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緑の館




 リンジー・サムエル・ラムズは、眉をひそめた。

 

 久しぶりにラムズ公爵邸に戻ってきたのだが、ちょうど馬車が出てくるのを目にしたのだ。

 

 黒に近い深い紺の豪奢な馬車。

 印された家紋はランフォード大公家のものだった。


 ネイハムか……。

 胸の中に苦いものが広がった。


 重苦しい気持ちのまま、乗ってきた馬を渡し、玄関ホールへ入る。と、薄紅のマントが目に飛び込んできた。

「なんだ、お前は!」

 思わず詰め寄る。

 薄紅のマントを付けたその騎士は、リンジーもよく知っているグランデ騎士団の若い騎士だった。


「ふ、副団長……」

 騎士の顔が青ざめた。

「誰の許可を得て、ここにいる」

 リンジーが胸ぐらを掴むと、わらわらと駆け寄ってくる者があった。みな、グランデ騎士団。そして薄紅のマントだ。リンジーは捕まえていた騎士を突き飛ばすと、冷たい目で彼らを見回した。


「全員、ここから出て行け」

 騎士たちの顔が青ざめる。

「し、しかし……我らはラティーシャ様の……」

 口を開いた者はリンジーに刺すような視線を向けられ、途中で口を閉じた。

 リンジーが無言で立っていると、騎士たちはようやく、邸宅の外へと向かった。


 その渋々動く背中を見送り、それから畏まっていた執事をリンジーは怒鳴りつけた。

「一体どう言うことだ!」

 そこに、

「まあ、お兄様」

 と声が割って入った。


 ラティーシャだ。

 薄紅色のドレスの裾を揺らしながら、リンジーに笑顔を向ける。

「そんな怖い顔をして、どうなさったのです? お兄様、お久しぶりでございます。今年は新年祭がありませんでしたから、お会いするのは昨年の新年祭以来かしら」


「今の奴らは、どうしてここにいる」

 怒りを抑えるようにして、リンジーは尋ねた。


「お兄様のいらっしゃるグランデ騎士団の方たちですよ? ネイハム様が、私専用の護衛にとお貸しくださったのです」


「……ほお」

 自分でも驚くような冷たい声が出た。


「ネイハムは、私の知らないうちに騎士団長に就任していたのか?」

「あら、正式にはまだですわ。でも……」


 そこに侍従の声が響いた。

「閣下のおかえりです」

 振り返ると、父、ラムズ公爵がホールをこちらへ向かっていた。


「お父様!」

 突然ラティーシャが叫んだ。そして父に走り寄るとしがみついた。

「来てくださったのですね。私、怖くて……」

 涙声だ。


「知らせを聞いて来た。一体どう言うことだ?」

「騎士団の方が教えてくださいました、緑の館が、……盗賊に襲われたと……、そして、フェリシアが拐われたらしいと……」


 ……緑の館?

 …………フェリシア? 


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