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偶然再会

 幸せな四人の共同生活に取り返しのつかない波風を立ててしまったのは、他ならぬこの俺だった。


 早めに帰宅した俺が報道番組を観ていると、都心のマンションで火事との臨時ニュースが入り、現地の映像に切り替わった、忘れもしない、冴島遥さえじまはるかさんが住んでいたマンションの最上階から黒煙が上がっていた。

 

 遥さんと別れたのは、彼女に将来を約束した彼氏ができたからだ。もう結婚してこのマンションには住んでいないに違いない、そう思ったものの胸騒ぎが止まらない。

 俺は家を飛び出し、彼女との思い出が詰まったマンションに駆け付けた。


 現場に到着すると、火災は鎮火していたが、周辺は消火作業を終えた消防車や消防隊員、避難した住民や野次馬でごった返していた。

 

 「遥さん!」

 俺は人ごみの中に普段着姿で悄然とする遥さんを見つけた。


「淳史くん? どうしてここに?」

 

 びっくりして俺を見つめる遥さんに、偶然TVのニュースを観て駆け付けたことを告げた。

「そう、わざわざ来てくれたんだ。ありがとう」


「これからどうするんですか」

「出火したのは上のフロアだけど、消火作業で水びたしだし、煙の臭いで当分住めないかな」


 とにかく今夜の宿をと、近くのビジネスホテルにシングルルームを確保し、二人でホテルに向かった。


 彼女の左手の薬指に光るものはなかった。このマンションに住み続けていたということは今でも独身なのだろう。

 将来を約束する人ができたと言ったのに、離婚したのか、結婚しなかったのか、そもそもが自分を遠ざけるための嘘だったのか。


 彼女との別離に、大学入学当初こそ大きな喪失感を抱いたが、やがて訪れた三人との幸せな日々に、彼女のことを思い出すことはほとんどなくなっていた。

 それなのに、思わぬ再会に、俺の心は未だに遥さんに囚われていたことを自覚させられた。


 チェックインを済ませた後、ホテルの一階のティールームで話をした。

 遥さんは、開口一番、俺にこう告げた。

「せっかく7年ぶりに会えたのに、私、慌てて避難したから、部屋着のジャージ姿で、化粧もしてなくて、恥ずかしいわ」

 彼女がことばを続ける。

「それに、今、私が淳史くんを性的に求めていること、もう、ばれちゃっているよね、あなたはそれが見えるもの。本当に、私、恥ずかしい」

 

 俺は黙って彼女の話に耳を傾けた。

「でも、思いがけず淳史くん会えて、すごくうれしかった」


 遥さんは、意を決したように頷くと、ことばを続けた。

「自分から別れておいて、7年間も音沙汰なしで、偶然再会したばっかりで、淳史くんにこんなこと言うの、虫が良さすぎるって自分でも思うよ」


「でもね、私はあなたを頼りたいの。火事のことが落ち着くまででいいから、私のことを受け入れてくれないかな」


 俺は、遥さんの手を取って立ち上がった。

「ここじゃゆっくり話もできないし、遥さんのお部屋で話をしませんか」

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