30.パーティーでお決まりのダンスの時間
GWがおわりましたね。一気に更新しておりましたが、ここまでとなります。以降は、のんびり更新となります。面白いと思いましたら評価お願いします。
マルエル叔父様の後ろからひょっこりと顔を出すルドガー伯父様に、どうしてか心の底から安心した。
「ルドガー兄さま」
「やっと可愛らしい天使が顔を見せてくれたんだ。僕だってちゃんと挨拶したいよ」
「そういう割には服装がパーティー用ではないではないですが」
白けた視線を向けられても、ルドガー伯父様は動じなかった。ワイングラスに入っている葡萄色の飲み物をくるくるとまわしながら、マルエル叔父様ににこにこと笑顔を向けている。その表情も引く気がないと捉えたのか、諦めたようにマルエル叔父様が最期に挨拶を向けて退散していった。
交代してルドガー伯父様が私の前に来ると、手に持っていたワイングラスを私に渡してくれた。
「リアラ、顔色がとても悪いよ。ごめんね、マルエルはフィリップをたいそう嫌っているからその悪意がそのまま向けられてしまったようだね。良かったらこれ飲んで」
渡されたワイングラスからは酒気がしない。むしろ甘い香りが香って少し落ち着く。それを受け取って口をつければ、広がる葡萄ジュースの香り。舌に転がる甘さがとても落ち着いた。
「ルドガー伯父様、心を砕いていただき本当にありがとうございます」
ほぉっと落ち着いた表情を見せると、それに安心したようにルドガー伯父様は笑った。
「ねぇ、リドクリフ様。僕もリアラを抱っこしたいんだけど」
そして意識を閣下に向けられる。閣下はルドガー伯父様の言葉にぴしっと表情が強張るのが分かった。同時に、閣下の腕に力が入っていく。そういえば、会場に来る前からずっと抱き上げてもらっている。挨拶の時に一度下ろしてもらったがそれだけだ。流石に腕が疲れてもおかしくはないだろう。私は、閣下を見上げながら労わるように腕をさする。
「閣下、私もルドガー伯父様とゆっくりお話しがしたいので、交代してもらってもいいですか?」
私が言うや否やとたんに見せる絶望したような表情。なんで、労わったらそんなに嫌そうな顔をするのか。
「リド様、その顔はアウトですわ」
くすくすと笑いながらフィレンカ叔母様がルベリオ様とエス様を伴って現れた。どうしてか、このメンバーを前にするととても安心する。
「閣下、今は私が一番信頼できる方たちがこうやって集まってくださっていますから大丈夫ですよ。ずっと気にされて私を抱えてくださっていたんですよね。閣下も遊びに来たわけではないでしょ。せっかく普段会えない方たちがいらっしゃるということもあります。閣下も楽しんでください。私は、絶対にこの方たちから離れることはありませんから」
私が諭すような言葉でそう告げると、閣下はとうとう、渋々、ルドガー伯父様に私をサーブした。私は、素直にルドガー伯父様の腕の中に落ち着くと、社交なので渋々とその場から離れていく。どうやら、アーレン伯父様とお話をしなければならないことが別途あったらしい。私をルドガー伯父様に託すと、ハルシュタイン氏と合流してアーレン伯父様のところへと向かったようだ。
「はぁああぁぁぁぁ、とんでもなく可愛い。やっぱり、女の子は最高だね」
立ち去った後に、ルドガー伯父様が私の頬に頬を押し付けてすりすりしだす。童顔で体毛がすくないのか、髭がなくてチクチクしないが、暑苦しい。更に、私にすり寄るその姿を、白い目で見るフィレンカ叔母様は、実の兄にドン引きしている様子。
「君は本当に、頭はいいのにそういうところ残念だな」
ルベリオ様が呆れたように告げると、ぱっとルドガー伯父様が私から離れる。
「子どもたちは愛情いっぱいに育つのが一番だよ。それがたとえ犯罪者の子どもでもさ。子どもと親は切って離す内容だと僕も思うからね」
私の頭を優しく撫でるその掌は優しくて、とても労わってくれている。犯罪者の子どもということで少しだけ過敏に反応したが、ルドガー伯父様の掌は私の心をほぐしてくれるので、先ほどのマルエル叔父様のように気にはならなかった。
「私は父の悪行をただ他人から聞かされただけですが、第三から聞いた話でも、大変恥ずかしく。私が彼の娘ということがとてつもなく羞恥でしかないです。関係者の方々にはソングライン閣下を始め王家の方、アルテンリヒトの方々には本当に大変ご迷惑をおかけして……」
私が、父と母の悪行を思い出し、顔を赤らめて申し訳なくもにょもにょと告げると、ルドガー伯父様が小さく笑った。
「いいよ。もう、5年も昔の話だし。マルエルみたいに、根に持っている人はちらほらといるけど、過去に意識を持っても意味がない。君が恥ずかしいと思ってくれて、迷惑をかけたとそういってくれるだけでも、僕たち家族は君を許せる」
その言葉に顔をあげると、優しい笑みを向けてくれるルドガー伯父様と、穏やかな顔をしているフィレンカ叔母様にとても助けられている。ほっと胸をなでおろしたと同時に、
「リア―」
と私に手を伸ばしてくれるエス様。それに手を伸ばすとぎゅっと握ってくれた。
「リアはいい子いい子だから、大丈夫だよ」
と満面の笑顔を向けられたらノックダウン。可愛いがゲシュタルト崩壊して天を仰ぎたくなるのをこらえていたが、私を抱えていたルドガー伯父様は被弾したらしく、しっかりと天を仰いでくれた。
そんなほのぼのとした空気の折だった、ホールに響いていた楽曲が変わった。曲が3拍子のものになったのだ。どうやら大人たちはダンスの時間らしい。
「フィレンカとルベリオ様は踊ってきなよ。僕が、エストニック様とリアラを見ているからさ」
ルドガー伯父様がそう提案すると、ユージェニーご夫妻は少しだけ照れたように笑った。何だかんだで結局信頼出来るのか、夫妻はルドガー伯父様に甘えることにした。ルベリオ様がエス様を、床に丁寧に下ろして、ルドガー伯父様から絶対に離れないようにと伝える。元気よく返事を返したエス様に、ルベリオ様は大きく頷くと、フィレンカ叔母様の手をとってダンスホールの方へ。
「ルドガー伯父様、私を下ろしていただいてもよろしいですか?」
私は、そんなおしどり夫婦の背中を見つめた後に、ふと思い出したように告げると、ルドガー伯父様は素直に私を床へと下ろしてくれた。床に足をつけた私は、そのままエス様の前に来ると両手をとる。
「エス様、私と踊っていただけませんか」
「……!?で、でも、僕。お父しゃまとお母しゃまみたいに踊れない……」
「いいんですよ。こうやって手をつないだ状態で、曲に合わせて体を揺らすだけで」
そういって、私はエス様の両手を持ったまま、足を左右に開くだけの簡単なステップをする。それを真似をするようにエス様も同じ方向にステップを踏んでくれる。最初は足がもつれないようにと下向いていたエス様も、要領をすぐに掴んだのか、私と顔を合わせて楽しそうに足でリズムを取り始める。時折、大人の真似をするように、その場でくるくると回ったりするが、基本は左右に揺れるステップだ。それだけで、楽しいのかエス様の可愛らしいふくふくとしている頬っぺたが赤く染まって緩まっている。
――可愛い
「可愛すぎる。ここは天国かな」
私の心の声が漏れたのかな、と思ったが。保護者としてここで見守っていたルドガー伯父様が心の底から感動して涙していた。
この人、本当に危ない人じゃないよね。
一口メモ:マルエル編
名前:マルエル・アルテンリヒト
性別:男
年齢:25歳
男性兄弟で一番下。兄たちを尊敬し、アルテンリヒト家を誇りに思っていたため、フィリップの行いに大変嫌悪感を抱いている。5年たった今でも、その感情は消せずにおり、リアラを素直に認められない。
他の兄弟たちには素直で、利発。普段はアーレンの補佐をしている




