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71.教会の子供たち



「なぁ」



 私とメルベル様との会話が終わった直後だ。突然背後から声がかかった。それは、どこか高めの少年の声。慌てて振り返ると、初めてエルヴィンに会った時よりもボロを纏って少し臭いのする私よりも少し歳が上の男の子がいた。



「ここで仕事紹介してくれるって聞いたんだけどさ」



 少年は1度私を見た後に、言葉を投げたのはメルベル様にだ。どうやら、私みたいな小さな子ども相手では無いと思ったらしい。



 人を見た目て判断してはいけないと習わなかったのかな。とりあえずは、何も言わずにメルベル様に視線を向けると小さく頷いて、話は彼主体で聞くように促す。



「ああ、内容にはよるが恐らくあんたが言ってるのは俺たちのことで間違いない」


「子どもって雇ってもらえるのか?」



 大人ではなく子ども。私は悩んだ。出来れば子どもには学校に行って欲しいから。子どもも立派な労働力ではあるのは理解しているが、それでも大人よりはできることは少ない。



 文字書きできるようになって欲しいのが私の願いでもあるので、出来るだけ働くと言うよりは、学んだ後に働くに思考を変えてもらいたいのだが。子どもでも手があるのは助かることが現状。学校なんてあと2年くらい先なのだ。今は話を聞こう。



 とりあえず続けて頷いて見せれば、それを確認したメルベル様も小さく頷く。



「俺は詳しくは知らないが……とりあえず働くのはあんたか?」



 鋭い目つきのお兄さんにも物怖じせずに淡々と喋る少年。なかなかに肝が据わっている。



「他にもいるんだけどさ……」



 ちょっと視線を外した。んー、何かワケありか?私は、メルベル様のズボンの裾を軽く引っ張ると、メルベル様が腰を掲げてこちらに耳を向けてくれた。



「1度彼の事情を聞きたいです。お願い出来ますか」



 耳打ちすると、こくりとひとつ頷いてくれる。



「その他の奴らも見たい。今ここに呼ぶかあんたがその場所まで案内は可能か?」



 体制を整えて改めて確認すると、少年は少しだけたじろいだ後に意を決した表情でこくりとひとつ頷いた。



「こっちだ」



 どうやら案内してくれる方らしい。私は、少年の後ろを追っかける。相手が子どもだから、あまり足の速さは変わらないかと思ったが、やはり数歳都市が上だと歩幅も違うのか少しだけ早い。普段から体力作りをしてるとは家、引きこもりと抱っこで移動していた為か、数十分した辺りで息が切れ始める。



 しかし、息が切れ始めたからと言って抱っこしてもらうわけにはいかない。何せ私には婚約者(フィアンセ)殿がいるのだ。下手に異性に触れ合うことは裂けたい。出来てもお爺様含めた親戚くらいだ。間違ってもメルベル様などにお願いは出来ない。



 そう身を構えたすぐだ。目の前にオンボロの大きな白い建物が経っていた。それは教会のようで、その横にはまた同じくらいに古く所々穴の目立つ木の建物。しっかりと手入れのされていない見た感じオンボロ邸である。



「あ、ハンスが戻ってきた」



 教会の中から1人の子どもが、私たちを見つけると指をさして騒ぎ出す。そして、目の前を先頭して走ってた子が、名前を呼ばれると嬉しそうに表情が和らいだ。



「おーう、戻ったぞーー」



 ここの距離からでも届くように大声を上げて、子どもに知らせると、教会の中からわらわらと子どもたちが溢れてくる。こんなに収容される?普通ってくらいにわらわらと出てくるものだから、私も目が丸くなった。そして、更にはその子ども達は、細く汚れてボロをまとう。それでも、週に1回は湯に入ってるのか、目立つ汚れはない。



 それを遠目に眺めながら、子どもたちの最後に、髭の蓄えた随分と歳のいった男性と女性が出てきた。それに飛びつくようにハンスと呼ばれた子は駆け出したのを、後ろからただじっと眺めていた。



 男性と女性の服は、特別汚くは無いが特別綺麗でもない。使い古した服なのを見て、長年着ているのはよく分かる。男性は神父服を。女性の方はシスターの服を身につけて、子どもたちに囲まれている。



「ただいま、神父様、シスター」



 少年は、無邪気に彼らに抱き着いてるので恐らくとてもいい人たちなのだろう。痩せては居るが酷い餓鬼状態の子どもはいない。少なくとも、食べさせるようにはしていたが、やはり人数が人数だ一日を過ごすのにやっとな食事量なのだ。



 私はその様子を見てグッと泣きたくなった。知らないは罪だ。知ろうとしなかったのも罪だ。何が生活水準を上げたいだ。生活水準を上げた結果彼らはものを買えてないのではないか。生活水準が上がれば自ずと物価も上がってしまうから。



 それは、食べていくのにやっとだった人達に何も施しを与えられてないのと現状だ。半年間何をしていたのか。



 喉元まで来た感情をぐっと堪えるように、スカートの裾を握る。そして、少年を囲って、わいわいとしているその郡にゆっくりと近づいた。



 そんな私の存在に気がついたのは、神父様とシスターだ。近寄る私にあちらからも近寄ってくる。なので、私はスカートの裾を摘んで軽くお辞儀をした。



「お初にお目にかかります。わたくし、フィリップ・エステマリアのひとり娘。リアラ・エステマリアと申します」



 神父様とシスターが息を飲むのがわかる。私の正体が誰なのか、瞬時に分かったのだろう。



「あなたが……」



 どこか感情が篭った歳をとった女性の声。これは、どう見ても領主に対してあまり良くない印象のある声だ。父も母もきっとこの教会に対して、この子どもたちに対して何かを行ったのだろう。それを私は知らない。



「これはご丁寧な挨拶をありがとうございます。このような場所ですが、宜しければお仕事のお話をお聞きしたく思いますので、どうぞあかってください。建物が古く、雨漏りもあちこちとあり少しみすぼらしいとは思いますが」



 神父様が前に出て、私に丁寧に挨拶してくれる。それは、特別勘定の篭ってない声だ。先ずは、様子を見たいと思っての行いなのだろう。彼は平等であろうとしているようだ。



「とんでもありません。ぜひ、建物の様子の確認も含めて中へ入らせて頂きたいです」



 やっと顔を上げた私は上手く笑えているのか。どんな顔をしてたかは分からないが、私の表情を見た2人は少しだけ、ほっとしたような顔をしていた。



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