友達がいない人の話
「友達がいない」「少ない」「根暗」その他、そういった主人公達を扱った各種作品の9割以上はクソだと思う。本当にそういう類の人を舐めてるだろうと。何かイラっときたので、とりとめもなく書いてみた。
友達がいないヤツってのが、どれだけ救いが無いのかを。
私は人付き合いが苦手だ。友人と呼べる存在もいない。別に人間嫌いなわけじゃない。ただ、何を話していいのか分からないのだ。
何を話していいのかわからないから、会話が必要な協力型のオンラインゲームももちろん苦手だ。苦手というよりプレイしようとすら思わない。
けれど何故か見つけてしまったブラウザゲームのキャラクターに惹かれてついプレイを開始してしまった。その作品は1人でもプレイ出来ない事も無さそうなのだけれど、組織?チーム?国家?よくわからないけれどやっぱり大きな組織を作ってそこに属さないとまともにプレイは出来なさそうだった。1人で気軽にプレイを続けていても、プレイヤーを襲う事が出来るスタイルのこのゲームでは後ろ盾の無い個人プレイヤーは組織に属しているプレイヤーに狙われたら太刀打ちなど出来るわけもない。
組織に属するだけなら別に私でも出来るだろうとは思った。ただ組織に入れて欲しいと連絡すればよほど問題のあるプレイをしていなければ受け入れてもらえるだろう、その後その組織で会話をする必要も無いと思う。
ただ、何となくそれはイヤだった。そういった組織に属すればその組織のすることを容認するという事になる。当然、個人プレイヤーを襲撃もするのだろう。組織の性格の説明書きはあった、そういった他者への攻撃を良しとしないところもあるにはあったので一度は入らせてもらった。ただその実情は「強い組織」に守ってもらうという、だったらその組織に入ればいいじゃないかと思える代物で、結局はその強い組織がしている事は容認しているならもうそんなのは「自分達はやっていない」という自己満足ですらない偽善じゃないかと脱退してしまった。
見渡してみれば組織に属さずに1人でプレイしている人はそれなりの数はいる。ただ、その人たちはどうやって身を守っているのかとも思ったけれど、今わかるのは、その人達はいつ襲われてもおかしくない、特に身を護る術を持って個人でプレイしていたわけではないという事だ。
ゲームでまで対人関係で疲れたくないと個人プレイをしている人はそれなりにいることはわかった。それなら何故チーム戦が基本のそんなゲームをプレイするのか、それは私にはわからない。私のようにキャラクターに惹かれたのかもしれないし、やはり私のように組織に属したものの納得がいかずに脱退したのかもしれない。
理由はいろいろあるだろうけれど、個人プレイを続けたいのだろう。それならと、およそ自分らしくもないとわかっていたけれど、同じ組織同士であってもお互いにあまり関わらない、交流したければしてもいいけれど他人に強要しない実質個人プレイ、形だけの組織を作らないかと呼びかけてみた。すると思いのほか、いや思った通り結構な数の人間が集まり1つの組織が出来た。
組織は盾だ。数がいる組織のプレイヤーには襲撃しづらい。それでも万が一、誰かが襲撃されたなら…個人プレイしているとはいえ、同じ組織に属してプレイしていれば少しは仲間意識も生まれる、万が一誰かが襲撃されたなら応援に駆け付けるぐらいの事はしようかとも思えてきてはいた。もっとも特に誰かが襲撃されるという事もなく平穏に過ごせてはいたのだけれど。
特に共通の目的もなく寄せ集まったその組織は当然あまり会話が無い。リーダーをやりたくない私がリーダーを任せたそのプレイヤーはこの組織を盛り立てようとしていたようだったけれど。だからこそメンバーどうしの喧嘩など起きるわけもなく平和だったのだと思う。
ただリーダーが接触した似たような組織との合併はきっと失敗だったのだと思う。同じような性格の組織であるため表だって大きな問題もなく合併し、見た目だけは巨大な組織となった。ただ、リーダーが2人いる状態となってしまう。そして相手リーダーが認識していたこちらのリーダーは私だった。確かに最初に接触したのはこちらのリーダーのプレイヤーだった。けれどそれ以降、あちらのリーダーと話をしていたのは私だったからだろう。
相手リーダーは温和な人で話していて楽しかった。だから私もこちらのリーダーを介さず直接話をしてしまっていたというのもある。結果として、合併後の組織のリーダーはあちらの組織のリーダーとなり、最初の組織で私がたてたリーダーは一般プレイヤーに沈んだ、これが直接何か事件を生んだわけではないけれど、少なくとも今はその時の元リーダーの気持ちを思うと切なくなってしまうのは確かだ。組織を盛り立てようと頑張っていたのにいつの間にか自分は外されていたのだから。
友人のいない私は新たなリーダーに恋をしていたと言っていいかもしれない。相手の年齢も性別も関係ない。単純に話していて楽しかったのだ。そしてリーダーの役に立ちたいとも思い行動したのが間違いだった。組織のメンバーに明らかにおかしなプレイヤーがいた。いわゆる複数アカウント持ちなのはほぼ間違いなく、そしてそれを悪用しているのも確かだった。追放するしかない、と、そのプレイヤーを追い詰めた結果、組織の空気が明らかに悪くなってしまった。放っておいた方がよかったのかもしれない。ただ、そのプレイヤーは捨て台詞を残してアカウントを抹消してしまった。
他者にあまり関わらないこと、それが組織の空気であったはずであり、リーダー含めたメンバーの望んだ姿だったと思う。ゆるやかな空気が「空気を読めない」私の行動で壊れてしまった。
リーダーは私は悪くない、誰かがやらないといけなかった事だとは言ってくれたのだけれど。そして告白を受けた、自分は実は余命残り少なくリーダーをこのまま続けることは出来ないこと、それを見越しての合併であったこと。リーダーを継いで欲しい事。
全てが真実であったかどうかはわからない、ただ、やがて年齢も性別もわからない『彼』のアカウントは停止した。その後の事は覚えていない、無責任に投げ出したわけではなく、ゲーム終了までリーダーを続けた事は覚えている。形だけのリーダーだ。かのリーダーが本当に余命わずかな病人だったのか、やめる口実だったのかはわからない。ただ、私はその口ぶりからおそらく事実だったのだろうと思っている。どちらにしろ、『彼』と二度と話が出来ないのは確かだった。
『彼』とプレイしたわずかな期間は楽しかったのだと思う。以後、協力型オンラインゲームはプレイしていない。自分が対話している相手が何者かわからないというのは、それは余命わずかな人の可能性もある、そう思うと怖くて仕方がない。
私はオンラインゲームで他人と協力はおそらく出来そうにない。誰かと会話して楽しませることも出来ないだろう。私にオンラインゲームでの存在価値など無いのだ。けれど、ゲームですら存在価値が無い人間が現実で果たして存在価値はあるのだろうか?友人のいない人間には存在価値があるのだろうか?誰からも愛されず誰からも必要とされない人間はこの世界に不要なんじゃないかと思えてならない。