36.リゾート開拓案①
切りがいいので、本日は2話投稿です
あれから執事が時間なのでと、部屋に向かいが来てくれた。そして、通されたのは昨日最初に入った部屋だった。
改めてぐるりと部屋を一周すると、昨日は緊張で見れていなかったけどなかなかに広い。普段は会議室なのだろうか。大きな楕円形のテーブルに、それに合わせて椅子がずらっと並んでいる。真ん中に存在するそのテーブルとイスという存在がとても圧巻だ。
私は、執事に促されて、主賓席の隣に腰を掛けた。その隣に閣下が。そして更にその隣にハルシュタイン氏が腰を掛けた時だ。タイミングを見計らったように、アーレン伯父様と、スヴェンダお爺様が入室してきた。
「少し遅れてしまったかな」
「いえ、ちょうど私たちも来たところです」
私の返事に、アーレン伯父様はにこっと笑みを向けて応えてくれると、主賓席に腰を掛ける。そして、後ろから入ってきたスヴェンダお爺様は手に持ってきた大きい用紙を広いテーブルに広げた。それは拡大された地図だった。海に面したところから港となっているところから扇状に広がる街の形。そして、地図上の右半部から端に行くと砂浜になって、家屋はちらほらと見えるが、ほとんどが森となって閑散としている。その地図の街を、リアラは生で見たことがある。
「ライラックの街ですか」
「正確に言うなら、ライラックを含んだ、エステマリア領だな。もうちょっと内陸にブーゲンビリアがあるが、今回はリゾート化を考えていると聞いたからこっち側だけを持ってきた」
私は、行儀が悪いが椅子の上に両膝をついてテーブルの上に乗り出す。こんなに大きい地図で領地を見ることはめったにない。折角なのだ、俯瞰してよく見たい。
ライラックの周辺を地図として改めて見ると、開拓の余地がまだまだありそうな広さだった。船着き場となっているところは、地図から見て左側にできており、そこから発展してライラックの街がある。しかし、地に足をつけた時は広く感じた街も、地図上にすると思っているよりは小さい。街の外に出れば牧場となっていたり、畑になっていたりと、ちらほらと私有地となっているが、それでもまだ開拓できそうだ。そして、地図の右側は一度森で区切って砂浜になっている。だが、人がちらほらと住んでいるだけで、殆ど寂しい状態だ。
「砂浜側は森が多くてあまり人が住んでいるようには見えないですね。もしかして、少し標高がたかったりしますか」
「いや、ここら辺は平坦としているがもう少し奥になると高台になっているはずだよ」
海が見える景色って気持ちがいいけど、津波とかが怖い。前世でも、津波に飲まれて死んでいった人、行方不明になった人が多数出た災害が記憶に深く刻まれている。あの日から魔法の言葉が流れていたのが記憶から出てくる。満面の笑顔でぽぽぽぽーんと言う動物たちの笑顔が自然と出てきたので、洗脳される前に追い払うように静かに首を横に振る。
「高台の高い位置を一等地としましょう」
私が指さしたのは、砂浜から随分と離れた高台のところだ。前世、海外での一等地は景色がいいことで地価が上がった。夕日が見える、海が見える、それだけで高級住宅になっていたはず。
「ほぉ……?」
「あと、別途で住民の避難場所として、高台にひとつエステマリア領の大きな建物を作っておいた方がいいかもしれませんね」
「それはなぜ」
「災害対策ですよ。地震とか、嵐とか、海はとても荒れます。その時に怖いのは津波です。海は、普段穏やかな顔をしていますが、獰猛に牙をむいてきたときは、私たちでは太刀打ちできません。人間、数十センチの水嵩でも溺れるって聞いたことがあります。大人でも脛のあたりでもう溺れるらしいです。それなのに、人間の数十倍の高さで波が襲ってきたらどうですか。波はあっという間に街を襲って、村を襲って、ブーゲンビリアまで届くことだってあります。まだ、ブーゲンビリアは高い位置にあるので、逃げ場としてはいいのですが、危ないのはライラックに暮らしている人々です。その人たちの逃げ場として、高台に避難所をつくるのは大事だと思います」
自然災害の前では人間は無力だ。どれだけ訓練してきても、どれだけ対策してきても結局は救える命はすべてではない。それでも、0にしないためにも今のうちにいろいろと対策をしなくてはいけないのもあるだろう。
「なので、高台は一等地です。理由としてはいくつか。まず、先ほどお伝えしました、津波が来た時に一番被害を食らわないのが高台であること。2つ目、水位があがって下に屋敷などがあればそれは水が浸入してきてしまうのですが、高い位置にある建物はまずそれがないでしょう。そして、3つ目。景色に付加価値をつけます。ここは、港もないので前面に広がる海が見えますよね。それだけで価値がありますが、今現在、そこまで建物もないので、あえてここだけ条例を敷いて建物の見た目も拘って建てれば、見栄えもとてもいいでしょう。そういう景色に付加価値をつけることで、ここに別荘を建てる貴族たちへ売り出すんです。来ることでしか見られない、このエステマリア領の海でしか見れない名物」
思い出したのは、前世のパソコンデスクのスクリーンで流れる世界の景色シリーズだ。どこの国かは分からないが、石造りで出来た白い建物が、海岸沿いにずらっと並んだ綺麗な景色。青い海のコントラストが見事で、行ってみたい欲が掻き立てられる。
また、もうひとつ思い浮かんだのは、赤レンガの倉庫だ。赤レンガの倉庫をショッピングモールにして、景色を保ちながら、購買威力を注ぐ。デートスポットとしてもとてもいい観光名所を思い出せば、一層のこと、ライラックではそれをしてしまおうかなんて一人で妄想を走らせてふと気が付く。
誰も意見が返ってこないということに。
一口メモ:海が見える高台に庭付きプール付きの家でするBBQは最高に優雅で最高に美味しかったです。正直に、金持ち過ぎてがちがちで何を食べたのか味なんて覚えていないですが




