妊娠騒動
今日は淳史のシフトの日なのに、コンドームを切らしていたことに気づいた私が、隣でTVを観ていた遥さんに尋ねた。
「遥さん、ゴム、2,3個いただけませんか。ついうっかり買っておくの忘れちゃったの」
「あ、真優ちゃん、ごめんね。私、使ってないのよ」
「え? 遥さん、避妊していないんですか!?」
思わず、一緒にTVを観ていた淳史に視線を向けると、
「うん、遥さん、もう36歳だから、子ども作るんなら早くしないとね」
とあっさり認めるので、私も美和ちんもひなちゃんも、なんとなくそれ以上突っ込めなくてスルーしてしまった。
その半月ほど後、歯磨きをしていた遥さんが、突然えづいてトイレに駆け込んだ。
私たちが見て見ぬふりをして先送りしてきた懸念が、いよいよ現実となる時が来たのかもしれない。
遥さんがシフトの日、私の部屋に美和ちんとひなたが集まると、遥さんの妊娠の可能性の話になった。
もし淳史と遥さんに子どもができたら、遥さんはともかく、淳史は籍を入れるというだろう。
そして、それでもあの二人は、私たちと同居し、淳史と私たちが関係を続けることも容認するだろう。
でも、それに甘えていいのか。たとえ二人の気持ちがどうあろうと、私たちは、自らの決断で、ここから退場し、別の道を歩むことも考えねばならないのではないか。
「先生と遥さんの子どもだったらかわいいだろうなー、私保育士だから子育て手伝っちゃおう」と、ひなちゃんは能天気なことを言っている。
対して、美和ちんは泣き出してしまった。
無理もない。淳史一筋、片思い歴10年以上、脱落寸前の崖っぷちで踏ん張って、身体を張って、ようやく今こうしてここにいるのだ。
淳史以外の男性を全く知らない彼女に、今更彼以外の選択肢は考えられないに違いない。
私だってそうだ。
これからも淳史に勝る男は現れないだろうことが、元やりマンの私には直感的にわかってしまう。
その翌日は私のシフトの日だった。私は、意を決して淳史に確かめた。
「淳史は、その、遥さんから何か大事な報告とか、聞いてないの?」
「いや、別に。どういうこと?」
「昨日の朝、遥さん、えずいていたから。ほら、淳史、遥さんには避妊してないでしょ。だから、もしかしたら、そういうことなのかなと思って」
「ああ、遥さん、久々に昔の友達と飲み過ぎたって言ってた。二日酔いの朝歯を磨くと、よくそういうことあるでしょ」
私は裸のまま階段を駆け下り、リビングにいたひなちゃんと美和ちんに、両手で頭の上に丸を作った。
「遥さん、二日酔いで吐いてただけだって」
「よかったぁ」とテーブルに突っ伏すひなた。
あれ、美和ちん、彼女こそ床に崩れ落ちるくらい安堵するかと思ったけど、なんか暗い顔をしてる。
私は部屋に戻ろうとする美和ちんを追いかけ、腕をつかんだ。
「何か隠し事、してるでしょ」
彼女の部屋で、美和ちんはようやく重い口を開いた。
「生理が遅れているの」




