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25.楽しいお茶会と忍び寄る毒の花



「お見苦しいところを大変失礼いたしました」



 やっと顔のほてりが収まったところで、私はギターを綺麗に整備してケースにしまった。


 今は、ユージェニー夫妻の部屋でお茶を用意してもらったので、私と閣下も含めて、5人でテーブルを囲っている。



 そして、私は、改めて、部屋に顔を出してくれたユージェニー夫妻に頭を下げると、フィレンカ叔母様は気にしなくていいのよーっとおっとりとした言葉で投げてくれ、ルベリオ様はこちらこそ勝手に覗いて申し訳ないと頭を下げてくれた。



「それにしても先ほどの楽器は初めて見たわ。なんていうものなの?」


「アコースティックギターといいます。海を渡って隣国のエスぺニア王国発祥の楽器です。ライラックの港街にて、偶然輸入していた楽器店がありましたのでそこで手に入れました」



 私は、ルーナの準備してくれたお茶を口にしながら、フィレンカ叔母様の言葉に返事した。



 フィレンカ叔母様はそうなの、と言っておっとりとした様子で紅茶に口をつける。先ほど一族の集まりで見せた少しだけ鋭い視線を向けられていたから厳しい人かと思ったが、実際に相対するとそんなことはなかった。見た目通りのおっとりとした雰囲気の方だ。それは漂う所作から感じ取れる。この方は、見た目通りの可愛らしい人なのだろう。それに甲斐甲斐しく世話をしているルベリオ様。一緒に用意されているお菓子を、彼女好みだろうと取り分けているし、エス様には零さないようにと補助をしている。なんてできる人なのだろうという感動した感想だ。フィレンカ叔母様のことをとても大切にしているのが傍から見てもとても実感する。



「楽器を弾きながら歌うのね。オペラやそういうのとはまた違う雰囲気でびっくりしたわ」


「聞いたことのない音楽だったけれどとても聴きやすい曲だったよ」


「お、お褒めいただいて、とても光栄でございます」



 身内に褒められるのと、初対面の人に褒められるのとでは大きく違う。こんなに恥ずかしくてくすぐったいのかと、お茶を口にしながら、照れてしまう心を飲み込む。



「リアラ嬢は、私が褒めた時よりも嬉しそうなのは少し納得できないな」



 そういって、隣で閣下が私の頬をつんとつつく。普段はしないスキンシップにふくっと頬を膨らませてつつかれないようにすると、向かいでフィレンカ叔母様が小さくクスクスと笑う。



「リド様も嫉妬なさることがあるのですね」


「リドクリフは、私たちに対して何を嫉妬することがある」


「リアラ嬢の赤面をかっさらったのが羨ましい」


「みっともないぞ」


「ルベリオには分からないだろう?」



 気安い3人のやりとりに私は蚊帳の外でそっと眺めていれば、フィレンカ叔母様がそんな私の様子に気が付く。



「私たち3人は同い年で、皆同じ学園の学年だったのよ。だから、こうやって気兼ねなく話せるの」



 そうして、「ほら、リド様もリアラが寂しそうにしているのであまりルベリオといちゃつかないでくださいな」とからかっていた。そのやりとりが、とても穏やかで、どうして私たちの隣室が彼女たちだったのか納得した。私は、その雰囲気に安心して、お茶を口に含んでいると横からちょいちょいと私の服の裾が引っ張られる。それに視線を向けるとエス様が私を呼んでいた。



「ねぇ、さっきのまたやってくれる?」



 ああ、嬉しいな。


 純粋に、私の歌を音楽を楽しみにしてくれる人がいるのだと思うと、たまらなく幸せになる。 私は満面の笑顔を、エス様に向けた。



「もちろん、エス様には特等席を用意しておきますわね」



 それに嬉しそうにはしゃいでくれたので、なんだかんだで彼へのもてなしは成功したのだろう。



 そうして、和やかにお茶会は進んでそろそろ二人して自室へと戻ろうとした時だった。ユージェニー夫妻の扉をコンコンっとノックする音。それに、ぴたっと私たちは動きを止める。



「フィレンカお姉さま、私。エミリアよ」



 それを聞いた途端、大人たちのぴしっと張り詰めた空気。ルベリオ様とフィレンカ叔母様が頷き合うと、そっと席を立つ。



「今開けるわ」



 そういって、フィレンカ叔母様が扉に近づいていくのと同時に、ルベリオ様は閣下を浴室のほうへと招き入れ、扉を閉めた。ついでに、閣下と一緒に私とエス様も一緒に押し込まれた。



「どうしたの、エミリア」



 おっとりとしたフィレンカ叔母様の声。



「いえ、リドクリフ様にご挨拶したくて部屋を訪ねたのだけれど不在だったの。お姉さま、リドクリフ様と仲良しだったでしょう?こちらから賑やかな声が聞こえたものだからこちらにいらっしゃるなら一緒にと思って」



 エス様が少し不安そうな表情をしていたので、私は彼をぎゅっと抱きしめるとゆーらゆーらと体を揺らしてあやす。それだけで安心したような表情をしてくれる天使に、ぐうかわと心の中で見悶えた。



「そうなの。リド様ならここにはいないわ。もしかしたら、スティルのところにいるかもしれないわね」


「ふーん……?そういえば、あの子はどうしたの?姉さんの子どものエストニック君。私、あの子にも挨拶がしたいわ」



 何かを察したように、白けた返事をすると今度は別の標的を見つけたというようにエス様の名前を呼ぶ。すると、エス様は呼ばれたと思ったのか顔を上げたが、私が咄嗟にしーっと口の前で人差し指を当てる。すると、天使も真似するように人差し指を口許に立てて真似をする。そちらに気を取られたのか、代わらず静かにしてくれる。とてもいい子なので、よしよしと頭を撫でていると、背後から私の頬に頭を押し付ける存在。



 私を後ろから抱えている閣下が、自分にもというように押し付けてくるので、エス様と同じようによしよしと撫でる。すると、お腹に回った手に力が入っては、更にきつく抱きしめられた。なんなんだ、この状況。


一口メモ:スヴェンダ編

初めて会ったリアラを本当はめちゃくちゃに可愛がりたいと思っている

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