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仮面舞踏会 2



 今日はリンジー、それからエドニとエドニの婚約者(アラベラ先生の弟!)それからアラベラ先生と一緒に会場に行くのだ。

 

 建国祭二日目の今日は、仮面舞踏会が開かれると言う。

 

 エドニと先生、そしてフェリは目元だけ隠す布製の仮面を付けた。

 男性はもう少し硬い革製のもの。

 

 会場に着くと、他にもいろいろな仮面を付けた人たちがいた。

 鼻のあたりまで硬い面で覆ったもの、片目だけしか隠さないもの。

 色々だ。


 昨日のように入場で名を呼ばれたりしないので、フェリはほっとした。


 今日は衣装も凝ってる人がいる。大抵は美しいドレスや礼服だが、中にはまるで鳥のような羽飾りをつけた人、背中に翼をつけた人もいた。

 

 ……すごい! 面白い!


 フェリは珍しくてあちこちみていたが、そのうち、何となく、他の人たちがこっちを見ている気がしてきた。


 と、向こうから来た人が

「フェリシア様こんばんは」

 と囁いたので驚いた。

 リンジーがさっと振り返ったら、慌てたように行ってしまったけど。


「エドニ、私仮面をつけているのに名前をよばれた」

 エドニにそう言うと、エドニは可笑しそうに笑った。

「それは……仮面をしていても分かると思うわ。この御髪だし、このドレスだし、それより何より可愛らしいのは隠れないもの」


 フェリは驚いた。


「仮面を付けると、フェリは私やリンジー様が分からない?」

 フェリは首を振り、そうかと思った。

「今夜の仮面は簡易なものだから。特別な人や、親しい人はだいたい分かるわね」

 確かに、そう話しているうちにも、何人かがフェリの名を呼んでやってきてみんなリンジーに睨まれて離れていった。


 その中でも、何かとても強い視線を感じてそちらを見ると、ひときわ豪華なドレスを着た人だった。


 ……ほんと。仮面があっても分かる……。


 フェリは思った。

 ラティーシャだった。


 青と金のドレスに身を包み、髪を複雑に結い上げ、宝石を散りばめた仮面をつけている。

 ラティーシャは視線を外すことなく、じっとこちらを見ていた。

 リンジーがフェリの肩に手を置き飲み物を取ってくれた。そして

「気にしないでいいよ」

 と言い、ラティーシャとの間に立ってくれた。


 私がよほど気に入らないのね。

 

 ラティーシャからはひしひしとそれが感じられた。

 

 音楽が始まった。

 また誰かがすっと近づくと、フェリの耳元に顔を寄せ、一言

「踊ろう」

 と言った。

 フェリははっとした。


 異国風の礼服に身を包み、礼儀正しくお辞儀をした男性。顔の半分程を覆う仮面をつけていたが、フェリには分かった。

 ランディだった。

 その白金の髪は、今朝フェリが結んであげたのだ。

 フェリは小さな声で返事をした。

「はい」

 リンジーを見ると、微笑んでいた。

 

 そのままランディの手を取って踊り出す。

 

 ランディ、こんなに踊りが上手なのね。

 皇子だもの。上手だよね。

 そう思っていると、ランディが耳元で囁いた。

「フェリ、その仮面は小さすぎないか?」

「あっ、そ、そうですか?」

「うん、頭から袋でも被せたい」

「えっ」

 ランディは小さく笑った。

「ああ──そうすると私も見えないか──」

「……?」

「可愛すぎて、他の男には見せたくないな。──隠しておきたい」

 フェリは赤くなった。

 

 一曲踊り終わると、リンジーがやって来て二人をベランダへ連れ出した。ベランダには屋根がついていて、小さな部屋のようになっている。

 リンジーは侍従に言って、扉を閉めた。

 

「目立ちすぎなんだよ」

 リンジーが扉が閉まるなりそう言うと、ランディは笑い、それから口元を歪めた。


「まったくだ。腹が立つな。みんな、フェリを見すぎだろう」

「ラン……、お前も目立ちすぎなんだよ」」

 リンジーは厳しく言った。

「あれはどこの誰だって、みんなこの扉の先で待ち構えてるぞ」

「仮面をつけてるから」

「どうかな、とにかくもうじっとしててくれ」

「そうだ、じゃあフェリ、ここで二人きりで踊ろう」


 フェリはもう、ぼうっとして、ランディを見ていた。

 あの五歳のときに出たパーティーのように、ランディがきらきらして見えた。


「ああもう」

 リンジーは呆れた声をあげると、

「フェリ、次は私と踊ろう。こいつはここに置いといて……」

 そう言ったときだった。

 

 叫び声があがった。

 

 いくつもの悲鳴、ざわめき、慌ただしい足音が聞こえる。

 

 リンジーが扉を開けた。

 叫び声が響き渡った。

 

「皇帝陛下が襲われた!」

 リンジーが慌てて飛び出す。

 フェリも続くと、玉座近くの扉が開いており、そこに騎士たちに抱えられた陛下が見えた。

 フェリは思わず両手で口を覆った。

 陛下は血まみれだった。

 

 人をかき分けるように陛下の元へ駆け寄る人がいた。

 その人は仮面を投げ捨てると

「何があったのだ!」

 と、騎士たちを怒鳴りつけた。

 

 陛下を抱き抱えていた騎士が、苦しそうに答える。

 

「た、大公閣下、その扉の前までいらしたときに、と、突然賊が……」

 大公と呼ばれた男が声を張り上げた。

 

「ここを封鎖しろ!

 誰も逃すな!」

 

 そのとき、薄紅色のマントの騎士が、大公へ駆け寄った。

 

「恐れながら申し上げます!」

「なんだ!」

「陛下を斬ったものは……

 

 ランドル皇子にございます!」


 フェリは自分の体からスッと熱が引くのを感じた。

 怒りで体が冷たくなる。

 

 何をいってるの?

 

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