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66.大丈夫、本題は別にあるから



 結局ハンゼン様を見かけるといつも開口一番に良く寝てくださいなのだ。この流れはいわゆる十八番。そして、全ての話が終わってハンネ先生にこの話をすれば飛んで彼女を回収するまでが一つの流れになる。そして、一段と光の反射が少ないハンネ先生の部屋で、ハンゼン様は寝るのだ。ハンゼン様が寝ている。。ハンネ先生が過ごす場所がないので、それを見かねた私は、彼にもう一室用意した。



 このだだっ広い屋敷の住人は私だけで。お客さんたちで部屋は埋まっているが、それでもまだ余っている。その部屋数のひとつを彼に貸してもさして問題はない。



 部屋を彼に与えた時、彼は申し訳なさそうに苦笑いを浮かべて素直に謝意を述べられた。最初の頃の反抗的な態度が嘘のように、今は素直にいろいろと取り組んでくれている。特に、魔法の使い道の研究として魔力を原動力として媒介に目的の属性の魔力を込める。それをこちらの都合で発動させたりできないか等を行っている。



 その発端と言えば、私の初回の魔法の授業にあたる。テンプレートな魔力の流れを感じ取ろうということで先生の魔力を私に流し、私の魔力を先生に流したことがきっかけだ。魔力を蓄積させることはできないか。その蓄積させた魔力は、こちらから魔力を流すことで発動させたりできないか等を質問したことだった。何か媒介があればできるかもしれないということで、どういう条件でどの属性の魔力が蓄積されるのかを確認してくれている。



 特に魔法は超自然なものだから、自然界にあるものから物を探す。



 勿論雇用主は私なので、実験材料となりそうなものを取り寄せた。定番なのは宝石だったり、原石だったり、水晶だったりするので、そういう石類をひたすらに集めていた。それらを全てハンネ先生へ渡していった結果、いつの間にか最初の印象がどこかに消えて、気さくなお兄さんになっていた。彼も探求精神強い研究者なので、そういう時は逆にハンゼン様を呼んで寝かしつけるようにお願いしている。



「それで、リアラはどうしたのさ。まさか、ハンネにあたしを言いつけるために来たわけじゃないんでしょ?」



 そうだった。ついつい研究熱心なふたりの仲の良さを思い出しては目的を忘れていた。



「大丈夫ですよ、本題は別にありますから。エミル」 



 やっと正気に戻った私は、後ろで控えているエミルに声をかける。すると、すっと音を立てずに前に出た。持っていた箱の蓋を開ければ、それに食いつくようにハンゼン様が顔を覗かせる。



「植物の種か?」


「今日から春にかけて、お爺様とお婆様が屋敷に滞在されるんです。それで、私のお土産に植物の種や球根を用意してくださいました。目録になんの植物かが書かれているのでそれを写したものは後ほど届けますね。あと、これ」


「いや、いいよ。自分で調べる」



 そういって、もう一つの図鑑の方をエミルから受け取るとぱらぱらとページをめくっていく。



「なあ、リアラ。ここって、結構南に位置する領地だろう?冬って冷え込むか?」


「うーん。雪は降らないです。でも、服は長袖がないとやはり寒いですね。コートは着るし、マフラーもします。しっかりと厚着はしますけど、全体的にあったかい方だとは思いますよ」


「だよなぁ……」



 私の返答にうーんっと顎に手を当ててある1ページをじっと見つめている。



「どうされましたか」


「いや、珍しいもんがあってさ。この植物さ。痛み止めの効果があるやつなんだけど。雪の降るくらい冷えるような場所にでしかその薬効のある花は咲かないらしい」



 どうしたものか、と顎に手を当てて悩んでいる姿を眺める。



「発芽条件の気温がどのくらい低い気温であるかにもよると思うんですが。夜は気温の下がる外に置いたりすれば、まず土が冷えていいと思うんです。問題は昼間ですよね……例えば、ガラスでできた小さな温室みたいな、そういうところに、これを昼間は置いておきながら、定期的に部屋の気温を下げる生活魔法とかを使用するとかはどうですかね。


例えばガラスをキンキンに冷えた状態にするとか。冬場でも、太陽で気温を下げていたとしても、上がるので定期的に確認が必要だと思います。


あとは、今ハンネ先生が一生懸命研究しておられる、魔法を物に込めて、こちらが微力な魔力を注ぐだけで何かしらが発動する実験を試してみるとか。


冷やす生活魔法を媒介に込めておいて、一度魔力を注げば、その中にある魔力が枯渇するまで冷気が溢れて、その箇所だけが冷えるんです。ハンネ先生の実験では、その持続時間の確認を。ハンゼン様はその植物の発芽条件を探せば、ふたつの実験が同時進行されて効率もよくていいんじゃないでしょうか」



 どうでしょうかと満面の笑顔を向けると、ハンゼン様はドン引きしたように目を細めていた。



「リアラは本当に5歳か?」


「失礼ですね、きちんと5歳ですわ。なんなら、私の赤ん坊時代をよく知っている方も今ここにおられます」



 ふんっと鼻を鳴らしてみせながら、私を抱えている人を見上げた。



「私も、もしかしたら間違えた子どもを迎えたんじゃないかと少しだけ疑心暗鬼だよ」


「リドクリフ様もッ!!!酷いです!!」



 最後の頼みの綱だというように、エミルに視線を向けると。見事にエミルも視線をそらした。どうやら、ここには私の味方はいないらしい。なんともひどい話だ。



「まあ、なんだ。あとでハンネに相談をしとこう」



 私がむぅっと頬を膨らませてしまうと、ハンゼン様はからかいすぎたと笑って頭を撫でてくれる。半分本気で半分冗談なのだろう。



 それでも、私は思っている以上に傷ついているんですからね。



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