表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/99

02.忠誠心はいらない

短めのほんの少しだけシリアス挟んでます。

 


 私が私の家に戻ってから数日が立った。



 侍女が1人と専属メイドが2人。私には着いている。3人ともとても丁寧で、私のことを尊重して対応してくれる。ご飯はとても美味しくて、着る服はとても綺麗で、丁寧に私をお世話してくれるので気分はお姫様だ。



 きっと、私の両親がしてきたことを知っていてもそれを表に出さずに、意地悪もせずに私の面倒を見てくれる。それが気になった。気になって、仕方なかった。


 私は、朝の支度を終わらせたあと、部屋を出ていこうとする侍女を呼び止めた。侍女である、ルーナは呼び止められると素直に足を止めて私に振り返ってくれる。会った時からあまり笑顔を見せてくれない。少し冷たい印象のある彼女は、数日接したがまだ掴みどころがない。それでも、仕事はしっかりとしてくれるし、私に触れる手はとても優しいので私は全幅の信頼をしていた。



 アイスブルーの瞳が真っ直ぐに私を見つめてくるので私はしゃんと背筋を伸ばして話したいことを頭の中で整理する。



「あのね」


「はい」


「ルーナは私が憎らしいとか腹立つとかは、ない?」



 その言葉を聞いた途端、彼女の少しだけ鋭い目付きが、哀れみに揺れるのだ。あ、この人はそんなこと思ってないのだと瞬時に判断する。私は、気まずそうに一瞬だけ視線を提げた途端、私の身長に合わせてルーナが腰を低くしてくれる。「失礼します」とひと言告げた後、私の小さな手を取って、優しくぎゅっと握る。



「お嬢様、それは誰かにお聞きしたのですか?」



 私はゆっくりと首を振る。ここの屋敷の人達はしっかりと教育されているので、不満があっても口にすることは無い。それは、公私しっかりと区切ることの出来てる大人たちだから出来るのだと感心してしまう程だ。



「あのね、私は私がどんな立場でここに来てるかわかるよ?私を産んでくれたお父さんお母さんが、どういうことをして、死んでいったのかもちゃんと理解してるの。だから、ここの領の人たちはそれを知っているし、ここで働いてる皆さんもしっかりと理解してると思ってて。それでも、皆さんしっかりと割り切って働いてくれてるんだ。それでも、ルーナも含めて、メイドのエリシアもユリアもとてもいい子でしょ?私を、こんなにも可愛く着飾ってくれるし、シェフはいつも美味しいご飯を作ってくれてる。だけどね、仕事だって割り切ってても煮え切らないものだってあると思うの。その煮え切らないものは捨てなくていいんだよって教えたくて。確かに八つ当たりされたり、それで暴力振られたりはしたくないけど溜まったままなのもよくなくてね。私は頑張って、お父さんやお母さんがしてこなかった分もこの領の領主として頑張るつもりだけど、もし、お父さんやお母さんみたいになった時は、その煮え切らない感情で断罪して欲しいの」



 言葉が上手くまとまらない。言葉がもつれそうになるのを、ゆっくりと言葉にすることでもつれそうになるのを防ぐ。言いたいことはしっかりと伝わっただろうか。小さな唇をきゅっと結んで、そろりとルーナを見上げると、ルーナのアイスブルーの瞳が濡れていた。



「お嬢様……そのようなことを考えておられていたのですか」



 普段は感情を見せないルーナの声が少し鼻声になっていた。珍しいと思いながら、私は自分の着ている袖を引っ張って、ルーナの目尻の端に宛てがうと、ルーナは慌てたように私から顔を離す。



「お嬢様、汚れてしまいます」


「いいよ、これは私のお金じゃなくて領民が頑張った結果に買ってもらったものだから、領民であるルーナの涙を拭くのは汚れじゃないよ」



 きょとんと首を傾げると、とうとう溜めた涙が限界だったようだ。ルーナは、ぶわり涙を溢れさせると、感極まったように私を抱きしめた。



 私は、困ったように笑うと彼女の背中にを回して落ち着かせるように撫でながら、その温もりが嬉しくて彼女の胸に自然と顔を埋めた。



「私はね、まだお父さんとお母さんがしてきた事を記憶してるからこうやって宣言できるけど。もし、これから10年、20年と歳をとった後に、その事を忘れてるかも知れない。その時に、私が領民に仇なす存在だったら、迷いなく王様や公爵閣下に連絡して、私を止めて欲しいんだ」


「そんなこと――――――」


「――そんなことないって言いきれないのが人生だから。だから、このことは皆にも伝えておいて?私への忠誠心はいらない。必要なのは、この領に、領の人たちに、必要か要らないかの2択なんだって」



 ルーナは、今度こそ煮え切らない表情を浮かべている。少し言い淀んだあとに、私の言葉に了承をして頭を下げてくれた。私は、ルーナにありがとうと告げると、甘えたようにぐりぐりと胸に頭をすり寄せた。



一口メモ:リドクリフ

最初、リアラを見て動く人形だと思った

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ