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38.ハーブティーと特産

2章もクライマックスとなりますので、本日は3話投稿となります。

宜しくお願いいたします。



 話に白熱して、すっかりと喉が渇いたが出されている紅茶には私は手を出せなかった。どうしても、カフェインが気になる。紅茶に入っているカフェインって珈琲の倍だって聞いたこともあるのだ。子ども用に、薄めにしてはくれているだろうが、それでも気になってしまう。



「リアラは飲まないのかい?」



 それに気が付いたのは、アーレン伯父様だ。咎めているわけではないのだが、気になるのだろう。すっかり冷えたカップに私は視線を下ろして小さく頷く。



「紅茶に入っている成分が、私たち幼い子どもにあまりいい成分がないって聞いたことがありまして……」



 でも、失礼だよね。折角用意してくれたのだから。前世の私自身は紅茶が好きだったから今これを飲んでもおいしく頂けると思う。それに、それを毎日飲んでいるわけではないのだ。時折飲む分にはいいだろう。私は、冷えたカップに手を伸ばした時だった。横からすっと、それを取り上げる手。



「申し訳ないのですが、お水に変更してもらっていいかな」



 閣下が執事に、私のカップを差し出すと、控えていた執事が丁寧にそれを受け取って部屋を後にした。



「すまないね、気が利かなかったようだ」



 アーレン伯父様が謝罪を述べてくるので、私は慌てて首を横に振った。



「あ、いえ。私もお伝えしていなかったので。普段は、私の侍女が作ってくれるハーブティーを口にしているんです。すっきりとした味わいなので、頭もすぅっと晴れるんです。朝や勉強をしている時に飲むとすごくすっきりしていいんですよ。あと、夜は寝られるように、もう少し甘めの香りがするハーブティーを口にしています」



 私は、アーレン伯父様の落ちた気分を上げるように、努めて明るい声で伝えるとアーレン伯父様は興味津々にほぉーっと声を出す。



「それって、今飲めたりするのかな」



 にこにこと笑顔を向けてくる伯父様相手に、私は消える声で返事をするしかなかった。



「ほぉ、これはまた……」



 権力には逆らえません。私よりも、アーレン伯父様やスヴェンダお爺様がここの家では最高権力者であり、私の領となる予定のエステマリア領の中でも彼らがトップだ。逆らうなんて無理。



 ルーナを呼んで、さっそくにハーブティーを作ってもらい、伯父様たちに飲んでもらうとこれまた好感触である。さっきルドガー伯父様も随分と気に入っていたようにも思えるが、普段机に向かって仕事する人たちにとっては結構気に入られるんだなぁ。ミントは。と思いながら、私も入れてもらったミントティーを口にする。すっきりとした味わいが、子どもには不人気を出すが、大人たちは逆にこのすっきりさがいいのだろうか。



 一応配合で、きついハーブの香りを抑えるようにしてくれているから、子ども舌の私も満足に飲める。



 この滞在中は、その場で配合はできないので、私が滞在する期間分しか持ってきていないが、これだけ身内にがばがば飲まれてしまうと、滞在期間中足りるのだろうかと少しだけ不安になった。



「これは売っているのかい?」


「いえ、これは伯爵邸で配合してますから、私が飲みたくて飲んでいるようなものなので、売ったりとかはしていないです」


「調合師でもいるのか?」


「調合師や薬師はいません。ただ、薬師志望の商家の少年とうちで働いている庭師が頑張ってくれました。もちろん、私が気に入るか気に入らないかがあるので、試飲は相当しましたが」



 何せ、子どもの舌なのだ。ミントティーは香りはいいが、舌に乗る独特なスッキリしすぎる香りが強すぎると飲めない。更には、本を積み上げて調べ、体にもよい成分同士で喧嘩しないような配合で考えて作られた、エルガーオリジナルのものだ。



「民間に下すときは、配合されたものではなくレシピを売りますよ。意外と、自生しているものが多いのでエステマリア領では簡単に作れます」



 前世薬膳という考えがあった。私は勉強していないので、名前しか知らないし中身は全然理解していないが、体に良いものを食事として取り入れる。勿論、季節に合った旬というものが存在するので、旬を意識するのと同時に、効能などを意識して薬効を上げる。それを前提に話して、私が依頼したのは紅茶に変わる頭をすっきりとさせるお茶と、寝るときにリラックスすることが出来るお茶が飲みたいというものだ。



 それを叶えた代物のひとつがこれで、実際にこれを飲むと気分までもスッキリする。香りというのは気分が落ちた時にこそ体に利く。



「自生しているもので作れるのか……」


「まぁ、はい。一応、近くの林とかに生えているのを確認していますね」



 それを聞いたアーレン伯父様と、スヴェンダお爺様が真剣な顔でカップを眺めている。色は、紅茶と違って透き通った緑色だ。緑茶といえば聞こえはいいが、見慣れない人には得体の知れない色合いに抵抗感が出そうだ。ハーブティーによっては黄色に近い黄緑色になったりもするから、貴族にバカ受けするとも思えない。



 ああ、でも、ジャスミンティーとか香りが高くて見た目が華やかなものは喜ばれそうだ。それでも、堕胎成分が有名なものでもあるので、妊娠中や子どもを産みたい女の人はできるだけ控えるべきだろう。



――そもそも、ジャスミンってどこから入ってくるんだろう。ちょっと調べてみようかな。


「――う……ラ嬢……アラ嬢……リアラッ」



 思考に没頭していれば、目の前で閣下が私の名前を呼んでびっくりした。普段は嬢をつけるのだが、呼び捨てだ。



 慌ててハッと顔を上げれば、どこか不安そうにこちらを見つめている身内二人に集中しすぎたと頭を下げた。



「ハーブティー自体は、珍しいものではない。それは、基本飲むハーブティーの香りが随分と強いから好まれないことが多いのだ。しかし逆にそれを逆手にとって、領全体で生産し特産品にするのはどうだろうか。こんなに飲みやすいハーブティーは初めて口にした。売り出してくれるなら私も欲しいくらいだ」



 スヴェンダお爺様が香りを嗅いでは大きく頷きながら好んで飲む様子に、なるほど、その手があったかと頷いた。それに、これは微々たるものだが薬に近いものになる時だってある。一応、閣下が知り合いの薬師を教員の役割も含めて呼ぶが、事業とするならもっと欲しい。



「あの……それなら、薬師を、手配してもらっていいですか」



 きっとそこまで多くない職種の人たちだ。雇うとなると、お金もコネも必要だろう。お金は捻出しないとならないが、コネはここで使ってもいい気がする。それに、薬師が多ければ領民も頼れるだろう。更に、領民の中から薬師になりたいと思う人だって増えるのは悪いことではない。工場化するのなら、それを監修する人たちだって必要だ。機械的に作業をするのではなく、内容を理解してもらいながらしてもらうのも大事だろう。そうすれば、領民の知能水準も上がる気がする。


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