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10.打算と行儀



「俺……いや、私はお嬢様にそんなことして貰えるような立場じゃないです」



 エルガーが青ざめたまま、ぽそぽそと言葉を並べる。どこか自信なさげで、どこか怯えている様子に私は首を傾げる。



「何故?うーん、私ね、欲深いの。いつかこの領民全員の夢を叶えてあげたいって思うくらいには。でも、私はまだ幼いし、私ひとりでは何も出来ないから、閣下や、ほかの大人の人に手伝ってもらったり、領民に手伝ってもらわないといけないんです。私は、服を着るにもルーナたちがいないとダメだし、外に出るにも御者の方がいないとダメ。夢なんて叶えてあげられるか分からない。全員が全員は無理でも、今、私の目の前にいる人たちに、私ができる範囲でお手伝いできるなら、それをするだけだよ?それにね、エルガー。これは打算なの」


「……打算」


「そう。エルガーが薬師になって領民の患者さんに寄り添ってくれれば嬉しいなぁとか、それをきっかけに薬師がもっと身近になればいいなとか、育てたい薬草を量産して、他の領や国に売ればお金にもなるでしょ?そうしたら領が潤って、この土地でやれることがもっと増えるかも知れない。それはすぐじゃなくてもいいの。だから、私の温室もこの屋敷の書庫も好きに使ってくれていいし。仕事は……ごめんなさいね、アイゼン。エルガーのを調整してくれないかな。人が足りなければまた、募集をかけるようにお願いしておおきます。だから、しっかりと成果出してね。それに、1番はルーナの弟ってことよね。ルーナにはいつもお世話になってるから」


「……恐縮です。お嬢様」



 ルーナが頭を下げてくれたから、私は照れくさそうに笑ってひらひらと手を振る。その振られていた手を、ガシッとエルガーに掴まれた。それに驚いて動きをピタッと止めると、目の前のエルガーは深く深く頭を下げる。



「ありがとうございます、お嬢様。俺、……いえ、私、頑張ります」



 泣きそうな顔でお礼を言われたので、私は嬉しさと照れくささと混じった笑みを向けた。




 あれから、落ち着いた後、約束のバラの苗を植えたら朝食まで時間がなかった。慌てて私とルーナは部屋に戻ると、メイドふたりが私とルーナに頬を膨らませて待機していた。急いで準備しますよーっと鬼のごとく巻立てて朝の支度を済ませると、私はひとり食堂で食事を済ませたのだ。



 屋敷はとても広い。私が住んでるのは、居住区と言われる別館。本館は執務などを行う行政区と言われている。そこには今は閣下がおり、本館の客室で寝泊まりをして貰っている。家庭教師の先生たちは、私の住んでる居住区に寝泊まりをお願いしている。



 そして使用人たちが寝泊まりできる寮もある。基本通いで来る人たちもいるが、独り身の人達ほど寮に暮らしている。



 私が幼くて今はあまりないが、従来、お客様が来客された際のおもてなしは本館で行う。本館の、2階には大きなダンスホールとなってる部屋もあり、夜会用に開かれたりする時もある。今は私が幼いのでそのようなことは出来ない。一応、居住区と行政区の間には廊下で繋がってるので行き来は簡単に出来るが、書庫に行く時以外は私もあまりそちらに行くことは無い。



 だから、朝食もいつもひとりだ。ルーナたちやメイドたちは私の世話をしてくれるが一緒には食べてくれない。寂しいなどと言ってはいけない。彼女達の仕事を邪魔してはだめなので、私は今日も美味しく作ってくれたシェフに感謝しながら食事を済ませた。



 ルーナに今日はダンスの日だと教えて貰って、それに倣った服装をする。ダンスの日は少しだけ丈の長いワンピースを着るのだ。5歳児はまだ少しふくよかさが残るが、少しずつ無駄な肉が落ちてきている。綺麗にまとめあげてくれた髪から少しだけ溢れた金髪が、私を少し大人っぽく見せてくれた。



 ダンスは嫌いじゃない。運動は得意では無いがリズム感はあるのか、足運びを覚えるだけで、あとは体力がついてくるかどうかだ。難しい足運びの時は先生に教えてもらったりして、思っているより私は楽しんでいる。



 前世で社交ダンスなんてしなかったし、社交ダンスは特殊なスポーツだったから私とは無縁だったが、この世界に来てからはこれが唯一の運動なので体を動かしている。



 担当の先生は、テイラー子爵令嬢。テイラー家の次女でとてもダンスが上手だと王都で有名だったとのこと。結婚はできないんじゃなくてしていない。私の家庭教師になることで閣下を射止めてこいと親に言われたと、愚痴をよく聞く。本人は恋愛に興味が無いため、とても困っているとのこと。



 授業中はとても厳しいが、それが終わると気さくで明るく快活なご令嬢だ。お姉さんのようで、私のことをとても可愛がってくれるので私も懐いている。



 今日も今日とで、最後の1曲を踊り終わると授業は終わり。今日は何もミスをせずに踊り切れた。先生にも怒られずに終わったので感無量である。



 私たちは動かした身体を休めている。



 私は癖で休めている間に足をガバッと広げてストレッチをしていたら、先生は最初驚いてはしたないと言っていた。しかし、運動後にクールダウンさせなくては疲れが溜まると伝えると、先生も同じようにやり始めた。



 体もほぐれるし硬かったところも柔軟になるので先生はいたく気に入ったようだが、絶対に夜会などで踊った後にはしないようにとも釘を刺されている。



 勿論そんなことはしない。

一口メモ:エルガー編

家族構成:父と母と怖い姉と愛犬

年齢:13歳

生まれた国隣国エスぺニア王国。

赤ん坊のころから親に連れられて海外へと飛び回っており、この歳ですでにバイリンガル

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