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52.城下町Wデート



 今回の城下町Wデートでは、リドクリフ様がいつも使っているような豪華な馬車は使えない。そのため、石畳の上を走る車輪はよく跳ねるので、振動がお尻にダイレクトアタックされる。



 そんな馬車の中は、どこかにこにこと機嫌のいい男組と、いつも通り表情が読めないルーナとこのデートにあまり興味を示さない5歳児が座っていた。



「リアラとルーナさんと一緒に城下町散策楽しみだな」



 いつもよりも幼さを感じるのは、キャスケットから覗く前髪があるからだろうか。ルドガー伯父様がいつもの仕事用の眼鏡をかけているというのに、前髪がある、それだけで童顔が目立つ。前髪って結構人の印象を変えるのだと、改めて思った。



「今回、私が付いてくるのはおこがましく思っておりましたが、お嬢様の傍で一緒に街を散策できるというのは確かに楽しみです」



 伯父様の言葉に、ルーナが静かに答える。そういえば、ルーナと出かけたことってないなとふと思った。こういう遠出は着いてきてくれたけど、ライラックの街でストリートライブを毎月している時でも、ルーナは一緒にいない。必ず、屋敷に残って私の帰りを待つばかりだ。



 それを言われてしまうと、たまにはルーナと一緒に並んで買い物とかをしたいと思ってしまった。



「ルーナ。私もルーナとお出かけするのとても嬉しい」



 隣に座るルーナの手をそっと握ってにこっと笑顔を向けると、ルーナは嬉しそうに感激してくれる。この人は本当に私のことが好きだなぁと胸にじんわりと溢れる感情。



 私には姉というものがいないけれど、ルーナのような人を姉だと思えると嬉しい気がする。ルドガー伯父様にはぜひ頑張っていただこう。



 そんな私とルーナのやり取りを見ていた男性組二人は、先ほどの機嫌の良さがどこに行ったのか、少しだけ複雑そうに顔を合わせていた。



 馬車を降りて石畳に足をつけると、結局興奮してしまった。



 王都に着いた当初は体調を崩していて、周りを見るのも億劫だったが実際に足をつけると知らない土地は興奮材料である。アルテンリヒトの街でも、結局は外に出る子とはなかったから。こうやって改めて他の土地に出るというのも大事なのだと実感した。



 私の体は小さいから、大人3人とは足の長さも歩幅も違う。だから、いつも通りリドクリフ様が私を抱き上げてくれた。ルーナのエスコートはルドガー伯父様が。



 今日のデートは一味違うのか、リドクリフ様の雰囲気もいつもと違って、いつも適当にひとつだけで結ばれている髪の毛が、今回も一つ結びだが、珍しくあみこみの三つ編みだった。そして、顔の雰囲気を変えるためにルドガー伯父様と同じ丸い眼鏡をかけていてとても新鮮だった。



 物珍しい表情をしていたのだろう。じっと横顔を見つめすぎたかもしれない。リドクリフ様が照れたように笑う。



「王都では私の姿絵とかが売られていてわかる人には分かるからさ」



 さながら芸能人だ。私は、その言葉に成程と頷いては同じように笑った。



 そうやって始まった下町散策は思っていた以上に楽しかった。



 色々なお店に回りながら、ブーゲンビリアの屋敷の人たちへのお土産を探す。前みたいに、殆どの使用人には日持ちするお菓子を選ぶ。可愛らしい缶に入って飾り付けられているクッキーを用意したり、使用人の控室に置けるように香りのいい紅茶を用意した。執事長と侍女長達には前回は万年筆を用意したので他の物を探す。家庭教師の先生たちにはブローチを買ったなぁと思い、他の物を選ぶ。アイゼンは何が嬉しいだろうかと、作業用の手袋を見たり、そうやって使ってくれる人たちの顔をひとりひとり思い出しながら購入していく買い物はとても充実していた。



「お嬢様は、ご自分の買い物は全然されないのですね」



 そんな私の背中を見ながら、ルーナが呆れたように零す。



「エミリアがリアラくらいの時にはもう、洋服やアクセサリーとかを強請っていたしフィレンカは本ばかりを買っていたから、他の人の物ばかり買うのはなんだか新鮮だよ」



 ルドガー伯父様の言葉に、少しだけ複雑だった。



「本はエステマリアの邸宅に沢山あるけれど、そうですよね。新しい情報が更新されているかもしれないですよね。ぜひ、あとて見てみたいです!でも、洋服とかアクセサリーとかはいらないです。どうせ、すぐに成長して服は入らなくなるし。今持っているもので事足りますから。価値の分からない内から高価な物をたくさん持っている必要もないので、アクセサリーはリドクリフ様たちが必要と感じた時に買うくらいにしておきます。将来は、もっとちゃんと必要な時とかを判断できるようになっていると思うので、お強請りはその時にします」



 それに、高価なものと言えばギターを買ってもらっているのだ。あれは、輸入品ということで随分と高かったようにも思える。だからこそ、そういうのを際限なく買う必要はないとも思っている。



「それに、ここは領内ではないのであまり多くお金を使いたいと思っていないです。観光は、羽目を外してなんぼですけど、やっぱり金巡りは自分の領でちゃんとしたいですから」



 ここで会話が切れる。私があまりにも子どもらしからない発言をするものだから、伯父様もルーナも少しだけ困ったように笑っている。折角のWデートなのだから楽しんでもらわなくては。きっと、ルドガー伯父様が私たちの滞在中にルーナとデートをしたいと思っていたのだろう。ルーナを連れ出す口実に私も城下町へと連れ出すことをリドクリフ様に提案しているはず。オジサマにとってはせっかくのチャンスなのだから。



 協力するくらい難しくないし、私にも前もって教えてくれればいいのにとは少し思った。



「ねぇ、伯父様、ルーナ。私、リドクリフ様と二人きりで街を回りたいからここで二手に分かれない?」



「えっ」



 突然の私からの提案に驚いたのは、ルーナでも伯父様でもなくてリドクリフ様だった。



 なんであなたが驚いているねん。



 じっとりと見つめる視線に焦ったリドクリフ様は、ほんのりと頬を染めながら、



「リアラとふたりきりで回りたいって言われて、嬉しかったから」



 へへへ、とリドクリフ様がする照れ笑いの顔面威力の高さに流石の私も目を丸くした。ルドガー伯父様とルーナを二人きりにしたい作戦だったが、そうやって嬉しそうに笑われてしまうと、こちらも被弾してしまうのだが。私は、熱くなった頬を、誤魔化すように、こほんと咳ばらいをして、改めて提案しているふたりに向き直る。



「いいかな?」



 私が、首を傾げると大抵ルーナは了承の返事を返すが、今回ばかりは心配した様子でなかなか返事をくれない。



「ルーナ嬢。私からもお願いするよ」



 リドクリフ様が最後の一押しをすれば、はぁっと諦めたように息を吐く。



「わかりました。王都はエステマリアとは違って人が多いので心配ですが、閣下にお願いいたします」



 綺麗に頭を下げるルーナの姿に私は感動してしまう。商家の家の娘だとは聞いたが、それでも所作は下級貴族にも引けを取らないくらいに綺麗だ。だから、私の侍女に採用されたのだろうが。



「ありがとう、ルーナ」


「お嬢様、楽しんできてください。そして、閣下に沢山お強請りして甘えてきてくださいね」



 改めて、再集合場所と時間を決めると私たちは二手に分かれて城下町散策をし始めた。



一口メモ:突然のふたりきりでのデートでルドガーはばちくそ緊張してます

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