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温泉騒動

 私、金子真優は、いとこの保育士・金子ひなたと、ここ高田馬場の古い一軒家でシェアハウス生活をしている。


 TVのバラエティで温泉特番を観たひなたが、「温泉行きたい!」と言い出し、シェアハウスの主である二子神淳史、同居者の冴島遥、山上美和の五名で温泉に行こうということになった。


 ようやく秋の気配が感じられるようになった9月中旬の週末、私たちは淳史が手配したワンボックスのレンタカーで、群馬県の温泉に出発した。

 

 宿に着く前に日帰りの混浴温泉施設に立ち寄った。

混浴といっても、女性は浴衣着用、最近おっぱいとおしりが垂れてきたことを気にしている遥さんは、浴衣着用と聞いてほっとした様子、美和ちんも「あっちゃん以外の男に裸は見せるなどとんでもない」というスタンスだ。

 一方で「美乳で悩殺しようと思ったのに」と、ひなたはちょっと残念そうだ。


 女性四人で露天風呂に出ると、20名ほどが広めの湯船に浸かっていた。やはりおじさんおばさん比率が高い。

 

 きゃいきゃいと騒ぎながら私たちも湯船に向かうと、早速男性陣の視線が集まった。若者二人が近づいてきたその時、淳史がおーいと手を振りながらこちらに向かってきた。

 180センチを超す長身に引き締まったボディ、タオルは肩にかけたままで、立派なものを隠そうともしない。

 男性は彼を見るやそそくさと去っていった。

 

 逆に、女性陣の視線が淳史に集まる。虫がついてなるものかと湯船につかる淳史を四人で囲んだ。

両手で私と美和ちんの肩を抱き、膝にひなちゃんを乗せた淳史はすっかりご満悦。おかげで息子が大きくなってしまった彼を、私たち四人でしっかり周囲をガードして、湯船から出ることになった。



淳史が選んだその日の宿は、純和風の旅館だった。

食事を終えて部屋に戻ると、大部屋に五組の布団が並べて敷かれていた。


 その夜の淳史当番は私だった。

 遥さんたちが気を利かせて二人きりにしてくれた。

「部屋に露天風呂もあるけど、私たちは大きなお風呂に入りにいくね」

 

「二時間だけだよ」

 とひなちゃんがウインクしながら部屋のドアを閉めた。


「じゃ、俺たちはこっちに入ろうか」

「うん」

 私たちは服を脱ぐと、二人してベランダに設えられた小さな湯舟に浸かった。


 かすかな虫の声がむしろ静寂を演出する。

 いつもシェアハウスでわいわいやっているのに、今はこんな静かなところで淳史と二人っきり、まるで新婚旅行に来ているみたいだ。

 

 宙では大きな満月が怪しく黄色い光を放っている。

 LUNATICという英単語がある。狂人、心神喪失者という意味だ。LUNAは月、月の光は人を狂わせる。


「ねえ、ここで、外でしようよ」


 狼男も月の光で変身する。私たちは、月の光を浴びて二頭の獣に変身した。


 淳史が、私の上半身だけを湯船の外にうつぶせにすると、後ろから攻めてきた。

 いきそうになるのを何とか堪え、彼のみぞおちに肘打ちを入れ、腕にかみついて湯船の外に逃れた。


 追いかけてきた淳史を洗い場の床に押し倒し、馬乗りになって攻めると、今度は淳史が私を四つん這いにする。

 私は再び彼を仰向けにして顔の上に跨った。

 互いの急所を口で攻撃しあい、私たちは相打ちとなって果てた。


 目くるめく獣の時間が終わり、人間に戻った私たちは、浴衣を着て、湯船で足湯を浸かった。

 虫の音を聴きながら彼の肩に頭を預け、缶ビールをちびちびやっていると、どやどやとみんなが戻って来た。


「あ、お帰り、こっち来て一緒に飲まない?」

と声をかけたが、なぜか視線が冷たい。


 しばらくして、缶ビールを手にひなたが淳史の隣にやってきた。


「もう、何してたの。事件じゃないかって、警察を呼ばれそうになったんだからね!」


「「へ?」」


「二人の獣みたいな咆哮、露天風呂まで聞こえてたから!」



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