間諜潜入
私、山上美和は、シェアハウスの主・二子神淳史とは、幼少のみぎりから家族ぐるみのお付き合いをしている、いわゆる幼馴染である。
私の両親は彼のことをいたく気に入っている。我が家は二人姉妹で息子がいないこともあって、口には出さないが、私が彼と結婚し、淳ちゃんが義理の息子になることを大いに期待している。
それゆえ彼とシェアハウスで同居するといった時も特段の反対はなかったが、どうやら同棲と勘違いしていたようだ。
他に女性が三人同居していると知ると、心配した母が聞いてきた。
「淳史くんとお付き合いしていることは、同居している方々もご存じなのよね?」
「ああ、それは、まあ、うん」
私に限らず、全員が敦ちゃんとお付き合いしているのだが、もちろん伏せておく。
「お、いいな、淳史くん、ハーレムじゃないか」
もちろん父は冗談のつもりだったのだろうが、図星を突かれた私は心臓が止まりそうになった。
実際に、シェアハウスは彼のハーレムだ。
一号さんは淳ちゃんの初めてのお相手で、すでにプロポーズも済ませている遥さん。
二号さんはやっぱり真優ちゃんかな。関係を持ったのも遥さんの次だし、きれいだし、仲いいし。
三号さんがひなたちゃんで多分私は四号さん。
幼馴染のお情けで仲間になれた、源氏物語で言えば末摘花ポジションだ。
私だって彼のお嫁さんになりたい。それが叶わないから現状に甘んじているだけだ。
大学二年生の妹からシェアハウスに泊まりに来たいと連絡が来た。
妹も淳ちゃんをお兄ちゃんと慕っている。私と敦ちゃんの結婚を切望する家族が、この同居生活はおかしいのではないかと疑問を抱き、代表で妹の沙織が潜入調査をしに来たものと推察された。
私は皆を緊急招集し、私の家族状況を説明、妹の前では、私と敦ちゃんがシェアハウス公認の恋人同士という設定で話を併せてくれるようお願いした。
その週末の午後は、シェアハウスを来訪した沙織を交えてのティータイムとなった。
自己紹介の後、沙織が早速根掘り葉掘りの質問を始めた。
「皆さんは、ここで同居する前からお知り合いだったんですか」
「違うよ。ひなちゃんが就職を機に家を出たいっていうから、じゃあ楽しそうだからシェアハウスに住もうかって、私がここを見つけたんだよ」と真優ちゃん。
「私は火事で焼け出されて、慌てて住むところを探してた時に、たまたまここが一部屋あいていたから」と遥さん。
「それじゃ、皆さんは、ここに来た時、淳史お兄ちゃんと初対面だったんですね」
うんうんと三人で顔を見合わせて頷いてみたが、沙織は信用していない様子だ。
「二人が恋人同士っていうのは、公認なんですか」
「うん。いつも仲良くて羨ましいなって思っているんだよね」とひなたちゃんが科白棒読みで答えた。
「姉は、淳史お兄ちゃんの部屋に泊まったりしているんですか。シェアハウス的にそういうのはOKなんですか」
しばしの沈黙の後、ようやく遥さんが口を開いた。
「さあ、どうかな。ほら、そういうプライベートなことは、あまり詮索しないようにしているの」
緊張のティータイムの後、小一時間リビングや私と敦ちゃんの部屋を現場検証した沙織が私に言った。
「やっぱりおかしいよ、お姉ちゃん」




