5 機嫌を治す
朝、目が覚めると彼女はまだ眠っていた。
夜の静けさとは裏腹に、ガンガンと鳥の鳴き声が鳴り響く。鳥は元気がいい。だが、騒々しい。
伸びをして体を動かす。いつまでもここにいるわけにはいかないので彼女を起こすために体を揺らす。
反応がない。さっきよりも強く体を揺らす。
反応がない。なので彼女は朝に弱く起きないと思い、好奇心からくる尻尾を興味本位に触ってみる。本当は本人の許可が必要だろうが知ったことではない。どうせ起きないから。
良心が「やめときな」というが、起こすためには仕方ないと自分に言い聞かせ、大義名分を掲げ彼女の尻尾を触る。
「ギャーー」
という悲鳴とともに飛び上がる。そして流れるように俺の顔面に一発拳が飛んでくる。
油断と寝起きで頭が働いていなく、彼女の拳に反応するのが遅れ顔面にもろ一発もらう。殴られたことにより頭が冴えたきがする。
彼女はとても嫌だったらしい。
本音を言えば尻尾よりも柔らかそうな耳を触ってみたかった。だけど、それを彼女にいうとまた拳が飛んで来そうなので心に留めた。
寝起きでもすぐに状況判断する力が必要だ。また、こういう機会があったらすぐ反応するべく頭をフル回転させないと。油断大敵。それに関しては彼女のほうが一枚上手だな。ウンウンと頷く。
彼女は涙目で俺を睨む。
「シヴァ、ひどいよ…乙女の体を勝手にさわるなんて!寝込みを襲うなんて!ましてや尻尾を触るなんて!」
彼女は昨夜の余り物のジャーキーを独占し、むしゃぶりついている。一枚も分けてくれない。
「ミドリさん一枚でいいので、肉を恵んでください。」
「…」
無視してくる。土下座して誠心誠意謝ったが、深く根に持っているらしく俺には一枚も分けてくれなかった。
「ひもじぃ…」
なぜ2日連続土下座する羽目になってしまったんだ。俺が悪いんだけど。節度を持とう…
飢餓感をかんじつつ森を歩く。
彼女の機嫌を取るためと空腹を満たすために、目に入る木のみを片っ端から収集する。
「どれかお食べになりますか?」
「一つもいらない…怒ってるから。」
「一つもいらないんだよね…なら、全て美味しく頂くとしよう。」
彼女の目の前で美味しく木のみを頬張る。これでもかというぐらい頬張る。
彼女は横目で興味なさそうな態度をしているが、羨ましそうな目をしている。心は正直だ。
人間の心は脆い。目の前で美味しく食べていると無償に食べたくなってしまうだろう。それが人間の本能だ。
「ミドリ…本当にいらないの?木のみ…」
「…やっぱり欲しいです…食べたいです!あんなに見せつけられたら食べたくなるじゃないですか!」
「食べたいか?」
「食べたい食べたい!」
「仕方ないなぁー、今朝のこと許してくれたら残りの木のみぜーんぶあげるよ」
「分かった分かった。今朝のこと許すよ…けど、もう二度と私の許可なしに触らないでよ。」
「了解いたしました」
彼女に残りのきのみを全部渡す。
心を揺さぶるだけで許してくれるなんて、ちょろいな。




