぁ~い日々を送るんだぁ!
ぺろりと唇を舐めた。
ああ、妄想しただけで頬が緩むぅ~。
森の都の銀髪エルフの少女たちのしなやかな白い手だったりぃ~、生真面目な騎士団の黒髪少女が背中を預けてくれたりぃ~、魔法学院の天才少女が頬を赤らめながら俺の袖をつまんだりぃ~。彼女たちと百合の花園でぇ~、転げ回るようなぁ~、尊い日々をぉ~……!
待ってろぉ、乙女ェ~!
待ってろぉ、異世界ィ~!
俺が行くぅ~!
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