第一章 モノクロームと壊れた因縁 1話 四つの魂
──2024年4月。
那月
「ふぁーあ。あー眠てぇ。」
朝5時半。火夜那月は起床する。
今日は教師になって2日目。担当は音楽だから、本格的に授業が入るのは明日以降だろう。
火夜那月には毎朝のルーティーンがある。
起床直後に陽の光を浴び、歯を磨き、食事をしてから着替えて出社する。
だが今日だけは、ルーティーンを崩さざるを得なかった。那月の元に、一通の手紙が届いたのだ。
那月
「うーん……?手紙?誰からだ。送り主は……宛名も無いな。イタズラか?」
手紙には見たことのない模様、例えるなら魔法陣のような幾何学模様が刻まれている。
イタズラとは思えない何かを、それから感じる。火夜那月は興味本位で、手紙を読むことにした。
那月
「趣味悪いぜ……。さてと──、」
『この手紙を他人に見せるな、絶対に君1人で見てくれ。
口外は禁止とする。我々は君を見ている。
突然こんな手紙が届いて驚いているかもしれないが、単刀直入に言おう。
君の力が必要だ。我々に協力してくれないだろうか。
悪いが詳しいことはまだ教えられない。
協力してくれるのであれば、明日の10時丁度に指定した座標に来てくれ。
この手紙は本日正午に燃えて消える。我々の存在を知られてはならない。』
その下には数字の羅列が書かれている。これが座標なのだろう。然し那月の脳内はそれよりも別のことで埋まっていた。
那月
「オイ、オイオイオイ!これってもしかしてスカウトってやつか!?」
「かーっ!マジか!こんなアニメみたいな展開本当にあんのかよ!!」
「変な内容だけどそんなことは関係ねぇ!!協力するに決まってんだろ!」
興味を持った大馬鹿者が一人。那月は座標を特定してしまった。示していたのは山の中。何も無い山の中だ。
那月
「こんな所に呼び出して、秘密基地にでも連れてってくれんのかな!」
「やっべ!もうこんな時間!!急がないと遅刻する!!」
そうして火夜那月は、日本中を揺るがす大きな渦に飲み込まれていく。
次の日。幸い指定場所は那月の家からそう遠くはなく、今日は休みを取ってそこへ向かうことにした。
那月
「何も書いてなかったが、何か持っていったほうがいいのか……?」
昨日帰宅してから手紙が見つからない。昨日の正午に燃えて消える、という文言を見落としていた那月は、それに気づくことも出来ないのだが。
那月
「まぁとりあえず、財布とスマホがあれば何とかなるだろ!」
お気楽で能天気。それが那月の良いところでもあるのだろう。少なくとも、那月自身はそう思っている。
那月
「さて、そろそろ行くか!」
扉を開ける。4月といえば桜の季節、当然那月の暮らす東京も桜が満開だ。
思えばこうして街中を歩くのも随分久しぶりな気がする。
最後に歩いたのは高校生の頃だったか。
当時とは少し違う景色。違う店、違う道、違う草木、違う人。全てが懐かしくて、なんだか苦しい。
──いや、この苦しさは山を登っているからだ。
那月
「はぁ、はぁ……なんで、こんな場所なんだ……!!」
やっとの思いで辿り着いた場所は、山の中の開けた場所。周囲は木々が生い茂り、その中央にはその場にそぐわない高いビルが建っていた。
那月
「いかにもって感じだ……。お、」
ビルの前に人間が2人立っている。男と女、1人ずつ。見た感じビル内の人間ではなさそうだ。男は本を読み、女はスマホをいじっている。
照夢
「はぁ、キッツ……運動不足って、ことかな……。」
周囲を確認していると、背後から女の声がした。振り返ると、山登り直後で汗だくの女が、息を切らしながら四つん這いで死にかけている。
照夢
「はぁ……ちょっと何?ボクは見世物じゃないんだけど。」
那月
「あ、あぁ悪い。そんなつもりじゃなかったんだ。飲み物……はないけど、ハンカチ使うか?」
照夢
「大丈夫。情けは受けないし、飲み物もタオルも持ってるし!」
いかにもなツンツンボクっ娘属性。やっぱこれアニメかなんかの話なんじゃないか。そう思って頬をつねってももちろん痛い。
那月
「ひとまずビルの方に行こうぜ。多分アイツらも、オレらみたいにスカウトされた奴らだ。」
と、ちょうどそんな時に、スマホのメールアプリにメッセージが届く。
『そろそろ集まった頃だろう。あと20分ほどでそちらへ行く。自己紹介でもして仲を深めといてくれ。』




