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仮面舞踏会




「フェリ!」

 エドニは部屋へ入るなり、歓声を上げた。

「今日のドレスもなんて素敵なの! 本当にグリッグ様のセンスは素晴らしいわ!」


 今日は建国祭の二日目。

 フェリはまた朝からアビに磨きあげられ、昨日とは別のドレスに身を包んでいた。


 今日のドレスは、たっぷり布地を使った緑色のスカートの上に、下の生地が透けるスカートを重ねている。

 その透き通るスカートには、一面花や葉が刺繍されていて、まるで春の草原のようだ。

 刺繍の花々のように、色とりどりの宝石で作られたネックレスとブレスレット。また、耳に掛けてこぼれ落ちるようなイヤリング。


 すべて見た事のない美しい物だった。

 エドニはうっとりとして、息を吐いた。

 遅れて入ってきたアラベラ先生も息を呑んでいる。


「フェリ、今日もみんな驚くでしょうね! 本当に素敵だわ!」

「ええ、ええ、もう皆さん今夜も大騒ぎですね。

 まるで昨日は天使でも見ているようでしたから」

「ほんとに! フェリが私たちに話しかけてくれから、その後取り囲まれて大変だったのよ」

「あそこに居た男性は一人残らず心を奪われましたね」

「そうね! でもリンジー様が近づく男性を睨むので誰もそばに寄れなくて……」


 二人とも目をキラキラさせて興奮している。でも、フェリはちょっと俯いた。


「そう……?

 でも先生、私、教えていただいたのに、ダンスが、上手く踊れなくて……」


 そう、あんなに練習したのに、昨日は緊張して何回も失敗してしまった。


「それが!」


 ところがそこで二人は嬉しそうに笑い声をあげた。

「それがまた、すごく可愛らしかったのよ!」

「はい、初々しいというか、思わず助けてあげたくなるというか……」

「リンジー様が追い返さなかったら、きっとダンスのお相手が殺到したわよ」

 あんまり二人が誉めそやすので、フェリは恥ずかしくなってしまった。


 あ、でも……、と思い出す。

 昨日帰る前にグリッグと一曲踊ったのだ。あれは、割と上手に踊れた気がする。 

 

 あのとき、ふと、気づくとすぐ側にいたリンジーも、お父さんも、いなくなっていた。

 あれ? と思うとグリッグが来たのだ。


「グリッグも来てたの!」

知らなかった。フェリは嬉しくなった。


 グリッグはこの頃いつも着ている、貴族っぽい上衣じゃなくて、昔のように白いフリルシャツ姿だった。

 なんだか懐かしかった。

 

 といっても、そんなに前のことじゃないのに、なんだかいろんなことがあり過ぎて、グリッグと過ごしてた頃が遠い昔のようだ。


「こっちだ。おいで」


 グリッグに誘われて一緒にテラスから庭へと出ると、月明かりで辺りが輝いていた。

 遠くからダンスの音楽が聞こえてきて……。


 グリッグが、ふざけたように手を出して

「姫、一曲お相手を」

 と言った。

「はい、喜んで」

 フェリは笑って答えると、二人で踊った。

 

 グリッグがあんなにダンスが上手だとは思わなかった。

 一緒に踊ると、とても体が軽くて、くるくる回れて、自分でもすごく上手に踊れたのだ。

「こんなに上手なら、練習の相手をしてくれれば良かったのに」

 と言うと、グリッグはただにっこり笑った。

 

 そういえば、あれからグリッグを見てない。

 ドレスはアビが預かってたし。

 グリッグはどこに行ったのだろう。

 

「フェリ?」

 呼ばれてハッとした。

 

「疲れてる? 大丈夫かしら」

 エドニが心配そうに見ていた。

 

 フェリは慌てて頷いた。

「大丈夫です」

「もし辛いときはすぐ言ってね」

 エドニが言った。 


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