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人体実験


 週末の土曜日、私は念入りにシャワーを浴び、裸の上に白衣を羽織って彼の訪問を待った。

 何の疑いも持たずに、約束通り私の自宅マンションに訪れた淳史くんを、リビングに通した。


「よろしくお願いします。先生」

「やだ、診療じゃなくて個人的な臨床実験だから、名前で呼んでねって言ったじゃない」


 私は早速質問を開始した。

「どう? 私の周りに何か見えるかな?」

「うっすらとですが、オーラが見えてます、せんせ、、、はるかさん」


 BINGO! 私の仮説はどうやら当たっているようだ。


「遥さんって、休みの日も白衣で過ごしているんですか」

「ううん、そんなわけないじゃない。これはね、これから始めるお医者さんごっこ用のコスプレよ」


 さあ、人体実験のはじまりだ。

 私は躊躇ためらう気持ちを振り払うと、ソファに腰掛ける淳史くんの前に、少し前かがみの膝立ちの姿勢を取った。

 白衣の下はあえて何も身につけていない。ボタンもわざと上から二つ外してある。

 彼がこわばった表情でごくりと息をのんだ。彼の目線からだと、私の乳房が、いや、もしかすると下の繁みまで見えてしまっているかもしれない。


「いい? これは大事な実験なんだから、絶対逃げたり動いたりしちゃダメよ。約束できる?」


 戸惑いながらも無言で頷く淳史くんのジーンズのドットボタンを外し、ジッパーを引き下げると、ジーンズに手をかけて力任せに腿のあたりまで一気に引き下した。

 

 私は、唖然としながらも約束を守ってじっとしている彼の腿にまたがり、唇を奪った。

 彼の太ももの感触を素肌に直に感じながら、トランクスの布地越しに彼のものを握ると、それは私の手のひらの中で大きく、硬くなった。

 

 彼の若い身体の感触に、私は身体の芯が熱くなってくるのを感じていた。

  

 私は、今、自分がどう見えているかを淳史くんに尋ねた。

「ピンク色の霧が、はっきり見えます!」


 とりあえず実験終了、私は呆然とソファに腰掛ける淳史くんが衣服を整えるのを待って、非礼を詫び、自分の仮説を語って聞かせた。

 

 動物が交接の促進を目的として異性を引き寄せるために発するフェロモンという物質がある。にわかには信じがたい話ではあるが、淳史は眼の病気なのではなくて、ヒトの女性が男性との交接を求める時に発するフェロモンを目視確認できる能力があるのだと考えれば、話のつじつまがあう。

 痴漢冤罪事件がきっかけで突然その力が覚醒したのではないか。


 一息に自説を説明し終えたものの、図らずも自ら官能のスイッチを入れてしまった私の身体は、容易には静まってくれなかった。 

「ところで、淳史くん、私の周りの霧、今どんな風に見えているのかな?」

「すごく濃く見えてます、遥さん」

 

 これはアフターサービスと、自分に言い訳をして、彼に尋ねた。 

「どうする? 最後まで、しちゃう?」

 

私は、大きく首を縦に振る彼の手を取ると、隣のベッドルームに誘った。

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