全面対決
いきなり淳史くんが私の目の間に現れた瞬間、私の身体は未だに彼を欲しているのだということに気づかされた。
一回りも年上のおばさんが、しかも自らあんな別れ方をしたくせに、今更どんな顔をして、とは思ったが、彼にはきっと私の発するフェロモンがはっきりと見えてしまっているのだ。自分のあさましさがどうしようもなく恥ずかしかったけど、といって見栄を張ったところで意味がない。
エレベーターの中のキスで、私の理性は完全に吹き飛んだ。
七年ぶりだったのに、私の身体は、まるで淳史くんの身体の形状を覚えていたかのように、それをぴったりと、奥まで受け入れた。
彼だけが知る私の官能のスイッチを押され、リミッターが外れた私の身体は、何度も、何度も、淳史くんを求めた。
それは相性がいいとか、そんな生易しいものではなかった。昨晩、私は、一頭の獣になった。私の中の人が人になる前の獣の部分が、この七年間の愛の渇きを癒すべく、本能をむき出しにして彼を求めた、そんな感じだった。
その彼は、今、私の隣で、健やかな寝息を立てている。
今、この彼の何億匹もの分身が、私の子宮の中の女王様目指して殺到しているのだと思うと、なんかうれしい。
「赤ちゃん、できちゃってるのかな?」
私は、私のお腹をそっと撫でた。
一夜が明けると、淳史くんは、私に、今、三人の彼女とシェアハウスで暮らしていることを告白した。
よくもまあ、そんな状況で私にプロポーズができたものだと、怒りを通り越して、私はただただ呆れてしまった。けど、昨晩の彼の衝動的な行動を考えると、さもありなん、淳史くんらしいという気もした。
彼の能力をもってすれば、当然三人は彼との生活に満ち足りているはずで、これは一筋縄ではいくはずもない。
しかし、せっかく手に入れられそうな妻の座だ。そう簡単に諦めるわけにはいかない。
まずは敵の情報を集めることだ。
「この際、洗いざらい全部吐いてもらうわよ」
私は三人の彼女の性格や人物像、家庭環境やなれそめ、シェハウスを持つに至った経緯など、彼から徹底的な事情聴取を行った。
情報を取りつくすと、私にプロポーズをしたことを三人に説明するように言い聞かせ、彼を彼女らの元に帰した。
さて、これで三人がどう動くか、後は敵の出方を待つだけだ。
これは女の、いや、一頭の雄を争う雌同士の勝負だ。
私は自分の頬をぴしゃっと叩いて気合を入れた。




