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35.ルドガーが侯爵邸をあとにして王都へ向かったのはあれから何分後でしょう

いつも、読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク、評価とても嬉しく思います。今のところ、毎日更新が出来るのは、このように読んでいただいている皆様がいてこそです。これからも励みに頑張っていきたいと思います。



「いいんじゃない?リアラくらいしっかりしているなら行く必要もないでしょう」


 さらっとルドガー伯父様が応える。


 どうせ、貴族の女子が学校に入学してくるのは、ほとんどが結婚相手を探すためらしい。既に、結婚が決まっている女子は通わないのだとか。それに、だいたいの女子は学校にいる間に結婚して卒業もせずにフェードアウトするのだそうだ。男性側も、学生結婚が主流で、その代表例がフィレンカ叔母様とルベリオ様だと教えてくれた。



「リアラなら入学したら、すぐに婚約者になりたいって男がうじゃうじゃ群がりそうだから行かないほうがいいよ。フィリップたちの話は醜聞として広がっていて、言いたいこと言っているくせに、エステマリア領という土地を取り込もうと動く貴族は多くいる。リアラにとっていい目を見ないのは手に取ってわかるからね。伯父さんとしては、行かないことに賛成だよ」



 ルドガー伯父様はあっさりと、そういい切ると、湯気が出なくなったティーカップに口をつけて、その爽やかな香りに舌鼓を打つ。どうやらお気に召したのか、これはどこかで買えるかな?とルーナに交渉をしている。



「でも、魔法の授業って学校でしか習えないって聞いたのですけど」


「ん?そんなの、家庭教師を呼べばいいよ。僕がいい奴紹介しておくね。強い魔法を使えるんだけどさぁ、性格に難があって、手に余っているんだ。そいつ、研究できる場所を用意してあげればだいたいは落ち着くんだろうけど、上の連中がそうもいかなくてさ。それでしょっちゅう衝突してるって感じ。リアラなら上手く手綱握ってくれそうだからエステマリア領に行くように伝えておくね」



 なんてことはないと言わんばかりに軽いノリで返ってくる。だが、学校に行くことで新しい人脈が手に入るかもしれない。広がるものをあえて閉じ込めておくのも勿体ないようにも思える。エステマリア領から出たくないのは本心だけど、だからって発展のきっかけになることを潰すのもいかがなものだろうか。何せ私は、唯一の跡取りなのだから。



 ルドガー伯父様の提案にうーんっと考え込んでしまった私を見て、向かいの席で苦笑を漏らしている。ぬるくなったハーブティーを最後一気に飲み干すと、ルドガー伯父様は席を立った。私の近くにきて、視線を合わせてくる。



「まあ、まだ10年後の話だし、今から深く考える必要もないと思う。でも、リアラは努力家で発想力も高い。両親のいいところ取りをしているから、きっと美しく育つだろう。容姿がいいのも、かなりのステータスだから、リアラを狙う相手は沢山いると思うんだ。そういうのを追い払うには権力が必要になってくる。昨日は、冗談に近い話で終わってしまったけど、君は早めに婚約者を決めた方がいい。それも、周りをあっと言わせて押し黙らせるくらいの家門の人を。それこそ、王家のご子息様だったり、アルテンリヒト家と同じ侯爵家だったり、上位貴族が望ましいね。そうすると、やっかみはすごいだろうけど、君に直接害をなそうとする輩は出ないんじゃないかな」



 普段はどこかふざけているのかなって思えるような対応をしているルドガー伯父様の、真剣な言葉に私も真剣な顔で受け取った。私は、伯父様の言葉に真摯に頷くと、ルドガー伯父様はまたいつもの、どこか気が抜ける笑顔を浮かべた。



 ルドガー伯父様は、話しきって満足したのか、最後に大きな手で私の頭を撫でると、もう時間だからと腰を上げる。



「今日からリドクリフ様の隣室にはスティルス殿が移動してくるので、僕よりも防御力は高いかと思いますよ。それでは、ハーブティー美味しかったです。販路が決まったら教えてください。いい値で購入させてもらうので」



 ひらひらと片手を振りながら、退散しようと部屋の扉を開くと廊下では、ものすごい怒声が響いていた。


 どうやら、エイマー伯母様がエミリア叔母様を説教しているらしい。なんとも、迫力ある声だ。部屋にいる私たちでさえ縮み上がってしまう。



「ああー、うん。もう少しここにいようかな」



 それからルドガー伯父様が王城に出発したのは30分後のことである。




 ルドガー伯父様が王都に出発したあと、私と閣下は11時からのアーレン伯父様たちとの会合のための準備に忙しかった。ルーナに手伝ってもらって、昨晩のパーティーほど派手ではないが、紺色のシックなドレスを着る。髪の毛もシンプルにまとめては、青いリボンを結ぶ。高い位置で一つ結びにしてもらってポニーテールは髪が揺れて心が躍る。



 そして、迎えが来たのか部屋にノック音が響くと顔を出したのは閣下だった。夜も朝も隣室に続いている扉から顔を出していたので、普通に部屋の出入り口から顔を出すのを新鮮な気分になる。朝食時の服装とは違って、こちらもしっかりとシックに決めている。前髪をあげ、長い髪を一つにまとめて青いリボンでまとめていた。更に、同じ紺色のスーツを着こなしており、普段柔らかい雰囲気な閣下であるが、今日は随分と引き締まって見えた。



 昨晩の正装も、流石元王子様であると思えるくらいにかっこよかったが、仕事モードの閣下も十分にかっこいい。横には、ハルシュタイン氏も同じようにしっかりと決めて立っていた。昨日は、部屋で分かれてからあまり顔を合わせるタイミングがなかったので、今日改めて顔を合わせると、随分と久しぶりな感じ。このふたりがセットだと、どうしてかとても落ち着く。



 閣下は、私の準備が完璧に終わっていると分かり、先ほどまで見せていたきりっとした表情から、いつもの柔らかい笑顔を浮かべると、一瞬で雰囲気がいつもの閣下になった。


一口メモ:答えは30分後

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