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41.幼児の全力全開拒否

ここからは王都滞在のため3章に突入させていただきます。本当は3章は10歳に成長したリアラの話からスタート予定でしたが、王都に向かうことになったので話を切り替えていこうと思います。のんびりとした王都観光となってほしいです。

一応この物語全体、1話・3000文字未満で、会話多めに構成されている物語となっております。

読みやすかったり面白かったら評価・いいね・ブックマークといただけますと幸いです。

〇新章突入とのことで、今回は同日公開3本立てです。

これからも引き続きよろしくお願いします。



「いやぁあああぁぁぁぁだぁあぁぁぁぁぁ!!!リアぁぁぁぁぁああぁぁぁ!!いかないでぇぇえぇえぇぇぇぇ」



 フィレンカ叔母様の腕の中で海老反りを決めて、大絶賛エス様が全力全開拒否を行っている。嫌だ嫌だと可愛らしいお顔をびちゃびちゃに汚くして大号泣だ。これには、流石のフィレンカ叔母様も、ルベリオ様も、お付きの使用人たちも手に負えない。頑張ってよしよしと背中をあやすもいやいやとフィレンカ叔母様の胸に手を突っぱねて拒否され。ルベリオ様が頭を撫でて落ち着かせようとするも、嫌だと言って手をはたかれていた。流石の拒否の大きさにルベリオ様もクールな顔で落ち込んでいる。



 どうしてこんな事になっているかというと、遡ること昨晩になる。私とリドクリフ様の婚約の話を今の国王様、リドクリフ様のお兄様にお許しを貰いに行かなくてはならなくて、本日の朝には発つということは前もって知っていた。そこに、私をルーナがいるとはいえ、エミリア叔母様とマルエル叔父様がいるこの屋敷に一人置いておくのは危ないとのことで連れて行くということになったのだ。



 ユージェニー夫妻には、昨日の内にそのことを話していた。どうして、王都に行かなくてはいけないかのことの顛末も話すと、なにか思うことがあるのかおめでとうとは伝えてくれたが、表情があまりにも微妙だった。嬉しいような複雑なような。15歳になって貰い手がいなかったらうちにおいで、ともフィレンカ叔母様が言ってくれたので、将来の逃げ道を確保できた気分だ。



 そして、今日から王都に向かうために屋敷にいないのだと教えると、その場でエス様が大号泣。時折泣き疲れて泣かなくなるが、すぐに思い出すのか再び大号泣を繰り返し、昨晩は私に抱き着きながら結局は泣き疲れて寝落ちしていた。



 朝になっても、ぐずっていたエス様だったが、とうとう出発のタイミングで海老反り拒否だ。馬車乗り場に響くエス様の声は、耳の鼓膜にひどく響く。子どもの全力大号泣ってこんなにすごいんだなと思いながらフィレンカ叔母様のドレスの裾を引っ張る。



「エス様」



 そして、両腕を広げるとぐずぐずとはしているがびたっと泣き止んだ。フィレンカ叔母様がやっと泣き止んだエス様にほっとしながら、腕を広げる私にエス様を預ける。抱っこはできないので、そっと地面に下しながら抱っこを引き継ぐように抱きしめた。



「エス様。私はエス様と今回お会いできてとっても嬉しかったです。今回はこれでばいばいってなりますけど、私は消えたりしないので。ぜひ、私に会いにエステマリア領に来てください。私も、エス様へ会いにユージェニー領に行きますから。そしたら、一杯お歌を歌って、いっぱいお話して、いっぱい一緒にいましょう?ね」



 私の言葉を理解してくれたのかは分からない。それでも、自分の駄々が周りを困らせているというのを理解したのだろうか。3歳にしてはなかなかに聡い子だ。「あい」と涙声で返事をしてくれる彼の頭をよしよしと撫でると、エス様はやっと落ち着いた様子。



「私たちも、貴女に会えてよかったわ。ぜひ、エステマリア領には遊びに行かせていただくわね」


「我が領への招待状もぜひ送らせていただこう。君のその先見の明で少しだけ助言もいただけると嬉しいな」



 フィレンカ叔母様が私の頬に口づけを送り、ルベリオ様はエス様ごと私を抱きしめてくれる。そして、離れる際には私だけを器用に開放をしてエス様だけがルベリオ様の腕に回収される。同時に後ろからひょいっと抱き上げられては、今度は私はリドクリフ様の腕の中に納まった。



「あまり他の男とひっつかないこと」


――5歳児に向かって何を言ってんだこのおっさんは


「リド様、それはさすがの私も引くわ」



 フィレンカ叔母様が扇子を広げて口許を隠す。その視線はドン引きである。フィレンカ叔母様でもそのような顔をするのかと思うと、ついついふっと吹き出してしまった。



「それでは、またエステマリア領への招待状を送らせていただきますわね。フィレンカ叔母様、ルベリオ様、エス様。海風の気持ちい時期にぜひお越しください」



 私は、最後に笑顔を向けて、大好きになったユージェニー一家に手を振りながら、リドクリフ様に抱えられて馬車へと乗り込んだ。




『今回の王都行きは随分と大所帯なのですね』



 馬車に入ってしまうと、私は言語を途端にスぺニア語に切り替える。ここ数日間まともに使っていないから、少しだけ呂律が回りづらい。



『私たちのほかに、アルテンリヒト侯爵も来るからね。使用人も含めるとそれなりになるんじゃないかな』



 リドクリフ様も、切り替えて私に合わせてスぺニア語にしてくれる。



 私は、今乗っている大型の馬車から後ろ、ずらりと並んでいる馬車たちを確認しながら、成程ねぇっと納得した。



「なんだ、ここは。エスぺニアに来てる気分になるじゃないか」



 そんなやり取りをしている最中に、馬車の扉が開いてアーレン伯父様が乗り込んできた。私もリドクリフ様も驚いて目を丸くすると、なぜそんな顔をしているのかと言わんばかりにアーレン伯父様は首を傾げる。



『婚約者同士になるとはいえ、5歳のリアラに不埒なことをしないかをしっかりと見張っていないといけないからな』



 ふんっとふんぞり返る様に腕を組んで向かいの席に座りながら、私を膝の上にのせているリドクリフ様を睨みつけていた。



 そしてアーレン伯父様も、私たちに合わせて言語を切り替えてくれる。



『流石にそれはまだしませんよ……まぁ、可愛いくて愛でたくはなりますが、流石に変態ではないので……』


『どうだろうか。リアラ、ソングライン卿が嫌になったら、いつでも息子たちを婿に出すから言いなさい。なんなら、君の年齢に合わせてこれから作ることだってできる。私のところが不満なら、フィレンカやエイマーに相談だってするからな』


『やめてくださいよ、リアラが私に不満だというような雰囲気出すのは。どう見たって、アルテンリヒト卿が不満たらたらじゃないですか』



 そんな男たちの応酬を耳にいれてはいるが、私は返事も出来ずに、いつの間にか馬車はアルテンリヒト侯爵邸を出発していた。



一口メモ:実は、婚約話が舞い込んできてしまったため、部屋にソファを追加してもらうっていう話がすっかりと頭の中から抜けている

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