20.周りからの圧力:sideリドクリフ
ここまでが一度ストックの1章分となります。次回からは2章に入り、更新スピードは1話ずつとなります。
不定期更新とはなりますが、面白いと思っていただけましたら評価よろしくお願いします。
リアラ嬢との晩餐から数日。
彼女が学びたいと言った領地経営の授業は無事にルートビア・ゼビエ前侯爵閣下が引き受けてくれ、語学の先生を庭師見習いとしていたエルガー少年で決まった。
国語の授業の後にエルガー少年の語学の授業を組み込み、歴史の授業の後に領地経営の授業を組み込んで、リエラ嬢の授業の時間が増えた。ルートビア閣下に授業の進捗を確認すると、それはそれは嬉しそうににっこりと笑顔を向けて順調だと告げられ、挙句に彼の孫息子の婚約者にどうかと打診が始まる。
「今までは妻の話を半信半疑で聞いておったが、あの子は優秀だ。己のしたいことは勿論あるが、それが実現可能かどうかをしっかりと見極めるまでは慎重に動く。頭は良くはないが、それを埋める努力をしようとする。しっかりと己の責任と向き合っている姿は本当に5歳児なのかと目を疑うくらいだ。どうだね、私の孫息子が彼女よりは少し上だが、婿養子にするというのは。私もここに理由なく過ごすことが出来る上に、今後も彼女を支えることができるぞ」
にこやかな笑顔でそう告げられてしまえば表情が引きつらないわけがない。
「妻も言っていたが、彼女はもう伯爵家のご令嬢が身に着けるほどのマナーはあるそうだ。今もまだ続けるのは、お主の為と聞くぞ。お主が元王族ということもあり、そのお主が貴族後見人だ。それに恥じないように、お主が貴族後見人であるのを誇らしくあれるように、王城に嫁いでもおかしくないような妃教育に近いマナーを叩き込んでほしいとのことで続行しているとも聞く。親があれだったからそこまで期待していなかった。お主からのお願いということでここに来たのだが、あそこまでしっかりとしたお子は初めてだ。分からないこと、自分の理想を追求するにはどうしたらいいかをしっかりと私に詰めてくる。教え甲斐のある子だよ」
そういって紅茶をすする姿に、私は目を丸くした。マナーの件は初めて聞いたのだ。前侯爵夫人からは問題ない、とても優秀で教え甲斐があると笑って答えてくれると同時に、次の言葉は夫と同じ自分の息子を婿養子にどうかと言ってくるのだ。彼女が孫娘ならとても嬉しいわと笑って告げてくるので、考えておこうといなすばかりである。
彼女としっかりと向き合った貴族はすぐに彼女を組み込みたいと思うのだろう。容姿はとてもよく、かつ努力をする性格だ。自分の立場を理解している。更には、以前リベルティア・ロトリフス子爵令嬢からは弟と結婚をさせるのはどうでしょうと笑顔に提案してきた。
私に、言外に婚約をほのめかしていたというのに、次には自分の家門に加えることを考えている。
彼女には音楽の才能があるのは目に見えてわかっている。だからだろう。名案だと言わんばかりに目をきらっきらにして私に提案してきたときは、流石にこめかみを抑えてため息が出た。話はリアラ嬢の意見を聞くことが前提として保留としている。
そしてつい先日、彼女が今のところで提案してきた、したいこと一覧を目にしたスティルスが、「私が彼女に婚約を申し込んでもよろしいですか」と言ってきたのだ。私と同じ歳のスティルスがこれまた目を輝かせて言うものだから、特殊趣味にでも目覚めたかと伝えると、「彼女限定ですが、ありです」と言ってきた。流石にそろそろリアラ嬢の身が危険だとさえ思えてきた。
しかし、確かに一覧化したやりたいことリストを眺めていると、彼女は自分のことというよりは領民の力を底上げしたいのだと実感する。
領民の子どもが学べる場所の提供。幼い子供を預かるところが出来る学校。無料で本の貸し借りが出来る施設。領民の通える病院、港街ライラックと行政街であるブーゲンビリアを行き来できる公共の馬車を格安で乗れるようにしたいと、最初に整えたいこととして記載がある。その次にあるのが領民が遊べる場所を提案。子どもたちが遊べる広い広場のような公園を作ること、領民たちが文化に触れあえるような劇場の建設などを記載。こちらは、長い目で見るとのことだ。それと働き方の改革と、農地や酪農をしている牧場を一部開放し、動物と触れ合うという名目で観光地化はできないかと提案。海辺の見える土地を、リゾート化させることはできないかという提案も書いてある。
更には、住民を増やし人を増やすことによって、領の活性化と雇用を増やすこと。長時間労働を短くして一定の金額をしっかりと定めて払うことの記載がある。領の法を整備し、一部の職業を抜きにして完全週休2日制を領全体で導入したいとのこと。そうして最終的には領民への給金を底上げすると同時に、税金の底上げもしそれらを病院や図書館、学校などの公共施設の施設料へと当てたいとのことだ。
思いつくことは箇条書きで記載し、別で細かいメモを1枚1枚書いている。そして束になったこれらを持ってきたのは、ルートビア閣下だ。笑顔でもしリゾート化をし、別荘を建てる許可が出た際は、真っ先にいい土地を買いたいと言っている。リアラ嬢はどうやら閣下に相談しながらまとめたのだろう。報告書としても問題ない書き方だった。
私は、これの写しを作成すると彼女の本家であるアルテンリヒト家へと報告書として提出した。
そうして目の前に返事として、今すぐ侯爵家へと挨拶に来るようにとのことで、予定通りお呼び出しを貰った。
侯爵家への訪問日時を確認しては、私は溜まっている仕事を片さなくてはならない。
一口メモ:ゼビエ前侯爵夫妻
別館の特別大きな部屋に泊めさせてもらっている。
エステマリア領に別荘を建ててこちらに後世を過ごそうともくろんでいる。




