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1仕事目 自然発生神の剪定

頭上の窓から光が差し込む。

太陽に「やかましい」なんて思ったことは一度もない。

だってあるものに対して私が恨みなんて抱けるはずもない。

そんなことを思うとしたら、私は本気で夢を見ているのだろう。

「嘘が本当になる」なんてよく言ったものだ。

人は常に自らに自身ですら気づかない嘘をついている。


「認識」という嘘をついている。

目から放たれる光を見ているなどと敬称する。

だからこそ、人はいつまでも、愚かで美しい。

努力も才能も何も無いことも、真新しいなんて感じはしない。

人が認識する全ては、その人の妄想によって出来上がる。

よって、一番に嫌悪すべきは…


メイド「起きてください、ご主人様。」


トーンの低い、平均的で冷徹な声が聞こえたとともに硬い地面に叩きつけられる。こうして無理やりに行動強制してくることだ。

痛みは無い。もう疲れたので痛んでいるフリはもうやめたのだ。

精神的なだるさを物理的な重さに変換して起き上がる。

いつもの癖のようにふにゃりと口を広げ笑い、


ご主人様「おはよぅ…」

メイド「はい、おはようございます」


その一言で直立させられ、しなる巻尺をさっさと身体に巻き付け数秒間で採寸は終わる。

何故昨日はネグリジェしか無かったのかわかった気がする。

きっと詳しいサイズが分からなかったからだろう。そうに違いない。そう思っておこう。

ティーテーブルに行き、はちみつ入りのなんかの紅茶を口にする。


私はお茶はルイボスティーとアップルティーの味しか覚えてない。

アールグレイとダージリンの味が違うことすら知らない。

ウーロン茶と緑茶は苦いことしかしらない。いや、どこどこのメーカーの緑茶は苦くない。

まぁ、名前なんてものは適当で良いものだ。深みを持たせすぎるのは私には合わない。


ティーカップを置き、赤色のぐじゅぐじゅと煌めくジャムが塗られたパンを両手で持ち、口に運ばれていく。

うん、ただのイチゴジャムのパンだ。

こういう時はイチゴジャムが塗られたパンだ、と形容した方がいいのだろうか。

いや、面倒くさいし、イチゴジャムが入ったパンとイチゴジャムが塗られたパンの味の違いは工房によって変わるだけで、大した形容詞の違いはないだろう。


イチゴジャムの味がする質素なパン。+バター

みたいな形容をすれば、何処ぞのパンヒーローのパンを焼く人を思い出すか、お手軽パックされた最近は種類も増えたパンを思い出す人もいれば、餃子のような形のパンを思い出す人もいるだろう。


まぁ、ジャムが中に入ってるか外に乗っかっているかに過ぎない。

映像上で食感を堪能してもらうためにはまだ技術が追いついてないだろう。

なので、簡潔に


ご主人様「ご馳走様」




■■■■■■■■■■■



ご主人様「それで、私の仕事は?」


メイド「異世界転生はご存じですか?」

ご主人様「あの夢特有のご都合主義設定。」


メイド「知っているなら話は早いですね。

その女神らを滅ぼして欲しいのです。」

ご主人様「無理」


メイド「いえ、特段身体を動かしていただくことはございません。

先程言った異世界転生、異世界転移させる女神たちは転生した人間個人に憑いているのです。その女神たちはこちらでプロフィールとしてまとめました。

それらの存在を消すか残すか、権能のどれを残すかなど、判断して欲しいのです。」

ご主人様「ちょっと待て。私が見ていた現実でそれは「小説」だったんだ。現実にそんなことが起こっていたわけじゃないんなら…」


一つだけ思い違いをしていたとしたら、

「現実」と「夢」の違いなど、私には分からなかった。

なら、小説が現実で起こっていたことでも、私には現実としか見れないということだ。


メイド「まだ寝ぼけているのですか。

私らは、人間の奴隷でもなければ、人間に都合よくする義理もございません。

それでも、世界の守護者として、人間の信仰心を無下にしても守らなければならないのです。それが、私らの仕事です。」


メイドの激怒と真剣な眼差しを見て、不思議と恐れは感じなかった。あぁ、夢は本当にあった。そんな、救いを感じてしまう。


ご主人様「うん、了解。あ、一つだけ約束してくれる?」

メイド「なんなりと。」


私が嫌いなこと。前世から何もかもが嫌いだったが、とある理由が原因で、人である私の身では出来なかったこと。

きっと、言葉を持つ、身体を持つ全てに共通する全ての法則。

たった一つ。たった一つが手放せなかった。



「私を最後まで認識させることがないように。」


「…はい、最後まで、隠し通しましょう。貴方様が、望むのであれば。」



私は責任が大嫌いだ。

私は役に立ちたい。

でも、人はいつだって恩や仇を決めたがる。

人に責任を押し付けて、無責任にも追い詰める。


生きて欲しいなんて願われるなんて、私はただ私で、君らが作った言葉を言っただけだ。

死んで欲しいなんて願われるなんて、私はただ私で、君らが(たてまえ)でも「善いこと」をしてくれと言われたからしただけだ。

たった一つ、人間にしか興味がなかったから。

人間の言葉が知りたかったから。

人間が生み出す概念をいつまでも観測していたかった、という本音しか無かった私が、「依代」を作って、それに「本音()」を持たせた。


恩も仇も嫌いだ。

私に想い(重い)は必要ない。

だけど、ただ一つ。変わらない。

私は、これを続けて、誰かが勝手に助かればいい。

それが、私の…感謝だ。

私の、私への愛だ。




全ての書類に目を通し、世界の守護者としての神の立場を尊重し、承諾と却下の印を押し終わり、確認し満足すると書類がすっと消えていく


ご主人様「終わったぁ…」

メイド「お疲れ様です。ご主人様。ルイボスティーを用意しておりますよ。」

ご主人様「わーい!」


バタバタと執務机からティーテーブルに行き、ティーカップにルイボスティーが注がれる。

注ぎ終わったティーカップを持ち、特有の匂いを嗅ぎ、音を立てずに少量だけ口に含み、喉を鳴らす


ご主人様「健康的な味ー…」

メイド「好きな味、ですよね。」

ご主人様「うん、美味しいよ。」


あ、と気づいたように話したいことを話して


ご主人様「書類について、人の不幸に寄り添いすぎるものは却下にした。勿論、死んだ者を無条件に、というのも。

人間にできる範囲の努力をしなかったものに分け与えられるべきじゃないと思う。


でも、人間じゃ覆きれないものが一つだけある。「概念の矛盾に挟まれた人間」はチートがあっても許すことにした。

また、別世界への天界の干渉がない転生転移は無視したけどそれでいい?」


メイド「はい、完璧ですね。さすが主様っ!」

ご主人様「おわっ!」


横から抱きついてくるメイドに慌ててティーカップを置き、抱きつかれた側、右側の手で撫でる。

あれ、私が撫でられる側なのでは?いや、まぁ、メイドの髪のサラッサラ感を堪能できるからいいんだけど…

ところで呼ぶ時にっ!ってついた気がするんだけど気のせい?


「二人だけの時くらい、ダメですか?」

「好かれるの嫌い。」

「知っています。でも、私は…嫌いで済ましてくれる貴方がいいのです。」


その言葉は変えたい「嫌い」じゃない。

その言葉は消したい「嫌い」じゃない。

そして、離れる気なんて無いのも。

ただの感想。願うことがない、その言葉が好き。

例え、貴方様以外にその言葉を言った人がいたとしても、私はその人も好きだと言うかもしれない。

でも、貴方様が言ってくれた言葉が好きで、貴方様に尽くす理由などそれだけで十分なのです。


ご主人様「…好きにしろ」

メイド「はい!」


私の身体に顔を埋め深呼吸するメイドに


ご主人様「何してんだ!」

メイド「久しぶりのご主人様成分を吸引していました。」

ご主人様「真顔で言ってもゆ る さ ね ぇ。離せ!」

メイド「えー…なら指舐めくらいはいいですか。」


うっ、と顔を赤面させ目を右往左往させ


ご主人様「…私の癖を探るな…」

メイド「…嫌の基準が分かりませんね。」

ご主人様「そもそも仕事したのは私なんだが。本来なら労うのは私の方じゃないのか。」

メイド「労われたいのですか?」

ご主人様「いいや、与える方が楽だ。」

メイド「なので私は貴方が求める分、頂いているのです。」


本来だとか、そういうのを気にしない。心地はいい。…だけど、私のことを信じた理由を、聞いていない。

私に仕える理由、あのお方を「親」なんて言った理由を、

他の神を束ねれる理由を。…聞いてもいいのだろうか。そうしたら、私は私ではなくなる気がして、怖い。

その責任を、私である責任をおわないといけない気がして…

ただ、今はまだ。こんな…夢に、浸って、いよう。

不定期更新です。

スランプになりやすいので結構…

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