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不透明統制部隊  作者: 芽生
第一部:記憶と想いは明瞭に
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第二章 3話 囚われの校舎

 怪異退治に夢中になっていると辺りはすっかり暗くなっていた。夜空には綺麗な月が見える。幸いダイダラボッチには遭遇しなかった。

 高校はやはり夜ということもあり、昼間に見た時とは違った面を見せている。

電気は全て消えており、月明かりが窓ガラスに反射して不気味な雰囲気を醸し出していた。

「あれは……?」

 ふと本校舎2階のいちばん左の窓ガラスを見ると、何者かがこちらを見ているのに気が付く。

「ねぇみんな、先客がいるみたいよ。」

 渚は先程人影があった場所を指し示す。

羽弛

「……何もありませんよ?」

照夢

「ちょっと、驚かさないでよ!」

 確かにあったはずの人影が、もうどこにも見当たらなかった。

「違うわ!確かに誰かいたのよ!」

那月

「まぁ、みんな落ち着けよ。翠はどう思う?」

「そうっすね。用心に越したことはないと思うっす。」


 那月たちが本校舎に入ると、突然夜の校内に放送が鳴り響く。不気味な女の声だ。

『いらっしゃいませ、どうぞ楽しんでいってください。』


「……誰かいるってのは、本当かもっすね。」

「とりあえず事務室に行って鍵取って来るっすけど……誰かついてきてくれないっすか?」

照夢

「ふ、ふーん、怖いんだ?」

「そそそそそそんなことないっすよ!!!不透明事件だから1人になるのは危険だなと思っただけっす!!!」

 翠は凄い慌てようだ。とはいっても、夜の校舎というだけで確かに怖さはある。

「そう言う照夢さんだって足震えてるっすよ!」

照夢

「うるさいな!」

 そうして翠と照夢は言い合いをしながら事務室へと歩いていった。


那月

「何やってんだアイツら……。」

羽弛

「あれ、」

 羽弛は退路の確保だけでもしておこうと昇降口のドアを開けようとした。然し開かない、鍵がかかっている。ついさっき入ったばかりなのになぜか閉まっている。誰もドアには触っていないはずだ。

「もしかして……開かないの?」

羽弛

「そのようです。閉じ込められたと考えるのが自然でしょう。」

那月

「冗談じゃないぜ……錠は無いのか?」

 錠を探すも見当たらない。代わりに画面に「0000」「残り3回」と表示された機械が、ドアにくっ付いているのを見つける。

羽弛

「これは……パスコードを入力する必要があるようですね。」

「残り3回、虱潰しは出来ないってことね。」


「着いてきてくれてありがとっす。」

照夢

「別に、そんなつもりじゃなかったんだけどね。」

 事務室は校長室の隣にある。互いに行き来ができるようだ。暗くはあるが、翠は軽音部の部室の鍵をよく借りに来ていたらしく、普通に鍵はゲットすることができる。

照夢

「一枚板のとバラバラのがあるんだ。」

「結構珍しいんすかね?」

 翠は迷うことなく一枚板の方を取る。

照夢

「そういえば普通教室の鍵が無いけど?」

「普通教室は鍵かかってないっすよ!」

照夢

「ふーん、」

 照夢はデスクの上に来客のリストと遅刻者のリストを見つける。


来客のリスト

池本 ユウジ 済

田中 ヒロヒト 済

山中 シオリ 済

……

西園寺 ユリ


 帰った来客の欄にはハンコが押されている。名前を追っていくと、恐らく今日の昼間の来客である西園寺ユリの欄に、ハンコが押されていないのを確認した。

ふと事務室の小窓から職員玄関のロッカーを見ると、一つだけスリッパの代わりにパンプスが入っているのを見つける。

照夢

「西園寺ユリ……校内にいる誰かって、もしかしたらこの人かも。」


遅刻者のリスト

藤本 ミサキ 体調不良

東 ショウゴ 通院

宮永 ヤマト 電車の遅延

佐藤 ユキノ 電車の遅延

本田 リョウスケ 電車の遅延

霧矢 ミドリ 困っていたおばあちゃんを助けていた

……


照夢

「こっちは今年に入ってから遅刻した人のリストか……。翠の名前もある。」

 遅刻者全部にハンコが押されている。事務員さんはしっかりと仕事をしているようだ。

照夢

「これ……事件の資料に書いてあった名前と同じだ……!」

「てことは……次の失踪者は翠……?」


 翠は管理用のノートパソコンを見つけていた。立ち上げにはパスワードを入力する必要があるようだ。

「こういうのって大体創設年なんだよな〜……1961だったかな……。」

 ノートパソコンの立ち上げに成功した。パソコンの中には「管理用」「職員用」「生徒用」などのフォルダがある。それぞれをざっと見るが、特にめぼしいものはなにもない。

「これは……、」

 奥の方に「シャンについて」というフォルダを見つける。それは明らかに他のものよりも"重み"があった。

フォルダの内容量の話ではない。なんと言えばいいのだろうか……重圧、とでも言うのだろうか。フォルダは画面上にあるはずなのに、それは翠に重くのしかかる。

「何だこれ……。」

 翠はそう言うと「シャンについて」のフォルダを開き、中身を詳しく見ないまま全てを写真に収めた。


 しばらくして翠と照夢が、教室の鍵のついた木の板を持ってくる。翠と照夢は事務室での事を話した。

「次の失踪者はオレ……。うーん、困ったっすね!」

「ひとまず、翠君を一人にするのは絶対良くないわね。」

「そうだ!なんかヤバそうなフォルダ見つけたんすよ!」

 そのまま一同は「シャンについて」の写真を見ることになった。


シャンについて

 惑星シャッガイを母星とする昆虫型知的生命体。

遥かに発達した科学力を有しているが、異常な思考を満たす以外頭にない凶悪な種族であるために、様々な拷問機具を製造しては同族以外の生物を虐げている。

また、他の生物を乗っ取り、操ることができると言われている。


 その下には半円の羽と5対の脚を持つ、不気味な昆虫が描かれていた。

照夢

「なんでこんなのが保存されてるの……?」

羽弛

「これが今回の事件を引き起こした怪異でしょうか。閉じ込められていることを考えると、高い知能を持っている可能性は高いですね。」

「閉じ込められた……やっぱりっすか。」

「この学校、夜に校舎に入ると閉じ込められるって言う七不思議みたいなのがあるんすよ。」

「校内に散らばった4つの数字を集めて、昇降口の機械に打ち込まないと脱出できないらしいっす。」

那月

「なんだそりゃ!てかそんな噂あるなら先に言っとけよ!」

 翠はただうっかりしていただけのようだ。悪意は全く感じない。

「広い学校みたいだし、手分けしましょうか。」

「そうっすね!戦えるオレと那月さんは別行動として、3人はどうするっすか?」

羽弛

「待ってください。翠さんが狙われているなら、那月が翠さんを守ってあげるのが良いと思います。」

照夢

「確かに、じゃあ鍵持ってる翠と那月が特殊教室。ボクと渚さんと羽弛が普通の教室ってことで!」

 渚は思い出したことがある。

「待って、分かれる前に放送室に行ってみない?放送があったんだから、そこに誰かいるかもしれないわ。」


 放送室前に来た。防音用の重い扉は鍵が閉められている。

「閉まってるっすね。でも何か音はするっす。」

 確かに、微かにテレビの砂嵐のような、ノイズのような音が中から聞こえる。

那月

「ノックしてみるぞ。」

 那月はノックをする。返答はないが、ガチャリとドアの鍵が開いた。入ってこい、ということなのだろうか。

那月

「俺が先陣を切るぜ。開けるぞ……、」

 恐る恐るドアを開けると、中には……誰も居なかった。すると突然、後ろからドサッという音が聞こえる。そこには床に倒れる照夢と、女子高生がいた。

「照夢ちゃん!?」

ミドリ

「こいつ……!!同じクラスの佐藤ユキノっす……!!おい佐藤!!何やってんだよ!!」

 返事は当然ない。佐藤ユキノの目は虚ろで、意思を感じられなかった。

佐藤ユキノは翠を認識すると、瞬く間に距離を詰めて、翠の首を絞めようとした。

那月

「待て!」

 那月が翠の服のフードをグイッと引っ張ったことで、佐藤ユキノの攻撃は空を切った。

那月

「斬るのはまずいよな……っ!」

 那月は佐藤ユキノの顎先めがけて拳を振る。脳震盪を狙ったが、効き目は薄そうだ。

佐藤ユキノは起き上がって、再び翠に向かって突進してくる。

「オレが気を引くっす!渚さんは照夢さんの手当てしてください!」

 翠は放送室から離れるように佐藤ユキノを誘導する。攻撃をいなしながら、反撃の機会を伺っているようだ。

羽弛

「翠さん!首の後ろを狙って気絶させてください!」

「──!はいっす!」

 翠は手際良く首の後ろを狙って攻撃をする。それは見事にクリーンヒットし、そのまま佐藤ユキノはピクリとも動かなくなった。

那月

「怪我は無いか!?」

「大丈夫っす!……操られてるって感じだったっすね。一応縛っておきましょう。」

 翠が拘束すると、佐藤ユキノのポケットから1枚の紙が落ちた。

那月

「何か落ちたぞ……『519 10 4』?何だこれ。」

羽弛

「これ、昇降口のパスコードに関係してそうですよ。」

那月

「確かにな……持っておくか!」


 ふと佐藤ユキノを見ると、その口から白い透明の何かが出ていくのが見えた。

羽弛

「また"魂"……。」

「知ってるんすね。"魂"が出る人間は、生前に銀の黄昏と接触した人間だと思うって颯太さんが言ってたっす。」

「……多分、『魂消失事件』と関連してるのかも……。」

 渚と照夢も歩いて合流する。

照夢

「みんなごめん、油断したつもりはなかったんだけど……。」

「大丈夫っすよ。多分、ドアを開けた時に一番後ろにいる人が標的になるって仕掛けっす。」

「そうよ。収穫はあったし、無事で良かったってことにしておきましょう。」

 その後、放送室も調べたが、めぼしい物は見つからなかった。そのまま二手に分かれることになる。

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