64.祖父母の来訪
大きくて立派な馬車を筆頭に、数台の馬車たちが列をなして屋敷の前で止まる。
私は、リドクリフ様とハルシュタイン氏、ルドガー伯父様と一緒に横一列に並んでその馬車から出てくる相手をじっと待っていた。まずは後列に並んでいる、箱馬車から黒スーツの男性が下りてきた。そして、こちらに軽く一礼をしてくれたので、ついつられて一例をする。おそらくアルテンリヒト家の執事をしている方だとは思うが、私が知っているのはいつも道案内をしてくれていた老齢の方くらいだ。今回顔を出してくれたのは、若い男性だった。だからなのか、きっとすれ違っていたりしているのだろうがあまりピンとこなかった。
そして、その執事が立派な馬車を軽くノックした後、返ってきたノック音を確認してやっと扉が開かれる。
先にスヴェンダお爺様がにゅっと長い足を延ばして現れ、後続に続くミステリアお婆様に手を差し出す。その手を取って、ゆっくりとした優雅な動作でミステリアお婆様たちが出てくる。
前回お会いした時にも思ったが、お爺様、お婆様と呼ばせていただいているし実際には私の祖父母なのだが、結構2人は若い。年齢からみると結構歳だとは思っているが、それでも見た目がとても若々しいのだ。アーレン伯父様と並ぶと親子よりは兄弟に見えなくもない。ルドガー伯父様と並ぶと、流石に親子には見えるが。それは、単純にルドガー伯父様の見た目が若すぎるというところもある。そして、その若々しさはミステリアお婆さま譲りなのだろうというのも、よくわかる。エイマー伯母様の少しきつく感じる見た目は、お爺様ゆずりで、体はしっかりと御婆様譲りだ。こうしてみると、しっかりとアルテンリヒト家の人たちはふたりの遺伝子を均等に引き継いでいる。
ルドガー伯父様、フィレンカ叔母様、エミリア叔母様はお婆様の容姿がすごく反映されており、綺麗やかっこいいという部類ではなく、可愛らしいに近い。
アーレン伯父様とエイマー伯母様は、お爺様の容姿がすごく反映されていて、幼いや可愛らしいというよりは綺麗やかっこいいの分類だ。
逆に私の実の父親は知らないし、知りたいとも思わないが、私はよく父親に似たねと言われるので、恐らくお爺様とお婆様をしっかりと足して2で割った良いところ取りだったのだろう。色合いはアルテンリヒト家をよく体現していた。肌質や髪の毛に波打っているところは、母に似ていると言われたり、目許、口許も似ていると言われているが私にはよくわからない。実感も出来ないし、興味もなかった。それを察してか、リドクリフ様を始めとする、父のことを知っている人たちはあまりそういう話を持ってくることもなかった。だから、目の前に危なげなく馬車から体を出した二人をみて、軽い想像をするくらいにとどめているのだ。
「この度は、遠路はるばるエステマリアへお越しいただきありがとうございます。お爺様、お婆様。ご不便をおかけしてしまうこともありますが、秋、冬の間はどうぞよろしくお願いいたします」
スカートの裾をつまんでふわりと広げながら頭を下げる。カーテシーとは違う挨拶の仕方を、この間ゼビエ夫人に教わったので、それを実践した。
「まぁまぁ、いつも丁寧にありがとう。そんな堅苦しくなくたっていいのよ。季節が巡る間だけだけれども、貴女と過ごせるのをとても楽しみにしていたわ。よろしくね、リアラ」
「しっかりしすぎて本当に5年前はあんなに小さな赤ん坊だったかと疑うよ。秋、冬の間は世話になる。私も、リアラと過ごしたくてとても楽しみにしていたよ。よろしく、リアラ」
それぞれの挨拶が終わると、今度はリドクリフ様が握手と抱擁とで挨拶をして、ハルシュタイン氏は礼儀正しく頭を下げ、ルドガー伯父様は軽く手を振った。
そうして、外での挨拶もある程度済ませたので、長距離の長旅を続けた私たちは屋敷へと戻った。大人たちの足の長さには敵わないので、いつもの流れで私はリドクリフ様に抱き上げられる。そして、玄関を開けると目の前にはゼビエ前侯爵夫妻が並んで立っていた。
「久しいな、スヴェン」
「ミステリア。貴女が来るのを首を長くして待っていたわ。秋と冬の間は一緒にいられるのね。沢山お茶会をいたしましょう」
嬉しそうに同世代での花を咲かせた挨拶に、仲の良さを感じる。それぞれがお互いを呼び捨て会う仲らしく、男は握手を、女は両手をつないできゃっきゃと乙女を見せていた。こう見ると、やはり全員とても若い。全員が全員孫がいる年齢だとは思っているが、それでも若い。それは一重に、この世界の結婚が早いこともあるのだろう。フィレンカ叔母様だって、17歳でエス様を産んでいらっしゃるからね。17歳の時はまだ高校生で必死で勉強に食いついていたから結婚とか、まだまだ先の印象だ。だからこそ、15歳が成人で結婚が出来るなんてあまりピンとこないのだ。
「積るお話もたくさんありましょう。今日は、皆さまでそれぞれゆったりとされて、明日改めて屋敷の案内や引継ぎをいたしましょうか。一度ここで解散とさせていただき、これからおふたりがお過ごしになる部屋へはトーマスが案内人となりますので、何かありましたら彼に声をかけてください。それと、本日からお越しくださった使用人の方々は荷物運びがあるかと思いますので、それもトーマスの指示に従うようにお伝えくださればと思います」
リドクリフ様がとても丁寧な言葉と、営業てきな笑顔で説明をすると、それぞれが小さく頷いて私たちは解散となったのだ。
一口メモ:ゼビエ前夫妻とアルテンリヒト前夫妻はとても仲良し




