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39.15歳差のラブソング

 


「分かった。薬師を数人手配しよう」


「あの。我儘で申し訳ないのですが、あまり仕事がもらえていない状態の人や、研究を集中的にしたい人とか、経験を積みたい人たちが嬉しいです」



 ベテランは重宝されるだろう。閣下の人脈でベテランが一人来ることは分かっている。その人を中心にチームを作ってぜひ領民の特産品につながるように頑張ってもらいたい。



 アーレン伯父様とスヴェンダお爺様は私の言葉に、分かったと数回頷いては手配しておくとつなげてくれる。これで、ハーブティーの話もひと区切りついたのか、美味しそうにミントティーを口にしていた。



 やっと難しい話も落ち着いので、私も口の中をすっきりとさせたいから私もルーナの淹れてくれたハーブティーに口をつけた。



「この部屋に入った時から気になっていたのだがいいかね」



 ここだけの話で、雑談の雰囲気でアーレン伯父様が切り出してきた。私は、その話の軽さからハーブティーのカップを口につけたまま視線をそちらに向ける。



「君たちのその格好は示し合わせなのかね」


――何を言っているんだこのおっさん



 真剣にそう突っ込んでしまいそうになった。飲み物を口に含んだ状態でよかった。



 しかし、スヴェンダお爺様にアーレン伯父様、閣下はそんな軽いノリではないらしい。カップをソーサーに戻してじっと何かを伺っているようだ。大人の人たちにしかわからない世界なのだろうか。ハーブティーを用意してもらう際に来てもらってから、私の世話をしてくれているルーナにちらりと視線を送ると、ルーナは私から視線をわざとはずした。



「アルテンリヒト侯爵」



 それだけでピシッと空気が張り詰める。さっきまで、アーレン殿と呼んでいた閣下がアルテンリヒト侯爵と正式に呼ぶものだから、今までの話よりももっと固い話をするのか。私も、知らぬふりは無理だと判断するとカップをソーサーにかちりと戻すと、何の話をするか理解していないが背筋を伸ばした。



「リアラ嬢との婚約についてお許しをいただけますか」


――は?


「君とリアラでは15歳も差があり、リアラはまだ5歳だぞ」



 すかさずスヴェンダお爺様が反論する。そうだそうだ。そこで、私を女として見ていると言ったらロリコン確定だぞ。



「フィリップの件で君が気を病んでいたのは知っている。リアラの生死についても、君が便宜を図っていたのは記憶に新しい。リアラを守るために、何もそこまで君が身を粉になる必要はないと思うんだが。なんなら、私の息子たちと結婚する方がまだ現実的だ」



 アンドリュー様が13歳だから、私とは8歳歳の差。それでも、13歳から見た5歳ってかなり幼いと思われる。だからと言って、20歳と5歳の差を考えると、まだ13歳と5歳の婚約のほうが現実的だ。



 それでも閣下は譲らないのか、きゅっと唇を結んでまっすぐとアーレン伯父様を見つめている。何が彼をそんなに追いつめているのだろうか。そう思った時にふと思い出したのがエミリア叔母様の件だ。婚約者がいるというのに、閣下に媚びを売っているその姿を思い浮かべてしまうと流石に何か防波堤になるものが必要なのかもしれないとさっき話していた。



 その時に、同い年の女性ではなくて随分と年が離れた女という性別の生き物が必要なのだと結論付けたではないか。その時、私みたいな年の離れた存在がいいのでは、と小さく口にしたらしい。――正確には私とかと呟いただけなんだが――それの結果がこの流れになっているのであれば、私も援護射撃をした方がいいだろう。



「アーレン伯父様」



 私が背筋を伸ばしてまっすぐとすると、今度は私に視線が集まった。



「こう、身内を売るようであまりこういうことは言いたくはありませんが、エミリア叔母様の行動は異状です。確かに閣下の性格とこの顔面、アドバンテージが女性の気を狂わせているのは分かります。ですが、お顔は生まれ持ってのもの、性格は育ちの良さの現れなので、それを言ってしまえば酷でしょう。私はまだ5歳で閣下は20歳で、閣下は結婚を視野に入れたくても、エミリア叔母様みたいな淑女が、閣下の気持ちを無視してずかずかと閣下を傷つけてしまえば、そう簡単に女性に心を開くのも難しいかと思うのです。その上に、閣下と年齢が近い相手程それはもう、襲い来る獣のようにがっつがっつとしてらっしゃるのが目に見えて想像できます。このままでは女性不信になって、それこそ子どもが生まれないという問題が発生してしまう」



 こんな最高な遺伝子を後世に残しておかないというのは罪だ。ぜひ、閣下の子どもは見てみたい。絶対に美形だろう。



「なので、私リアラが名乗り上げました。15歳差なので、閣下は女として私を見ることなく接することが出来ます。それでも私は見紛うことなく女なので、婚約だってできるのです。私のこの立場が閣下の為の防波堤になるのであれば、閣下が結婚したいと心から思える相手が出来るまでで問題ありません。婚約の許しはいただけませんか」



 5歳児にここまで言われてしまえば、アルテンリヒト侯爵でもぐうの音が出なかった。



 最後の抵抗として、婚約解消した場合、私の評判に傷がつきあまり良い縁談が来ないのではと言われたが、そもそも両親の件で私の評判なんて社交界でも領民の間でも地の底に転がっている。そこに更に傷がついたところでどうってことない。



 まぁ、これからの尻拭いという私の行いで、信頼が回復したとして。婚約解消の件で傷がつき、まともな結婚話が来ず、結婚が難しいと判断になった場合、その時は従兄様達の誰かにエステマリア領をお譲りします、と言い切れば、アーレン伯父様は、すごく悲しそうな顔で、「リアラが15歳になるまでに閣下が結婚をしなければ、その時はきちんと籍を入れることだ」と、渋々了承を得たのだ。



 これではまるで大々的な告白イベントである。5歳児が決断した大イベントで、この短い語らいだけで一曲出来そうだ。



 タイトルは――15歳差のラブソングがいいだろうか。



アルテンリヒト家の人たち


祖父:スヴェンダ

祖母:ミステリア→母親は王家の末姫であった。王家の血筋


長男:アーレン

次男:ルドガー

三男:フィリップ(主人公の父)

長女:エイマー

四男:マルエル

次女:フィレンカ

三女:エミリア (実はまだ17歳で王都で学生をしているが…)

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