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乙女純情

 私は山上美和やまがみみわ二子神淳史にこがみあつしの幼馴染だ。


 あっちゃんとは幼稚園から高校までずっと一緒だ。家も近所で親も仲が良い、いわゆる家族ぐるみのお付き合いで、小さい頃から気兼ねなくお互いの家を行き来し、小学校の低学年までは一緒にお風呂にも入っていた。


 そんな私が、淳ちゃんにはっきりと異性を意識したのは、中学に入学した頃だった。

 それ以来、彼女になりたいという気持ちはずっとあったけど、幼馴染の親友ポジションをリスクにさらしてまで告白する勇気は、どうしても持てなかった。

 幼馴染の友達が自然に恋人同士に、というのは映画やドラマの中の話、現実はそううまくはいかない。私は自らの恋心を隠し、幼馴染の親友を演じ続けた。


 気持ちを偽ってまで守り続けた幼馴染のポジションを失ったのは、高校二年の時だった。淳ちゃんは急に私に対してよそよそしい態度をとるようになった。

 

 三年生になると、エースで主将だった部活も早々に引退して、わき目も降らず受験勉強に打ち込むようになった。

 

 彼の第一志望は私の学力では及びもつかない国立大学だ。彼は猛勉強の甲斐あって現役合格、私は果敢に挑戦したものの当然の如く不合格、幼稚園以来の同級生のポジションも失った。


 それでもあきらめきれない私は、彼と同じ大学を目指して浪人することを選択した。

 年季の入った片思いが高じてほぼストーカーと化した私は、執念で同じ大学に入学、すぐさま彼のいるバレー部にも入部した。


 これでまた友達ポジションに戻れると思ったが、彼の私に対する態度は変わらなかった。

 同じ大学でも一年生と二年生では授業もなかなか一緒にならないし、部活も男子と女子では練習時間が異なることが多かった。

 授業でも、部活でも、通学時も、なかなか彼との接点を作れずに月日が過ぎていった。

 

 そんな折、淳ちゃんが一人暮らしを始めたことを彼のお母さんから聞かされた。


「どんな暮らしをしているか心配だわ。美和ちゃん、ちょっと見てきてくれないかしら」


 彼のお母さんの依頼を渡りに舟と、私はいそいそと彼のマンションを訪ねた。


 ドア口で私と顔を合わせた淳ちゃんは明らかに迷惑そうだったが、私はお構いなしに彼の横をすり抜け、部屋に上がり込んだ。


 広くない部屋に置かれたセミダブルのベッド、これは彼に恋人ができたのだ、ここはその彼女との愛の巣なのだと直感した。 

 

 同時に、彼が私によそよそしくなった理由に思い当たった。

 彼は私の恋心を知っていたのだ。そしてそれに応えられないから私を避けていたのだ。

 そんな簡単なことにも思い及ばずに、私は親友の芝居を続けていたのだった。


「淳ちゃん、私の気持ち、気が付いていたんだよね。いつから?」


 敦ちゃんは躊躇ためらいながらも首を縦に振った。

「高二の夏頃かな」


 そんな前から! というか、やはりあの時から!

 

 恥ずかしい、今すぐこの部屋から逃げ出したい。 

 でも、今逃げたら、私は永久に彼を失ってしまう。私は、女として、一世一代の勝負に出る覚悟を決めた。

 

「あなたが好き。お願いだから、冷たくしないで、私を避けないで、淳ちゃん」




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