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失恋別離

「あの、さすがにここではなんですから、寝室に行きませんか」


 すやすやと寝息を立てるつばさくんの隣の布団で、私たちは裸になって抱き合った。

 

 淳史先生とは比べるべくもない、ぎこちない彼の所作。時間も、あれあれという間に終わってしまった。


「なるほど、これのせいで奥さんを寝取られたのかも」などと思いながら、でも、身体とは裏腹に、私の心は十分に満ち足りていた。


 身支度を整えて、彼の家を後にしようとした時、彼に呼び止められた。

「あの、妻と、話をしなければなりません」


 私は小さく頷いた。

「ちゃんと妻と話をして、返事をします。必ず返事をしますから、時間をください」



 その数週間後、保育園でママ友たちの噂話が耳に入って来た。

「つばさくんのママ、帰って来たらしいよ」

「今更? どの面さげてって感じだよね。これから、お付き合い、どうする?」



 お話がありますと連絡が来て、渉さんと吉祥寺のカラオケボックスで会った。

 そわそわと落ち着きのない様子の渉さん、それで話とは?と水を向けても、しどろもどろで、何を言いたいのか、一向に話の中身が分からない。


 この期に及んで、まだどうするか決めかねているのか。すべてを察した私は、自分から切り出した。


「あの、保育園には通報しないでくださいね」

「えっ」


「ほら、あの、私が無理やりお股を触らせて、押し倒しちゃったこと」

「…」


「あれ、完全にセクハラですよね、でも、私、保育士をずっと続けたいので、だから保育園には通報しないでくださいね」


 何とかそれだけ言葉を絞り出すと、私は一人席を立ってカラオケボックスを後にした。


 今にも泣きだしてしまいそうで、電車に乗る気になれなかった私は、井之頭通りを東に、ハウスに向かって歩き始めた。

 歩いているうちに、とめどなく涙がこぼれてきた。通行人がぎょっとして振り返るのも構わずに、私は歩き続けた。


 カラオケボックスを出た時はまだ夕焼け空だったが、やがて宵闇が辺りをつつみ、青梅街道から神田川の遊歩道に入ったときには、もう陽もとっぷりと暮れていた。


 ようやくハウスにたどり着くと、私は一目散に真優ちゃんの部屋に駆け込んだ。


 真優ちゃんは淳史先生との愛の儀式の真っ最中だったが、構わず私は二人にお願いをした。


「なんか、滅茶苦茶にされたい気分なんですけど」

 

 泣き顔の私を見て、二人は無言で二人の間に私のスペースを空けてくれた。私がベッドに滑り込むやいなや、二人がてきぱきと私の服を脱がせていく。

 私は、理性を吹っ飛ばして、夢中で二人に絡みついた。


 目くるめくひと時が終わると、また涙がでてきた。でもこの涙は、帰り道で流したものとは違う涙だ。

 

 私の頭をなでながら、二人が言ってくれた。・


「「おかえり、ひなた」」

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