エピローグ
秋の空が高く高く広がっている。
雲ひとつない空に、号砲が鳴り響き五色の彩煙が広がった。
遠くから楽しげな音楽が聞こえてくる。
首都グランデは昨日から一週間、お祭りだ。
今日は、ランドル皇太子の結婚式なのだ。
すべての支度が整ったフェリの前で、ラムズ公爵が涙にくれていた。
いい加減にしてください、と呆れ顔のリンジーに、泣いていない! と反論するのだがさっきからずっと握っているハンカチがびしょ濡れだ。
「お時間です」
フェリは立ち上がった。
すぐ隣でフェリの手を取った公爵は、
「こんなに急いで結婚しなくても……」
とまだ未練がましく涙を拭っている。
部屋を出て皇宮の神殿へと向かう。
重い扉が開かれると、同時に向かい合った扉も開かれる。
そこにはランドル皇子がいた。
ランドル皇子とフェリは同時に歩き出し、祭壇の前で一緒になった。
フェリに結んでもらいたい、といつも頼まれる皇子の髪は随分長くなった。
その長い髪がふと、懐かしい大好きな人の顔を思い起こさせる。
あの日のことは、覚えているのだが、どこもぼんやりとして夢のようだった。
グリッグ。
私の大切なグリッグ。
フェリほ心の中で呼びかける。
私はとても幸せです。
たとえ、妖精の百分の一しか命がないとしても、私は幸せです。
グリッグに。
みんなにもらったこの幸せを、大切にします。
「フェリ」
この上なく幸せそうなランディが、フェリの手を取る。
二人で祭壇に向き合ったとき、他の者には見えない光が飛んできた。
アビだった。
アビは人形の姿に戻り、フェリの元に残った。
アビがフェリとランディにささやく。
……昨夜、グリッグは妖精王となられました。
一瞬、ランディの顔が辛そうな色になり、消えた。
フェリは頷いた。
二人揃って今、祭壇へと歩き出す。
「おめでとう」
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