第一章 4話 初陣
颯太
「出発は1時間後、東京駅に集合だ。何かすることがあるなら今のうちにやっとけよ。」
思えば貴重品以外何も持たずにここに居る。突然大阪に行くことになるのだから、当然準備は必要だろうと思い、4人で買い出しに行くことにした。
颯太曰く、ある程度は経費で落ちるから、領収書を貰うのを忘れないように。だそうだ。名前はどうすればいいのだろう、適当な会社名で良いのか?
羽弛
「買い出しなら、そこのショッピングモールに行きませんか?」
那月
「いいぜ、色々買ったらまた合流するか!」
そうしてやってきたのは"ビヨンモール"というショッピングモール。全国に展開している有名なモールだ。
午後のショッピングモールは想像通り、沢山の人が集まっている。
買う物は着替え等、旅行に行く時とさほど変わりはない。
各々が買い物を終えて集合すると、ちょうどその時、『CAMO』にグループへの招待が来た。グループ名は"WING"。メンバー数は11人だ。
羽弛
「恐らく、颯太さんが指揮するこの部隊の名前が"WING"かと。」
渚
「じゃあ、私たちと颯太さん、結衣ちゃんの他に、あと5人居ることになるわね。」
ピコンという可愛らしい音と共に、グループに一件の通知が届いた。初めて見る名前だ。
ブライト
『よろしくお願いします^^』
那月
「お、噂をすればか?……ブライト、知らない名前だな。」
照夢
「後で颯太さんか結衣ちゃんに聞いてみよ。」
そろそろ約束の時間になるのを確認し、一行は東京駅へと足を運ぶ。颯太と結衣は先に到着していた。
結衣
「約束通り!みんな偉いね!」
颯太
「甘やかしすぎだ。準備は良さそうだな。大阪行きのチケットはもう買ってある。」
お礼を言ってチケットを受け取る。配ったのは4枚だ。
渚
「結衣ちゃんは着いて来ないのかしら?」
結衣
「うん、私は見送りだけ!」
それを聞いた羽弛は、スマホの画面を見せながら結衣に問いかける。
羽弛
「じゃあ結衣さん、このブライトという方について聞きたいのですが。」
結衣
「あーそっか、言ってなかったね。その子は私の妹!血は繋がってないけど。」
颯太
「OCFの頭脳と言われているアルビノの女の子だ。色々あって今は新田が面倒を見ている。」
結衣
「ブライトはねー、IQ331の超天才なんだよ!今回の事件、無事に解決したら会わせてあげる!」
颯太
「そろそろ行くぞ。」
歩き出した颯太に続いて、改札を通ってホームへと歩を進める。
新幹線を待っていると、那月は階段の方から刺すような視線を感じた。
恐る恐る視線を向けると、七色に輝く小さな球体群がそこに鎮座していた。オブジェかと思った瞬間、"それ"は伸縮を繰り返し、瞬く間に消えてしまった。
そうして残ったのは、なんとも奇妙で複雑な感覚だけだった。
那月
「……なぁ、今なんか変なオブジェみたいなのなかったか?」
照夢
「……何言ってんの?そんなのどこにもないけど?」
羽弛と渚も首を傾げている。その様子が不気味で、那月の呼吸はどんどん荒くなる。
それを見かねた颯太が那月の肩に手を置くと、那月は正常を取り戻したようだ。
颯太
「那月、落ち着け。」
「お前が見た"それ"が怪異だ。俺らがこれから相対するのは、そういう存在だ。」
「ホームにまで出てんのか……、もう仕事は始まってる。死にたくなければ新幹線の中でも警戒を緩めるなよ。」
じきに新幹線が来るだろう。チケットに従って辿り着いた席は、まさかの個室だった。
照夢
「こ、個室!?結構したんじゃないの!?」
渚
「備えあれば憂いなしってことかしら。」
颯太
「まぁそんなところだ。どうせこれも経費で落とせるからな。それで照夢、お前の推理はもう話したのか?」
照夢は首を横に振る。
照夢
「いやまだ。全員揃ってる時に話したくて。……みんなちょっといい?」
「事件概要のメッセージ、覚えてる?」
那月
「あの意味不明なやつだろ?ダイイングメッセージみたいな。」
照夢
「そうそれ。あれ多分フリックミスなんだよ。で、解読したの。」
照夢は颯太に話したように、『かとまからけむ。』『あすけえ』が、『角から煙』『助けて』であることを説明した。
続けて颯太が補足する。
颯太
「恐らくそいつが今回の事件の犯人だ。『角から煙のように出現する』怪異が一種だけ確認されてる。」
「そいつは『ティンダロスの猟犬』と呼ばれている。正確には犬じゃないがな。四足歩行の知的生命体だ。」
羽弛
「『ティンダロスの猟犬』……。」
颯太
「正直お前らの初任務にこれを選んだのは失敗だった。」
那月
「おいおい颯太さん、オレらをナメてもらっちゃ困るぜ?こう見えて腕っ節には自身あんだよオレ!」
やる気の那月に颯太はデカいため息をつく。
颯太
「はぁ……、良いかよく聞け。以前『ティンダロスの猟犬』と対峙した諜報員は、為す術なく仲間を惨殺された。当然、その諜報員は正気を失って戦意喪失。命からがら逃げて、情報をダイイングメッセージ代わりにして自殺したそうだ。」
一同が一瞬にして青ざめる。流石に冗談でないことは理解しただろう。
颯太
「この仕事はこういう仕事だ。常に死と隣り合わせ、生きてる心地がしねぇんだよ。」
「極力単独行動は避けるように。ヤバいと思ったら迷わず逃げろ。戦うにしても絶対にタイマンはするな。」
11時半に東京駅を出発して約2時間半。道中特に何もなく、無事に大阪駅に到着した。時刻は14時過ぎを回っている。
大阪駅内は平日の昼間にも関わらずかなりの人混みだ。こんなところに長居していたら頭がおかしくなってしまう。そう思ってそのまま駅の外に出るだろう。
颯太
「資料は貰ったが……どこか人通りの多い場所で聞き込みをしてもいいかもな。」
そう言うと神崎はおもむろに地図を取り出す。
那月
「人通りが多いって言うと……、道頓堀とか大阪城か?」
照夢
「この辺に大きな水族館なかったっけ?」
颯太
「じゃあひとまずその3箇所と駅で聞き込みしてみよう。時間も無いし、二手に分かれるぞ。」
「戦闘に自信があるヤツは?」
手を挙げるのは那月のみだ。
颯太
「じゃあ那月と羽弛、照夢と渚と俺に分かれよう。これなら最悪『猟犬』と出くわしても何とかなるだろう。」
渚
「分かったわ。どこに行くかも決めちゃいましょう。」
照夢
「ボク大阪城と水族館行きたい!」
羽弛
「観光じゃないんですよ。では僕たちは駅と道頓堀ですね。」
5人は顔を見合わせ、頷く。
颯太
「よし。……改めて言っておくぞ。絶対に無茶はするな。怪異との戦闘は極力避け、ヤバそうだったら逃げろ。」
「聞き込みが終わり次第『CAMO』に連絡だ。解散!」




