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好機到来

ハーレムの住人それぞれちょっとした転機が訪れます。

まずはひなたちゃんから。

「あ、ひなた先生だ」

 保育園のある駅近くの「まいばすけっと」で、偶然パパと夕食の買い物をしていた風間つばさくんと会った。つばさくんは私の保育園の卒園生で、今は系列の幼稚園の年中さんだ。


「今日はね、僕の大好きなカレーなんだよ」


「ひなた先生、こんにちは。あの、ちょっと、よろしいですか」 

 つばさくんのパパに話しかけられた。

「実は、肉はどれを買ったらいいか、よくわからなくって」


「ポークカレーですか? 豚肉は大きめのコマ切れがいいですよ。これなんかいかがですか」

「ありがとうございます。お恥ずかしい話、女房に出ていかれて、料理のこと、さっぱり分からなくて」


 そういえば、つばさくんママが男を作って家を出て行ったという噂を保育園で聞いていた。

「ご主人、冴えない感じの人だから、つばさくんママの気持ち、わからなくもないわよね」って、そんな感じの、悪意のある噂だった。


「あの、おいしいカレーの作り方、お教えしましょうか」



 このままでいいのかという漠然とした不安はずっと感じていた。

 遥さんが淳史先生と子をなした。順当にいけば彼女が先生の本妻さん、女御、更衣あまたさぶらいけるなかの中宮様だ。

 ところが彼女はシングルマザーになる道を選んだ。法的には、淳史先生のお嫁さんになれる可能性がハウスの女性みんなに回って来たということだ。


 でも、遥さんを除いたとしても、本命は、やはり美和ちゃんなんだろうな。

 幼馴染だし、ずっと先生一筋だし、同じ会社だし、双方の両親もそれを望んでいるようだし。


 対抗は、意外とかのんちゃんかもしれない。まだ中学生だけど、本人はその気十分だし、仕事の関係もあるし、このままの状況がもう5年も続けば、話は現実味を帯びてくる。


 さらに真優ちゃんもいて、どう考えても私は可能性ほぼゼロの味噌っかすだ。


 そんな鬱屈した気持ちを抱えていた私にとって、風間家の食卓は安らぎを与えてくれる、癒しの場になった。

 

 つばさくんのマンションにお邪魔して、ひなた流ポークカレーの作り方を指南して、勧められるままに結局食事も一緒にした。

 食事中もはしゃぎまわるつばさくんと、それを暖かく見守るつばさくんパパ、それを見ていると、私までほんわかと楽しい気分になってくる。


「ひなた先生のカレー、パパのよりおいしかった。先生、また来てよ」

「もしご迷惑でなかったら、是非また来てやってください」


 ようやく見つけたかもしれない私のもう一つの、淳史先生もハウスの仲間も知らない居場所に、 二人に見送られてマンションを出た帰り道の私は、いつになく上機嫌だった。

 

 この日以来、スーパーで三人分の食材を買いだして、風間家に食事を作りに行くのが、私の早番の日のルーティンになった。


 そんなことが一か月ほど続いたある日、食事が終わった後に、ちょっとしたサプライズがあった。


 つばさくんが突然「ひなた先生!」と元気な声を出した。


「ぼくのママになってください!」



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