悪者の夢枕には…
麗香は学校帰りいつも鶴に変身して家に帰るのが日課である。
それは、それは美しい鶴だった。
ある村には動物化する人間だけが住んでいた。
その村の一大勢力はあるお寺にある。
そこの跡継ぎである孫娘、麗香は命を狙われていた。
そんなお寺で事件が起きた。
僧侶たちが姿を消したのだ。
和尚である祖父はカンカンだった。
「修行を抜け出すとは何事じゃ!」
「でも、おじいさま、何か理由があるんじゃないですか?」
僧侶たちを庇う麗香。
だが、聞く耳を持たない祖父。
麗香は決心した。
僧侶たちを探そうと。
夜になると出掛けては僧侶たちが食料品を調達しそうなスーパーやコンビニの前で待ち続けた。
帰るといつも母に心配されたが、それでも諦めなかった。
5日が過ぎた頃、遂にコンビニで円々を見つけた。
そっと着いていくと、とあるアパートの一室に入っていた。
思い切って、インターホンを押す。
「麗香様どうして?」
驚いた顔で出てきた僧侶たち。
「どうして?はこっちのセリフよ!
修行をサボって何してるの?」
困った顔をする僧侶たち。
「とにかく上がってください」
僧侶たちは麗香を部屋に上げた。
「麗香様をお守りする策を考えていたんです」
円々が答える。
僧侶たちはすぐ近くにいるのに麗香を守れないことを悔やんでいた。
お寺の中で殺生の話をするわけにもいかず、アパートを借りたのだと言う。
麗香はその心に感謝しつつも、寺に戻るよう説得した。
お寺に戻ると和尚である祖父は僧侶たちを泣きながら迎え入れた。
僧侶たちにとってはある意味いい罰になった。
麗香は母親に頭を撫でてもらえた。
嬉しかった。
しかし、事件はその翌日に起きた。
いつものように学校帰り飛んでいると、バイクで男が追いかけてきた。
サングラスをかけていたが、敵、隣村の御曹司なのはすぐにわかった。
サイドカーには鷲が乗っていた。
これはまずい。
本気で殺される。
鷲が放たれる。
すぐに追い付かれて、地面に落とされる。
押さえつけられて動けない。
そこに男が銃を向けた。
死ぬ。
こんな簡単に終わりたくない。
助けて!
すると、鷲が人間に変わった。
「助けてあげるよ」
そう言って、自ら弾道に入ると放たれた銃弾の犠牲になった。
「なぜだ?」
男はパニックになる。
その隙に麗香雲の上まで逃げた。
しばらく泣きながら雲の上を飛んだ。
訳がわからなかった。
初めて出会った鷲に助けられるなんて。
しかもその鷲が死んでしまうなんて。
どれくらいだろう。
疲れて下へ降りると、そこは知らないところだった。
とにかく落ち着こうと人間の格好に戻って喫茶店に入る。
ココアを注文する。
温かい。
すると窓から猫がたくさん入ってきた。
入るとすぐに人間に変わる。
「麗香ちゃん私たちが助けてあげるよ」
それは檀家さんたちだった。
麗香は急展開に呆気に取られていた。
その日から夜、御曹司の男の夢枕には化け猫が現れたという。
それからと言うもの、麗香が命を狙われることはなくなり、数年後には円々と結婚し、寺を継いだのだった。